消波ブロック
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消波ブロック(しょうはブロック)とは、海岸や河川などの護岸を目的に設置する構造物。別名、波消ブロック(なみけしブロック)、護岸用コンクリートブロック。一般には登録商標である「テトラポッド」と呼ばれることが多い。なお、「テトラポッド (tetrapod)」は「4本足」を意味するギリシャ語を語源とし、英語では「四肢動物」を指す。
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[編集] 概要
外海に面した地域では、水深が浅くなる海岸近くに於いて波の影響により海岸線が著しく浸食されるケースが多い。近年では海岸線近くにまで建造物が建てられていることが多く、海岸線のさらなる浸食を防ぐ必要性がある。
このため、海岸沿いに多数の大型ブロックをかみ合わせて並べることで、波のエネルギーを減衰・消散させる目的で設置される。設置される場所は海岸線の他、離岸堤(人工の離水海岸)として沖合に設置されることもある。
[編集] 種類
波のエネルギーに抵抗するため、単体でも重量は0.5t~80tと大きいのが特徴である。形状もかみ合わせを考慮し、四脚ブロック、六脚ブロック、八脚ブロック、中空三角ブロック、ドーム型等様々なものがある。これらは型枠を制作する会社毎にバリエーションが異なる。
日本国内で見かけることが多い四脚ブロック「テトラポッド」は放射状に4本の脚が伸びた形のコンクリート製の消波ブロックであり、1949年にフランスのネールピック社により発売されたもので、モロッコの火力発電所の護岸工事に用いられた。日本国内には、株式会社テトラ(現・不動テトラ)により1960年代頃から導入され普及した。なお、テトラポッドの名称及び形状は不動テトラの登録商標(商標登録第1184901号等)であり、他社の製品で使用することが出来ない。
国産の消波ブロック第1号は技研興業(1958年創業)による六脚ブロックである。しかし、テトラポッドの曲線的で独特な存在感や、古くから消波ブロックとして普及していたことから一般に消波ブロックの一般名詞として「テトラポッド」の呼称が定着しているといえよう。
[編集] 製作と据付け
ブロックの作成は、主に工事施工業者がブロックを取り扱う業者より鋼製の型枠のリースを受け、現場周辺でコンクリートを流し込み作成する。他のコンクリートブロックのように工場製作しないのは、大量生産のメリット以上に輸送にコストがかかるためである。
製作したブロックはクレーン船などで現地に据え付ける。ブロックの形は、複数基を立体的に強固に組み上げられるよう設計されているが、施工性や目的により最初から組み上げない「乱積み」をすることもある。
[編集] 批判
消波ブロックの設置は、独特の形状と色彩から日本の海岸の原風景である白砂青松を破壊するものとして批判が強い。しかし、そもそも日本の砂浜の多くが後退傾向にあり、近年の台風上陸による災害等を考え合わせると、養浜目的のためや来襲波浪から国土を守り、周辺住民の安全な生活を維持する上で消波ブロックの社会的な必要性は今後とも継続する。また、ブロック形状の改良や付加価値を付けることで、カニや藻類の生息環境を創出するなどのメリットがあることも忘れてはならない。
[編集] 他の利用用途
ブロックをクレーンで積み上げるという施工性の容易さから、近年では海岸ばかりではなく砂防、治山などの防災工事の現場でも利用されており、火山噴火の際の緊急工事などに利用されている(この場合、単にコンクリートブロックと呼ばれる)。
[編集] エピソード
- 歌手のaikoのヒット曲『ボーイフレンド』の歌詞の中に「テトラポット登って」という言葉が出てくる。彼女がNHK紅白歌合戦に出演する際、登録商標である「テトラポッド」に類似していることが問題となったが、別の言葉と判断され歌詞はそのまま放送された(NHKは公共放送であるため、宣伝行為となる歌詞での商標名の放送を制限することがあり、紅白歌合戦などの歌番組での歌詞の変更を求めることがある。過去においては山口百恵の「プレイバックPartII」の歌詞の中の「真っ赤なポルシェ」のフレーズを「真っ赤なクルマ」に変更したほか、Mr.Childrenの出演時などにも同様の例がある)。民間放送でも「消波ブロック」と言う場合もある。