死徒
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死徒(しと)とは、同人ゲーム『月姫』に登場する架空の存在で、吸血鬼の一種。基本的には、人間が真祖または他の死徒に吸血されてなる後天的な存在で、地球(星)が直接産み出した先天的な真祖に対置される。
本来月姫の一用語であるが、『月姫』と『Fate/stay night』を連結する重要な要素である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
死徒の起源は、真祖が、その宿痾である吸血衝動を、自身の能力を用いても抑制する事が困難な事態に陥った場合、緊急避難的に頼った人間である。本来、血を吸った者と吸われた者は主従の関係になるが、長い年月を経て、これらの人間は自らの能力を強化して、主たる真祖から自立するようになった。この最初期の死徒(またはそれに近い者)は「死徒二十七祖」と呼ばれる(詳細は後述)。
神に近い存在である真祖に対し、死徒は人間をベースとしているため、肉体の劣化を防ぐために血を吸わなければならず、また、その能力も人間の延長線上でしかない。但し、真祖は吸血衝動を抑える反動としてフルパワーでの活動が出来ないので、二十七祖クラスの死徒と真祖のパワーバランスはほぼ互角といえる。
ほとんどの死徒は、もともとは人間であるが、死徒としての年月を重ねるに連れ、人間としての本来の人格を失っていくとされる(無論、そうでない者もいる)。
[編集] 死徒二十七祖
前述したように、真祖のいわば「非常食」的存在だった人間=原始死徒に近い存在は「死徒二十七祖」と呼ばれる。齢四千年を超える神代同盟(エルダータイトル)と呼ばれる祖、本来の肉体を失った祖、既に消滅した祖、五百年単位で後継者に座を譲る祖など、様々なものがいる。長い年月の間に、真祖や人間、あるいは地球外生命体に倒された者もおり、『歌月十夜』起動時に表示されるデイリーメッセージによれば、現在、以下に示す21名の存在が確認されている。但しネロ、ワラキアは『月姫』『MELTY BLOOD』において殲滅されたため、実質は19名。空席となった死徒二十七祖を埋めるための二十七祖候補も存在する。二十七祖には薔薇の予言と言われる予言者の役割を持った女性の祖がおり、彼女が常に死徒たちに死を予告し、後継者を作らせるために、殺し合い消滅を繰り返しながらも二十七祖は今尚健在なのである。上位十位に入るモノたちは幻想に生きるため、通常の概念では打倒出来ず、彼らを越える幻想でなければ太刀打ち出来ない。
また、現在の二十七祖には元が人間ではないものも名を連ねている。なお、「月姫」の敵役であるミハイル・ロア・バルダムヨォンは死徒からは二十七祖と見なされておらず、教会や協会からは二十七祖の番外位と見なされている。真祖に対する態度の相違などから、現在は大きくアルトルージュ・ブリュンスタッド派と、トラフィム・オーテンロッゼ派の2派に分かれている。
- 1.プライミッツ・マーダー
- 人間ではなく、白い魔犬。「霊長の殺人者」「ガイアの怪物」と呼ばれ、霊長(≒人間)に対する絶対的殺害権を有しており、それ故に、最強の一つに数えられる。これを従えるが故にアルトルージュはある意味朱い月以上である、とはロアの言。アルトルージュに付き従っていて、彼女の真似をして血を飲むようになっただけで、正確には吸血種ではない。これを御するには七騎の守護者が必要とされる。
- 2.The dark six
- 「闇色の六王権」。最初の死徒。最初のシステム。未完成。現在は蘇生中で、蘇生した暁には二十七祖を束ねると言われているが、その正体(複数なのか、単体なのかを含め)を知る死徒はいない。
- 『月姫2』と思われるプロローグの仮題が『the dark six』となっており、プロローグに「六王権」という言葉も出てくるため、『月姫2』では重要な役割を占めると思われる。
- 3.朱い月のブリュンスタッド
- アルティミットワン。全ての真祖の元となった存在。かつて星によって招き入れられた月の王様。ロアが“彼”と言っていたのでおそらく男性。
