死体
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死体(したい。元の用字は屍体)とは、死んだ人間や動物の体のこと。死骸(しがい)、亡き骸(なきがら)、屍(しかばね)などとも言う。
日本語では遠回しに、あるいは隠語として「仏(ほとけ)」あるいは「仏さん」と呼ぶ場合がある。死後に成仏するという大乗仏教の考えから。
[編集] 社会的意味
死体がいかなる意味を社会的に持つかは、時代によって変わってきた。過去においては、気が枯れた(穢れた)物として忌避されてきた。現代においては、ひたすら忌避すべきものと見られがちである。現代社会においては、日常生活でヒトの死体を目撃することは殆どないと言える。死体は、葬儀屋・葬儀場などの特別な場所に隔離される。病院で死者がでた場合も、すみやかに霊安室に移されるのが常である。
一方で、死体に対してはその親族から生者同様に丁重な扱いを求められる場合もある。特に日本においては「仏さん」の語に代表されるようにその傾向が強い。例えば、えひめ丸事件において、その遺体回収にあたるアメリカのダイバーに対して「日本では死体を仏と呼び、神聖なものと見なしている」としてその取り扱いに特に注意を促したという話がある。また、親族の遺体を傷つけられる事への抵抗感や仏教における輪廻転生の考えから、臓器移植への抵抗感も根強い(臓器は固体死としての合意が得られやすい「心臓死」に至ると、細胞が早く壊死してしまい、移植できない)。
ちなみに「死体」は一個の物体としての即物的な印象を与える語であり、死者の人格を尊重するような場面では、通常これを避けて「遺体」の語を用いる。マスコミ用語では動物の場合に「死体」や「死骸」、人間の可能性が高いとされる場合「遺体」を用いることになっていることが多い。ただし、地質学や生態学などでは学術用語として「生物遺体」「動物遺体」「植物遺体」などの用語もあり、「遺体」が必ずしも動物には適用されないわけではない。