渦電流式ディスクブレーキ
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渦電流式ディスクブレーキ(うずでんりゅうしきディスクブレーキ)とは、鉄道車両で使われる電磁ブレーキの一種である。車軸に取り付けた円盤(ディスク)を電磁石で挟んだブレーキ装置で、円盤に渦電流を発生させることによってブレーキ力を発生させる。作動に必要な電力については、発電ブレーキ又は電力回生ブレーキで生じた電力を利用する。モーターを搭載しない付随車に採用され、新幹線車両では100系から搭載された。
利点としては、モーター非搭載の車両にも搭載できること、非接触式のブレーキのためブレーキディスクを消耗しない、およびブレーキパッドが不要となることがある。
その反面、強力で大型な電磁石を必要とすることから、重量が交流(三相誘導)モーターより重くなるため、車両全体の重量増につながること、そして電力回生できないため省エネルギー性に難があるという問題がある。そのため、近年JR東日本が製造したE1系以降の新幹線車両においては、軽量化のため付随車に渦電流式ディスクブレーキを搭載せず電動車の電力回生ブレーキに遅れ込め制御を追加し、回生ブレーキの負担率を上げることによりブレーキ力を確保している。
なお、東海・山陽新幹線用に開発され現在試験中のN700系の先行試作車(Z0編成)にも両先頭車(制御車)に完成前の計画では搭載される予定であったが、電力回生ブレーキの性能向上と電動車の比率の増加によって必要なブレーキ力を回生ブレーキのみで確保できること、また、車体傾斜を車両単位で精密に行うため、位置検出のずれの原因となる車輪空転を完全に抑える必要があることから仮に装着しても緊急制動時以外は使用できないため実際には搭載されなかった。