- 彼は人を滅ぼし、星を手にしようと画策する自身がいずれ、ガイアからもアラヤからも修正され、消滅させられるをことを予見していた。そのため、なんとか自己の存在を内包した地球のシステムに属する後継者を生み出そうとするが、出来たのは望むほどのスペックに到達していない「出来そこない」である真祖だった。
- その後も足掻いた結果、なんとかアルトルージュという形になるものを生み出すが、彼女は能力的に不安定であり、同時にガイアの化け物を従えるある意味彼以上の化け物であった。更に数百年の時を重ね、とうとうアルクェイドという存在を創る法則を生み出すが、その形成の前に魔法に対する不勉強さからゼルレッチに倒されてしまった。そのため現在はこの位は空席であるが、真祖を生成する彼の固有結界は未だ残っているとされる。アルクェイドの深層心理に座す朱い月とは似て非なるモノ。
- 朱い月と同域の後継が誕生した場合にのみ朱い月が憑依し、覚醒したときに地球のシステムに属する朱い月となる。アルクェイドとアルトルージュが満足のいく後継者候補。
- 戦闘能力に関する描写は少ないが、「魔王」化したフルパワーのアルクェイドと同程度だと思われる。
- MELTYBLOOD Re・Actで暴走アルクェイドが蒼崎青子と対決する際「また魔法使いか」と口にしていることから何らかのつながりがあると思われる。
- 余談ではあるが、朱い月だけでなく、現在の死徒第五位O.R.T(オルト)もまた「水星のアルティミット・ワン」と呼ばれるのにならえば、朱い月のことは「月のアルティミット・ワン」「タイプ・ムーン」と呼ぶのが正しいだろう。
- 4.キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ
- 魔道元帥ゼルレッチ。本名キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。「宝石のゼルレッチ」「時の翁」「宝石翁」「万華鏡(カレイドスコープ)」など、多くの異名を持つ。現存する5人(内存命4人)の魔法使いの一人。第二魔法〝並行世界の運営〟の使い手。昔「気に入らない」という理由で朱い月(タイプ・ムーン)に喧嘩を売り勝利したが、その際に相打ちで朱い月に血を吸われ、死徒となる。そのために死徒二十七祖の四位にも数えられる。死徒になれば老化しないはずだが、なぜかその後めっきり老け込み、現在は全盛期ほどの魔法行使は出来ない。死徒となった後も魔法使いとしての姿勢を崩さずに様々な場面で活躍している。悪に義憤し善を笑う人物。空条承太郎のような人であるらしい。
- 普段は並行世界を旅しており基本的に消息不明だが、たまに帰ってきては問題を起こして、また旅にでることを繰り返している。各国で弟子を取り、破滅させることもしばしば。遠坂家六代前の祖先、遠坂永人も弟子の一人として迎えているため、凛はゼルレッチを「大師父」と呼ぶ。一方、ブリュンスタッド家の後見人を務めており、アルクェイドからは「じいや」と呼ばれている。『月姫』と『Fate/stay night』の世界を連結する1人である。
- 宝石剣の作者であり、その設計図は遠坂家に「魔法使いの宿題」として残っている。宝石剣の名も又ゼルレッチ、かつて朱い月との戦いで「月落とし」を力ずくで止めた代物でもある。宝石翁自らの名を冠したその剣は、シュバインオーグの系譜にしか使えない限定魔術礼装。並行世界に人も通れぬほどの極小さな穴を穿ち、そこから無限に連なる並行世界の大気に満ちる魔力を共有出来、それによって無制限に魔力を供給出来る。しかし代償として、使用するたびに筋肉の繊維が一本ずつ断裂していく。Fate本編において衛宮士郎が投影に成功し、遠坂凛が使用した。
- 5.O.R.T(オルト)
