油冷エンジン
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油冷エンジン(ゆれいエンジン)とは、冷却媒体にエンジンオイルを活用するエンジンである。エンジンオイルは本来、潤滑が主目的で冷却効果は副次的なものに過ぎないが、オイルジェットでピストンの裏側にオイルを射出させたり、大型のオイルクーラーを設けて油温の低下を図るなどの工夫により冷却効果を得る。
基本的には空冷エンジンからの派生的存在といえる。オイルクーラーを持つ空冷エンジンと、油冷エンジンの違いはシリンダーヘッド部の冷却方法にある。シリンダーヘッド内、燃焼室の上側に向けてオイルを噴射するノズルが設けられており、ここからオイルを勢い良く吹き付けることにより熱境界層を破壊し、効率的に冷却を行うことが出来る。水冷のように別個独立した冷却装置を用いなくても冷却できるので簡略かつ軽量に作れるのが利点。オイルによる冷却は全体の冷却量の50%以上を担っているため、「空冷の不足分を油冷で補う」という意味で使われる「空油冷エンジン」と「油冷エンジン」は別のものである。しかし、潤滑油は冷却水に比べて比熱が劣ることから、極限状態での油冷エンジンの冷却効率は水冷エンジンに劣る。
水冷システムが発達した現在ではあまり見られなくなってきたが、軽量さと冷却による効率とのバランスがとれる事から、スズキが製造しているオートバイの一部車種では、今でも油冷エンジンが採用されている。しかし、その油冷エンジンが搭載されているバンディット1200/S及びGSX1400に油冷ファイナルエディションという特別仕様車が発売されており、オートバイに於ける油冷エンジンはこの特別仕様車の生産終了とともに姿を消すこととなってしまった。ポルシェ911の空冷モデルは、大量のエンジンオイルで燃焼室温度をコントロールしており、広義の意味で空油冷エンジンに該当するであろう