油圧ショベル
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油圧ショベル(ゆあつ-)とは、アタッチメントの付け替えによって様々な用途に使われる建設機械である。下向きのバケットを取り付けてバックホーとして使うのがもっとも一般的だが、その他にも上向きのバケットを取り付けてローディングショベルとして、ブレーカユニットを取り付けてブレーカとしてなど、幅広い用途に使われる。
油圧式ショベル、ユンボ、パワーショベル、ショベルカー、ドラグショベルともいう。 英語ではエクスカベーター(Excavator)。また、車両重量が6トン未満のものに関しては、ミニ油圧ショベルとして区別されている。一般的には「パワーショベル」または「ショベルカー」という呼び名が定着している。「パワーショベル」はコマツが商品名として用いた言葉が一般に広く普及したものである。「ショベルカー」は報道関係でよく使われ、一般にも比較的よく知られた呼び名である。「ドラグショベル」は日本の官公庁で使用することが多い。「ユンボ」は建設業界関係者が隠語としてよく用いるが、もともとはフランスの建設機械メーカーであるシカム社(現・ユンボ社)の商品名である(ユンボを参照のこと)。「油圧ショベル」は1990年代に入ってから、社団法人日本建設機械工業会により新たに制定された統一名称である。
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[編集] 動力源
ほとんどの場合ディーゼルエンジンである。近年では街中の騒音を配慮し、小型の物は騒音防止策などが講じられている物が多い。 国内においては、国土交通省が低騒音型建設機械、超低騒音型建設機械の指定制度がある。
また、近年、屋内で使用する油圧ショベルについてはエンジンの代わりにモーターを搭載し、設備からの電力でポンプを駆動するタイプの油圧ショベル(通称:電動ショベル)も登場しているほか、エンジンとバッテリー、モーターを組み合わせたハイブリットショベルの開発も行われている。
[編集] 走行装置
多くはクローラによって走行するが、自動車のようなタイヤを装備したものもある。タイヤ式はクローラ式より不整地での走行性や作業中の安定性に劣るが、公道を自走して作業現場へ移動できるという利点がある。クローラ式のものはトラックに載せて現場へ運ばなくてはならない。クローラの駆動は本体の油圧ポンプで走行装置の油圧モーターを動かして行っている。
[編集] アタッチメント
- ブレーカ
- タガネの打撃で物を破壊する。コンクリート構造物の破壊、採石場での大岩石の小割り、道路工事の岩盤破砕・溝堀などに使用する。発破作業が出来ないトンネル工事にも使用される。阪神大震災の復興には、高速道路の解体、岸壁の破壊などに活躍した。
- 空気ハンドブレーカは欧米で開発されたものであるが。1957年ブルドーザに取り付けるために大型空気圧ブレーカが日本のNPKによって世界で初めて開発された、IPH-400が起源である(アイ・ピー・エイチ・400=アイヨン)の愛称で親しまれた。今はより効率のよい油圧式が主流になっている。
- リフティングマグネット
- 強力な電磁石により磁性のあるものを吸い付ける。金属の選別や鉄スクラップの移動に。電磁石の電源は油圧ショベルに内蔵した油圧発電機により得る場合が多い。
- グラップル
- 大きな嘴のようなようなアタッチメント。物を掴むことができる。木造家屋の解体や廃棄物の分別などに。
- カッター
- 鉄骨切断機とも言う、巨大なハサミ。建物や自動車、航空機の解体に。
- クラッシャ
- 圧砕機とも言う、巨大なペンチ。ビル、高速道路などの解体に使われる。鉄筋コンクリート構造物を噛み砕く、鉄筋を切ることも出来る。
アタッチメントの操作は床に設置したペダルを使用するものと、作業機の操作レバーにボタンを追加するものがある。但しアタッチメント専用の油圧ホースが装備された機種でないと操作する事ができない。
メーカ:NPK
[編集] 操作方法
主に運転者の足元から出ている2本のレバーと、両手の近くに配された2本のレバーを用いて操作する。
足元から出ている2本のレバーでクローラを操作するが、運転席を備えた上部旋回体は360度旋回可能なため、上部旋回体の向きによってレバーの操作が逆になるので注意が必要である。多くの場合このレバーに直結されたペダルもあり、このペダルでも同様の操作が可能である。