- 人間ではなく、「タイプ・マアキュリー」と呼ばれる突然変異種。水星のアルティミット・ワン。全長四十メートルほどの蜘蛛のような外見をしている。西暦以前に南アメリカ大陸に墜落し、そのまま住み着いた。無謀にも捕獲しようとした先代の二十七祖第五位を秒殺し、その後、吸血種としての能力があることが判明したため第五位を踏襲した。最強の攻性生物として次元違いの能力を誇る。本体の攻撃数値はデタラメで、その他に固有結界に似た特殊能力・侵食固有結界「水晶渓谷」を有する。一部の魔術師や二十七祖が操る固有結界とはレベルが違い、無条件に周囲の環境をORTの故郷と同じ環境へ変化させ、物理法則の改竄、異界秩序への修正をかける。〝侵略者(インヴェイダー)〟の名に相応しい能力といえる。
- 死という概念が存在せず、直死の魔眼でも殺す事が出来ない。その為倒すには物理的に破壊するしかないが、その外皮は地上のあらゆる物質より高い硬度と、軟性と、気温差への耐性と、鋭さを持つ出鱈目な代物。地球で戦う限り弱点は無いとされる。色々な要素を除いて純粋に戦闘を行った場合、月姫世界で最強。
- 捕食した生物に一部擬態する能力を持つ。尤も、あくまで擬態なので本人の意思の介在や意思疎通ができるかどうかは不明。ちなみに今まで捕食した地球の生物の中で、一番味が濃かったのは先代の二十七祖第五位らしい。
- 6.リィゾ=バール・シュトラウト
- 最古参の死徒の一人。アルトルージュの護衛の一人で「黒騎士」と呼ばれる。魔剣「ニアダーク」を振るう剣士。通常の死徒とは違い、時の呪いを病んでいる為不死である。真性悪魔ニアダーク。架空の予告編『月姫2』では殺人貴のライバル。
- 7.腑海林アインナッシュ
- 「思考林」「シュバルツバルトの魔物」とも呼ばれる。『Talk.』に出演。レンのマスターの協力により、アルクェイドに倒された先代のアインナッシュの亡骸から流れ出る血を吸った吸血植物が吸血種になったもの。幻想種に近く、意思を持つ直径五十キロほどの巨大な森林。活動時には全ての枝や根に血液が流れて、森全体が赤黒く点滅する。神出鬼没で、五十年に一度ほど現れ、移動しながら無差別に吸血・殺人を行った後に姿を消し、また数十年の冬眠に入る。その最深部には何百年かに一度、たった一つだけ擬似的な不老不死を得られる真紅の実をなす木があるという。メレムが志貴を通して真相を聞くまでは、初代アインナッシュの固有結界と考えられていた。
- 先代アインナッシュは魔術師上がりの死徒で、アルクェイドを、「アインナッシュなどという死徒はいない」と騙して追い返すほど催眠・暗示系の魔術に優れていた(それは既に記憶の改竄に近かった)。非常に注意深く、少しでも彼の事を知った人間は全て記憶を書き換えられていたために、アインナッシュの名が台頭したのは二代目アインナッシュに代替わりしてからである。
- 8.フィナ=ヴラド・スヴェルテン
- アルトルージュの護衛の一人、「白騎士」。その他「吸血伯爵」「ストラトバリスの悪魔」とも呼ばれる。固有結界「パレード」を持つ幽霊船団のキャプテン。同性の、しかも美少年からしか血を吸わない。リタやヴァン=フェムとは犬猿の仲で、かってヴァン=フェムが作った七大ゴーレムの一つ、第五城「マトリ」をパレードにより破壊している。
- 9.アルトルージュ・ブリュンスタッド
- 真祖と死徒の混血で、死徒における吸血姫。「血と契約の支配者」と呼ばれ、ズェピアにタタリとなる力を与えた。普段は見た目14歳程の姿を取っているが、それは不安定な能力を安定させるための苦肉の策らしく、能力行使時には二段変身するという。朱い月によって造られ、アルクェイドの姉にあたる存在だが、仲は悪く敵対しているらしい。アルクェイドの髪が短いのは彼女との戦闘の時に奪われたからであり、同時にかけられた呪詛のせいで取り戻さない限り伸びることが無い。アルクェイドが「白の姫君」と呼ばれるのに対し「黒の姫君」或いは「黒血の月蝕姫」とも呼ばれる。メレム・ソロモンをいたく気に入っており、彼自身には嫌われてはいるものの、隙あらば食べようとしているとか。
- 10.ネロ・カオス
- 体内に666匹もの獣の因子を渦巻かせている「混沌」の吸血種。魔術師上がりの死徒で、魔術協会の三大部門の一つである「彷徨海」出身。固有結界「獣王の巣」を持つ。本名はフォアブロ・ロワインと言い、ネロ・カオスは聖堂教会がそう呼んでいたのが定着したもの。
