煙管
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煙管 (きせる)は、喫煙道具の一種である。しかし、現代において「キセル」の語は語源をはなれ、交通機関などで煙管がその両端にしか金属を使っていないことから「始めと終わりにしかお金(カネ)を使わない」という不正乗車の意味で使用されることが多いので、喫煙道具本来の意味であるこの項目では「煙管」と漢字での表記に統一した。なお、麻薬関係での使用については、麻薬の各項目を参照されたい。
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[編集] 語源
語源については異説もあるが、カンボジア語で管を意味する『クセル』が、訛ったものとされる(参考:渡邊實著『日本食生活史』 - 吉川弘文館)。
[編集] 煙管の部品
大きくわけると、刻み煙草を詰める火皿(椀形の部分)に首のついた雁首(火皿の付け根から羅宇と接合する部分まで)、口にくわえる部分の吸い口、それらをつなぐ管の羅宇(らう)にわけられる。また、羅宇の語源は、カンボジアに近い羅宇国(ラオ国・ラオス)の竹(黒班竹)を使用していたことによる。
[編集] 煙管の材質
雁首、火皿、吸い口については耐久性を加味してその多くが金属製であり、羅宇については、高級品では黒檀なども見受けられるが、圧倒的に竹が多いようである。このように羅宇が植物性の煙管を”羅宇煙管”と呼ぶ。幕末以降には吸い口に草花などの彫刻や鍍金装飾がみられる。これに対して、全体が金属製の煙管を”延べ煙管”と呼んでいる。使用される金属の種類は金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、またはそれらの合金など多様で、鍍金や象嵌を施したものもある。また全体が陶製やガラス製のもの(最近のガラスパイプなどとは形状が違う)もあり、中には竹や木でできた簡易煙管もあった。
[編集] 喧嘩煙管
喧嘩煙管(けんかきせる)とは江戸時代に町奴が主に用いていた煙管である。町奴は町人である故、刀や長い脇差の携帯が許されなかった。そこで旗本奴に対抗するための武器として総鉄製の煙管を造らせ、これを携帯していた。長さは40~50cm、太さも数㎝あり、羅宇を六角形にしたり、羅宇全体にいぼをつけるなど棍棒さながらの加工がされている。
[編集] 煙管の使用方法
煙草は時代劇等によると。
1.細く刻まれた繊維状の刻みタバコを適応な大きさに丸める。
2.雁首の火皿に丸めたタバコを詰める。袋物のタバコ入れの中に雁首を突っ込んで詰める人もいる。
3.煙草盆の炭火に雁首を近づけて火を点ける。
4.タバコをそっとゆっくり喫う。
5.タバコが燃え尽きて煙が出なくなったら、煙草盆の灰吹きのふちを軽く叩くなどして灰を落とす。
6.火皿に灰が残っていたら空吹きをして灰を飛ばす。
7.火皿一杯で満足できない場合は、1~6..の繰り返し。
燃え尽きる前の火のついた灰の塊を掌に載せ、 それが消える前に新しいタバコを火皿に詰め、 掌の燃えさしで着火し、連続して喫煙する人もいる。
[編集] 煙管の手入れ
紙を捻ったコヨリ(紙撚り)等の細い物を管に通してヤニをとる。煙管全体が金属製の場合は、ぬるま湯に浸けおくとふやけてくるので掃除がしやすい。
[編集] 刻みタバコについて
刻みと呼ばれているが、紙巻きタバコの中身のように細かく刻まれたものではなく、干した葉を重ねて包丁もしくはカンナで糸のように細く切ったもの。世界のタバコ製品の中で最も加工度が低いものの一つで、タバコ葉本来の味が楽しめるとして熱心なファンが多い。専売制が実施される前は個人経営のタバコ店がそれぞれの刻みタバコを製造販売し、何千種類もあったが、専売制の下でマスプロ化が進んだことと、紙巻きタバコの消費増大で需要が減ったことで数銘柄からさらには1銘柄に減り、ついには国内での製造が打ち切られた。しかし日本の伝統文化として復活と存続を望む声が多かったため、タバコ農家に在来種の栽培再開を依頼し、1銘柄ではあるが昔ながらの良質の刻みタバコが復活した。
[編集] 煙管と文化
多くの時代劇等で煙管は重要な小道具として登場することが多いが、16世紀以前の話に登場すれば全くの嘘であり、16世紀以後でも喫煙人口の少ない古い時代に庶民が立派な煙管を持っているのもおかしい。また武家や商家などでは、贅沢の禁止と防火の意味から使用人には喫煙を禁止することもあり、誰もが煙草入れをぶら下げていたわけではない。
武士の場合はステータスシンボルと同時に自分の志の表現として、特別に自分の好みを施した煙管を注文したりした。明治維新後に刀の携帯が禁止されたので、護身用にと鉄の煙管を持ち歩く武士達もいた。
多くの場合は、大店の番頭や主人等が自分にあった道具をあつらえたりと、嗜好の世界というより一種のファッションやステータスシンボルであった。また、煙草入や煙管筒に流行もあったといわれる。
江戸時代の吉原等の大見得(上等な女郎屋)の太夫(上等の遊女)等の間では、位が上ると帯の幅が広くなり、それに合せてその帯にさす、煙管の赤塗りの羅宇も長くするシキタリがあり、煙管の長さで女郎の格をはかることができた。
遊女は気に入った客に煙管を差し出し、受け取るとその遊女を気に入ったということになる。歌舞伎『助六由縁江戸桜』のせりふにある「煙管の雨」とは、助六の男っぷりを暗に示す。
時代劇や漫画の登場人物のヤクザや武士等が咥えタバコを動かしたり、煙草盆に叩き付ける仕草をする。特にヤクザ映画や漫画等では、煙管を口にくわえたまま振ったりと、親分の意思表示の小道具に使用される。
- 例:
- 強くかむことで怒りや不快感を
- 煙を相手の顔にかける事で威圧を
その他には、手に持ったり、くわえたりした煙管を振るなどの動作で配下に対して、指示を出したりした。
[編集] 現代の煙管
現在は、タバコの喫煙用としての煙管使用者の絶対数は少ないが、下記の理由などでその文化は存続している。
- 自然なタバコの味を楽しむため(香料を使わない刻みタバコを吸う方法として最良であること)
- 紙のタール問題(紙巻タバコの紙からのタールが癌の原因という説があるので)
- 紙巻タバコの吸殻の再利用
- 趣味の世界として(時代劇ファンやコレクター)
- 平成期の青年に、煙管の先に紙巻煙草を差して、喫煙をしている例がある。
- フェティシズムの愛好例として、女性の陰部に挿して火皿に火を入れる使用例がある。