津地鎮祭訴訟
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津地鎮祭訴訟(つじちんさいそしょう)は、三重県津市で市立体育館建設の際に行われた地鎮祭をめぐり、日本国憲法第20条に定められた政教分離原則に反するのではないかと争われた行政訴訟(住民訴訟)。
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[編集] 経緯
津市体育館建設起工式の際に、市の職員が式典の進行係となり、神社の宮司が神式に則って地鎮祭を行った。市長は神社に対して公金の支出を行った。これに対し、津市議会議員が地方自治法第242条の2に基づき、損害補填を求めて出訴した。
[編集] 論点と最高裁判決
日本国憲法には、政教分離に関して以下のような条文がある。
- 「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」(第20条)
- 「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」(第20条)
- 「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」(日本国憲法第89条)
そこで、当該地鎮祭への公金の支出がこれらの条文に反するのではないかということが論点になった。一審で原告の請求棄却。二審では原告勝訴。
最高裁判所は(昭和52年7月13日大法廷判決)
- わが憲法の前記政教分離規定の基礎となり、その解釈の指導原理となる政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いが右の諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものであると解すべきである。
という判決を出し、二審判決の市長敗訴部分を破棄し、原告の請求を棄却した。ここでは、いわゆる目的・効果基準という判断基準を採用している。なお5裁判官の反対意見がある。
[編集] 参考
- 最高裁判所判例集 第31巻4号533頁 [1]
[編集] 関連事件
- 箕面忠魂碑訴訟
- 自衛官合祀事件
- 愛媛県靖国神社玉串訴訟