- 永遠を求め、自己を混沌の海とする事でそれを成したが、その結果として既にフォアブロという人格は失われつつあり、永遠という命題に縛られたネロという存在だけが残った。体内に宿している命の数から、仮にアルクェイドが万全の状態で戦っていても消滅させきれない程の実力者でもある。
- 一時的に「殺人貴」として覚醒した志貴に倒されたが、放っておけば数百年で自我の無いただの混沌に戻っていたという。
- なお『MELTY BLOOD』に登場したネロはタタリによって再現された、ある意味まがい物。
- PS2版『MELTY BLOOD Act Cadenza』に登場する「ネコアルク・カオス」との関係は永遠の謎である。
- 11.スタンローブ、カルハイン
- 「捕食公爵」「街食うモノ」「第一の亡霊(スタンティア)」とも呼ばれる。教会に討たれた死徒の成れの果てであり、肉体が教会によって滅ぼされた後、怨念が周囲のものを破壊する力の渦となった無敵の存在。その存在密度が0になるまであと200年ほどかかるという。
12.教会によって殲滅され、空席
- 13.タタリ/ワラキアの夜(ズェピア・エルトナム・オベローン)
- 存在しないとされている死徒。『MELTY BLOOD』のヒロイン、シオン・エルトナム・アトラシアの祖先。数多の魔術師の中でももっとも閉鎖的と言われる「錬金術師」上がりの死徒で、魔術協会の三大部門の一つである「アトラス院」出身。初代の首席院生(「院長」と呼ばれ、「アトラシア」の称号を受ける)の出した未来計測の解=「人類の消滅」をなんとか回避するために尽力するが、その方策はことごとく失敗に終わり、結果として狂う。遂には自身を死徒とし存在を強化することで秘法といわれる「第六法」に挑み、敗れ去る。
- その際に肉体を失ったが、アルトルージュと契約するなどあらゆる保険をかけて自身を「現象」にし、人々の噂や不安を元にして具現化することで肉体が消滅した後も第六法に挑み続けている。
- ある程度限定されたコミュニティー内で広まった噂を曲解し、「一夜にしてその街を飲み尽くす」殲滅の為のシステム。「タタリ」とは、この死徒の通り名であると同時に、彼が保有する固有結界の名でもある。
- ネロやロアと同じように、既にズェピアとしての人格は失っており、そこにあるのはただの「現象」としてのタタリである。しかし、Melty Bloodで具現化したように、生前の姿で再現される事もある様だ。
- タタリの駆動式によって具現される時間が決められており、一夜明けると自動的に消滅する。しかしタタリ駆動の千年間に出現出来うる土地はズェピア生前に既に決定されている。その決定された数多の土地の内で条件を満たす噂の広まりを見せたとき、タタリが具現するのである。例え誰かに滅ぼされたとしてもその場のタタリが消滅しただけであって、タタリ消滅によって再び霧散した霊体は次の機会にはまたタタリとして形を成す。
- そのため、「直死の魔眼」を持つ志貴ですら殺しきる事が出来なかったが、最後はアルクェイドにより、契約の終わりを意味する「千年後の朱い月」を具現化させられ、タタリとしての能力を失ったあげく自己に打ち勝ったシオンと志貴により、消滅を迎える。
- 「ワラキアの夜」とは、タタリがはじめて発生した場所がワラキアであったため、聖堂教会から付けられた通り名である。
- 14.ヴァン=フェム(ヴァンデルシュターム)
- 最古参の死徒の一人。「魔城のヴァン=フェム」とも呼ばれる。精巧さには欠けるが、巨大な物を作り上げるという面では最高の人形師。「魔城」と呼ばれる七つの巨大ゴーレムを作り上げた。二十七祖の中で唯一人間界にも身を置き、世界有数の巨大財閥のトップであり、財界の魔王と呼ばれる。第一次大戦後から吸血手段を用いずに勢力を増やしていった。最近はモナコにビルを構え、週に一度カジノ船にて人々の挑戦を受けている。ここ数百年のマイブームはエコロジーで、地球環境を憂いたりもしている、良くも悪くも世俗的な人物。本名は「ヴァレリー・フェルナンド・ヴァンデルシュターム」。以前、フィナに第五城「マトリ」を破壊されたことから、アルトルージュ派を嫌っている。トラフィム派とも離反したのだが、アルズベリで行われるとある儀式の前準備の為、出資という形で白翼公に手を貸した。