運転者の両手近くにある2本のレバーで、左右旋回、ブーム上げ下げ、アーム曲げ伸ばし、バケット掘削開放の4つの操作を行う。 2本のレバーはそれぞれ縦に動かしたときと横に動かしたときで違う働きをするので、4つの操作を2本のレバーで行うことができる。 2本のレバーの縦横の動きそれぞれにどの操作を割り当てるかは、かつてはメーカーごとにまちまちであったが、現在ではJISに定められた方式と、俗にコマツレバーと呼ばれる方式の2つにほぼ集約されている。
機種によってはバケット以外の作業装置を装備しているので、それらを操作するためのレバーやペダルが追加されている。
自動車と違ってスロットル(アクセル)を頻繁に操作する必要がないので、スロットルの操作はレバー式、ダイヤル式、速い・普通・遅い・アイドリングのボタン式など、メーカー・機種によってまちまちである。
[編集] クローラの操作
クローラの操作は統一されている。片手でも両手でも操作できるよう、運転席の前方中心部に2本隣合わせに配置される。中型以上の機種では足もとのペダルと連動し、ペダルでの操作も可能。
- 両方のレバーを同時に前へ倒せば前進する。
- 両方のレバーを後ろへ倒せば後退する。
- 片方のレバーだけを操作すれば旋回する。
- 片方のレバーを小さく、もう片方のレバーを大きく倒せばカーブしながら前進する。
- 両方のレバーを互い違いに操作すれば超信地旋回する。
左クローラ前進 右クローラ前進 ↑ ↑ ○ ○ ↓ ↓ 左クローラ後退 右クローラ後退
[編集] 作業装置の操作
現在ではメーカー出荷時の操作方法はJIS方式に統一されているが、作業現場では他の方式に変更されていることも多い。
[編集] JIS方式
標準操作方式、ISOパターン、横旋回とも呼ばれる。バケットを横へ動かすときは横に、縦に動かすときは縦に左レバーを操作するという直感的で分かりやすい操作方法である。
アーム伸ばし ブーム下げ ↑ ↑ 左旋回←○→右旋回 バケット掘削←○→バケット開放 ↓ ↓ アーム曲げ ブーム上げ
[編集] コマツパターン
JIS方式と比べて、右レバーは同じだが、左レバーの上下と左右が逆転している。縦旋回とも。JIS方式と人気を二分している。分かりやすさではJIS方式に劣るが、小刻みに操作することの多いアームを操作しやすい横のレバー操作で操るので慣れた後の作業性は高い。例えばバケットに付いた土砂を振るい落とす動きを例に取ると、コマツパターンでは左右のレバーを内側に寄せたり外側に倒したりを繰り返せばよいが、JIS方式では左右非対称の操作になってしまい行いにくい。
右旋回 ブーム下げ ↑ ↑ アーム伸ばし←○→アーム曲げ バケット掘削←○→バケット開放 ↓ ↓ 左旋回 ブーム上げ
[編集] 三菱パターン
他の方式と違って右レバーで旋回するので特に注意が必要である。
ブーム下げ アーム曲げ ↑ ↑ バケット開放←○→バケット掘削 左旋回←○→右旋回 ↓ ↓ ブーム上げ アーム伸ばし
[編集] 旧ヤンマーパターン
JIS方式に近いが、左レバーの上下が逆転している。現在では見かけることは稀である。
アーム曲げ ブーム下げ ↑ ↑ 左旋回←○→右旋回 バケット掘削←○→バケット開放 ↓ ↓ アーム伸ばし ブーム上げ
[編集] 操縦者
油圧ショベルの運転には大型特殊免許を取得する必要がある。ただし大型特殊免許では公道上を運転することだけしかできず、油圧ショベルを用いて作業を行う場合、これとは別に労働安全衛生法に基づく車両系建設機械(整地・運搬・積込・掘削用)を取得する必要がある。
[編集] 制御方法
油圧ショベルは出力の制御も主に油圧を用いて行っており、以下のような制御の方式が用いられている。 油圧ショベルの制御は基本的に一定の圧力に固定し、各アクチュエーターに必要な流量を供給するようにポンプを制御する。
- オープンセンタ・ネガティブコントロール制御
- オープンセンタ・ポジティブコントロール制御
- クローズドセンタ・ロードセンシング制御
それぞれの制御方法のオープンセンタ、クローズドセンタとは油圧回路を制御する弁の集合体であるコントロールバルブの構造に由来している。 オープンセンタ方式では、センターバイパスと呼ばれる回路が無負荷状態では解放され油圧がタンクに流れ込むのに対し、クローズドセンタ方式では無負荷状態ではセンターバイパスは閉じており油圧はタンクに帰らない。
[編集] メーカー
[編集] 油圧ショベルをテーマとした作品など
- ゲーム
- パワーショベルに乗ろう!!(タイトー)