- 15.リタ・ロズィーアン
- 実力による地位の簒奪が当然な二十七祖には珍しく、先代から正式に地位を継承した死徒。芸術家を自称し、死徒の中でも特異な趣味を持つ。やりたい放題の快楽主義者だが、根がひん曲がっているために満たされることがなく、絶えず退屈している。
- 二十一位のスミレとは殺しあうほど仲がよい関係にあるという話。
- 16.グランスルグ・ブラックモア
- 外見は人間ではなく、全長数キロという巨大なカラス。人間に似た形態にもなれる模様。魔術師上りの死徒で、優れたソウルキャリアー。本名は不明で、グランスルグ、ブラックモアの名は本名ではなく彼の在り方からついた異名。生前は鳥を神聖視していた魔術師だったが、朱い月に戦いを挑まれあっさり敗北。しかし、最後の最後である偶然で助かり、それを良しとした朱い月は自分付きの魔術師になるよう命じる。以後は朱い月にのみ忠誠を誓い、使い魔のように仕えていた。朱い月に血を吸われなかったために、自ら魔術を究めて死徒と化した。
- 大掛かりな儀式には欠かさず足を運び、多くの眷属を有する社交的な大吸血鬼だが、他の死徒からは疎まれている。彼に血を吸われた者は鳥の頭と翼を持つ怪物となり、彼の姿とその眷属達が人としての体裁を保たないことが原因である。尤もブラックモアからすれば、人の姿をしている時点で他の死徒たちこそ優雅さに欠けている、とのこと。
- 魔術でもある固有結界「ネバーモア」(絶対無明の死の世界)を持つ。死徒でありながら、その力は死徒に対してのみ有効とされ、死徒殺しとも言われる。
- 正式な襲名はしていなかったものの元々二十七祖の一角として数えられており、朱い月の死後は先代十六位の居城へと堂々と攻め入り、「ネバーモア」により一切の流血も、城を始めとした周囲への損傷もなく先代十六位とその派閥を皆殺しにして十六位を襲名した。
- 「黒翼公」「月飲み」「鵬」とも呼ばれる。「黒翼公」の名は「白翼公」と比較し、彼とは似ても似つかないという皮肉。とは言え実力・歴史共に白翼公に匹敵する彼に対して、面と向かって皮肉を言えるのは祖の上位ぐらい。『月姫2』では、化け物揃いの登場人物達の中でもトップクラスに位置する実力者。
- メレム・ソロモンとは共に朱い月に忠誠を誓った仲間であるが、ブラックモアはメレムの朱い月に対する忠誠が思慕の混じったものである事を嫌悪しており、彼に対して常に殺意を抱いている。ただし、ブラックモアは朱い月の為でしか戦わず私闘は行わないので殺そうとはせず、また朱い月に対して忠誠を誓っているのは同じなので共闘はする仲。
- メレム曰く、自分ではアルトルージュの護衛と相打ちが精々らしいが、彼と組めば護衛ごとアルトルージュを滅ぼせるらしき発言をしている。また、月姫2ではメレムを殺すらしきことが暗示されている。
- 現在は教会に封印されている。
- 17.トラフィム・オーテンロッゼ
- 最古参の死徒の一人。「白翼公」とも呼ばれる。朱い月の最初の従者。魔術師上りの死徒で、現段階での死徒の王とされる。典型的な吸血鬼で、死徒に特殊能力(ネロやグランスルグ、エル・ナハトらに代表されるような)は必要なく、ただ吸血種として優れていればよいと考えており、結果として十七位に位置付けられる。尤も、実際に死徒の王を名乗るだけの勢力と実力を持ち合わせており、頭は悪いが決して無能ではない。
- 形式上だけなら二十七祖において最大の発言力と領土を有する為か、実質的な王であるアルトルージュ派を嫌悪している。真祖たちを嫌っており真祖討伐を主唱するが、唯一にして絶対の真祖・ブリュンスタッドには敬意を現している。ネロが死んだのは彼が立案した「真祖狩り」のせい。
- 18.エンハウンス
- TYPE-MOONが作った架空の予告編『月姫2』に登場。「復讐騎」とも呼ばれる。先代の十八位を破り二十七祖となったばかりであるため、エンハンスソード(片刃剣)と蔑まれている。吸血鬼としては半端で、他の祖のような超抜的な固有能力も持っていない。が、人間性を失っていないためその行動力と目的達成のための精神力は随一である。先代から奪い取った魔剣「アヴェンジャー」を右手に、埋葬機関製の聖銃「聖葬砲典」を左手に死徒を狩る。しかし、半人半死徒であるが故に、人間の部分が残っているため、アヴェンジャーを振るうたびに右手の神経が崩壊し、死徒であるため、聖葬砲典を扱うたびに左手が腐っていくというハンデを背負う。個人ではなく一族全てを対象とした“死徒を滅ぼす”為の闘争を行うので、死徒にとっては度し難い裏切り者。夥しい憤怒の呪いに身を浸しながらも人間としての理性を失っておらず、その怨念こそが理性とも言える。
19.教会によって殲滅され、空席
- 20.メレム・ソロモン
- 「フォーデーモン・ザ・グレイトビースト」の異名が示す通り、四大魔獣(悪魔)を使役する悪魔使い。シエルの埋葬機関における嫌な先輩であり、ランクは五位。「王冠」の名を冠する。そのため、エンハウンス同様、二十七祖に於いて異色の立場となっている。本来ならば裏切り者とされるはずだが、何故か他の祖はメレムを容認している。
- 通常は左腕に化身している魔獣に壮年の司祭を演じさせ、自身の名代としているが、実体は十二歳程の子供の姿(実際年齢は千年以上)。本来は小さな集落で祭られた神子で、動物と心を通わせられる能力だけではなく、他人の願いを具現化するという能力(デモニッション)も持っていたため、幼くして四肢を切断され祭壇に祭り上げられていた。その状態が長く続けば生き神となっていたかもしれないが、偶然通りかかった朱い月がメレムを見初め、村人を皆殺しにすると宣言。村人は朱い月を倒す神獣を次々と想像し挑ませたが敵うはずもなく、夜明け前にメレムは力尽きて死亡、村人達は皆殺しにされた。その後、朱い月はメレムを死徒として蘇生させ、メレムの生み出した神獣を彼の手足とさせる。以後、朱い月の死徒となった少年はソロモンの二つ名を貰い、古き死徒の一人となり、ブリュンスタッドにのみ忠誠を誓う。アルクェイドの協力者でもあり、アルクェイドの髪を奪ったアルトルージュを「紛い物」と呼び、討ち滅ぼそうと狙っているが、彼の力では護衛と相打ちが関の山らしい。古今東西の秘宝コレクターであり、埋葬機関に籍を置くのはその擁する秘宝の近くにいたいからだといわれる。
- グランスルグ・ブラックモアとは同じく朱い月に忠誠を誓った仲間であり、メレムにとっては一度は戦いたい相手ではあるものの、彼に対しては仲間としての感情を抱いている。なぜブラックモアが自分に殺意を抱いているのかは気付いていない。月姫2ではブラックモアに殺されるらしきことが暗示されている。
- 21.スミレ
- 流水を克服した水魔。しかしその代償として水から出られなくなった。水中では常に酔っ払っている状態なので弱そうに見られるが、実は上位に食い込むほどの構成力の持ち主で、本来は真祖しか使えない「空想具現化」を死徒で唯一可能とし、地上に上がり水気を抜けばその実力が発揮されるといわれる。「ウォーターボトル」とも呼ばれ、水中で戦えば二十七祖中ダントツの実力の持ち主。
- リタの親友でもあり、お互い「相手が死ぬときは自分が殺す時」と思っているとか。一応城は持っているものの、もぬけの殻。
22.教会によって殲滅され、空席
23.教会によって殲滅され、空席
- 24.エル・ナハト
- その実体はドッペルゲンガー。「屈折」とも言われる、心中のスペシャリスト。自らの肉体の消滅と引き換えにほぼ確実に相手を消去するという能力を有するが、肉体の再生には数十年を要するといわれる。現在はその本体が教会によって鏡張りの牢獄結界に封印されている。埋葬機関の第一位と第二位は、これの胃から作った呼び出し端末で本体の二つ名でもある「胃界教典」を持ち、対死徒における最大の切り札として稀に運用するらしい。その場合、事実上無敵。
25.教会によって殲滅され、空席
26.教会によって殲滅され、空席
- 27.コーバック・アルカトラス
- ネロやゼルレッチ、ワラキア同様、魔術師出身の死徒で、信仰者でもあった。自身の研究成果であり思想の終着である聖典「トライテン」を隠した迷宮を作ったものの、そこから出られなくなってしまい、ここ数百年表舞台に出ていない。現在は南京錠に姿を変えて迷宮に逼塞している。魔術の実力は魔法使い一歩手前。「千年錠の死徒」とも呼ばれる。ゼルレッチとは旧知の仲。死徒二十七祖ではお笑い担当らしい。
- ex.ミハイル・ロア・バルダムヨォン
- 元々は教会の神官であり、「埋葬機関」の前身と思われる「埋葬教室」の創立者。「アカシャの蛇」「転生無限者」の二つ名を持つ。錬金術を基礎とした魔術師で、数紋魔術を扱い、固有結界「過負荷(オーバーロード)」を持つ。「永遠」を求める余りアルクェイドに血を吸わせてその死徒となり、自らの魂を転生させる方法を編み出したことで「永遠」を体現した。
- 歴代の転生体はそのほとんどが高い社会的地位と金銭を持つ家柄で、皆優れた血統と人外の素質を備えていたが、どれもその実力は転生前のロアには及ばなかった。初代ロアは稀代の魔術師であり、そこに最強の真祖の力を加えさらなる力を手に入れていた為である。
- 初代ロアは当時の空席となっていた二十七祖の眷属達を纏め上げ一大派閥を作り上げ、教会側から二十七祖の一角として数えられることになる。その実力は彼を諌めにきたアルトルージュを返り討ちにする程だったが、その後教会と協力したアルクェイドによって討たれた。以後、志貴により存在を終わらされるまで実に十七回もの転生とアルクェイドとの殺し合いを続ける事になる。
- 番外である為二十七祖からは同胞として認められず忌み嫌われているが、ネロとは盟友であり旧知の仲。ネロに「創世の土」の作り方を教えたのは彼である。
- 利用するだけであったはずのアルクェイドに、一目見た瞬間に心を奪われ、彼の気付かぬうちに計画が狂っていく事となる。
- ex.弓塚さつき
- 人間としての詳細は月姫本編の項を参照。
- ロアによる吸血の結果死徒となった。通常なら、吸血種としての素質を持つ者であっても、意思を持たない「死者」の状態から相当長い期間を経てようやく「リビングデッド」となり自我を取り戻すところを、彼女の場合は肉体的・霊的ポテンシャルがずば抜けていた為に、「死者」と「リビングデッド」の二つの過程を非常に短期間(実質1昼夜)のうちにすっ飛ばし(並みのポテンシャルなら百年近くかかる)、「死徒」化している。また、僅か半年後(『MELTY BLOOD Re・ACT』)には、固有結界「枯渇庭園」を身につけている。潜在能力的に初期の二十七祖並みと目されている。彼女曰く死徒業界では「数年に一度の逸材」なのだとか。
- ex.吸血鬼シオン
- タタリから吸血衝動を送り込まれ完全に死徒化してしまったシオン。V(ヴァンパイア)シオンとも呼ばれ、タタリの後継を名乗る。
- これまでとは違い、爪や吸血などの吸血種としての能力を操り戦う(エーテライトも一応使用する。ガンバレルレプリカは『MELTY BLOOD』では使用していたが、『MELTY BLOOD Re・ACT』以降は使用していない)。
- タタリの能力を受け継いでおり、人々の不安を具現化させられるという(ラストアークで盾の騎士リーズバイフェを復元したのはこの能力を応用し、タタリに飲まれたリーズバイフェの情報を実体化させたのだと思われる)。
- 『MELTY BLOOD』のエンディングでは死徒化に打ち勝つものの『MELTY BLOOD Re・ACT』ではアーケードモードのエンディングで、ついにタタリの後継として死徒化してしまう。
- ex.白いレン
- 『MELTY BLOOD』で消滅しきらなかったタタリの残滓が使い魔レンの『使用されていない部分』をコピーして実体化した存在。
- 鏡に映った『もう一人のレン』と言うべき存在であり性格はレンと正反対で、言葉も普通に喋る。あと、ツンデレである。
- 『MELTY BLOOD Re・ACT』における騒動の主犯であり、七夜志貴、暴走アルクェイド、ネロ・カオスが復活したのはタタリとしての彼女の力である。
- オリジナルのタタリであるズェピアや、タタリの後継・吸血鬼シオンとは意見を違える。
- また、メカヒスイの出現を予測できなかったり、自らが創り出したコピーに反旗を翻されたりと、意外とツメが甘い部分も。また、ネコアルクには猫キャラと言う事で同類扱いされてるが彼女としては不本意であり、またかなり苦手としている。
- 心象世界『真夏の雪原』を使い、人を覚めることのない眠りへと誘う。
- 死徒として人間の血液を摂取している描写は無いが、ネロ・カオスに対して「ひとつの国に祖は二人いらない」と言い戦いを挑むなど、二十七祖としてのプライドを感じさせることもある。
- レンとは仲が悪そうに見えるが、レンには必要とされており「信頼されているかぎりは力になる」と発言するなど実際にはそうでもないようである。
- 『MELTI BLOOD Act Cadenza』Ver.Bではレンに対抗してマスター(と呼んで「操り人形」)を得るべくアルクェイドに挑み、契約を破棄する事に成功するが、結局マスターに選ばれたのは七夜志貴であった。
- 『MELTY BLOOD Re・ACT』の隠しボス蒼崎青子が「使い魔が欲しい」という理由で創り出したらしい。
- ex.カリー・ド・マルシェ
- 先代ロア(現在のシエル)の取り巻き。かつては「キルシュタイン」と名乗っていた。ロアのおこぼれで相当強くなっていると思われていた。
- シエルの初仕事の相手だったが、カレーの味を知ってしまったがために最低限の血液しか摂取できなくなってしまい、あっさり敗れる(消滅させられる前に、カレーを指し「この星の生んだ至高の食べ物だ。このまま腐らせるのも忍びない」とシエルに勧め、シエル自身も自身を殺す毒ならばそれでもいいと捨て鉢な思いで食べた際、シエルはカレー好きにしてしまった)。が、顔の広い死徒である事と大量の血液を吸えず、ほとんど無害である事から教会からは見逃され、何らかの形で利用されている。
- 触れた物質の性質に干渉出来る超抜能力を持っており、それを以てして血液をカレー味にして大量摂取を可能にするのが現在の野望だが、不味い味(志貴曰く翡翠の料理並み)にしか出来ず、いつになったら美味いカレー味に出来るようになるのか不明。
- 後に二十七祖に加わる死徒きってのお笑い担当…というのは奈須きのこの嘘。
- 奈須きのこはこの死徒の存在自体は認める発言をしていたが、後に武内崇が彼の登場するスピンオフ漫画を描いた際には、その存在をあっさり否定したために友情が壊れかかったらしい。
- ex.ルヴァレ
- 湖の死徒。ノルウェイに潜み、祖に準じる歴史を持った齢五百年を超える古い吸血鬼。空席となった二十七祖の十位を直に受け継ごうとしていた大貴族。親子の死徒であり、後継者として娘と息子に力を分け与えていた。娘と息子一人一人では取るに足らないが、親子が揃うことでその強さは掛け算になる。元は真祖に愛玩目的で汲み上げられた美しいだけの人間であった為、超抜能力は持たない。およそ五千の人間から血を搾取し、感染による被害の拡大を含めばその数倍。数百年前に代行者によって湖に追い込まれ死滅したものとされていたが、奇跡的に生還。以降、それまで関心の無かった親族作りに傾倒するようになり、死徒最大の派閥であるトラフィム・オーテンロッゼの傘下に入った。未だ二十七祖に足る器ではなく、祖と名乗るにはあと二百年は必要と感じていた。その二百年を埋める為、魔術師たちから魔術礼装や概念武装を奪っていた。その成果はメレム・ソロモンすら羨むほど。ルヴァレを狩りにバルトメロイが現れる三時間前に薔薇の予言が届き、その通りに殺人貴に殺される。息子はエンハウンスに、娘はバルトメロイ・ローレライに追い詰められ、両者とも逃げ延びるも、逃げた先で父と同じく殺人貴に殺された。
12、19、22、23、25、26位は教会(ナルバレック3体)及び協会(バルトメロイ2体)によって封印或いは殲滅され、空席である(残る一体を誰がしとめたかは不明)。とは言え、偶発的に後継者が空位に収まる場合や、祖が滅んでもその祖の派閥そのものが健在ならば、祖をめぐる派閥内闘争を制した死徒が後継者となる場合もあり、27を保つように出来ているようだ。死が訪れる祖には薔薇と言う二つ名を持つ祖がその祖に対し警告を行う。