麻薬
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薬物 | 定義 | ||||
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アヘン | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
モルヒネ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ヘロイン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
コカイン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
覚醒剤 | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
大麻 | ○ | × | △ | ○ | △ |
LSD | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
MDMA | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
アルコール | × | × | ○ | ○ | ○ |
タバコ | × | × | ○ | ○ | ○ |
脱法ドラッグ | ? | × | ? | ○ | ? |
THC | ○ | ○ | △ | ○ | △ |
凡例
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麻薬(まやく。元の用字は痲薬)とは、
- 精神に作用し、酩酊・多幸感・幻覚などをもたらす薬物のうち、依存性や毒性が強く健康を害する恐れがあるため、あるいは社会に悪影響を及ぼすため、国家等によって指定され、単純所持が禁じられているもの。
- 日本において麻薬及び向精神薬取締法において麻薬に指定されているもの。
- 法規制の有無を問わず、精神に作用し、酩酊・多幸感・幻覚などをもたらす薬物のうち、依存性や毒性が強く健康を害する恐れがあるもの。
- 薬物のうち、依存性や毒性、法規制の有無などを問わず、精神に作用し、酩酊・多幸感・幻覚などをもたらすもの。
- 薬物のうち、法規制や、精神への作用の有無を問わず、依存性や毒性が強く健康を害する恐れがあるもの。
1, 2の場合医師などによる適正な投与以外の使用は禁止されている。例外として大麻については使用を禁止する条文がないが、使用するには所持または共同所持が必要であるため、国の許可なく国内で大麻を使用することはできない。医療目的における用途は鎮痛が多いが、精神疾患の治療や麻酔からの覚醒に用いられるものもある。MDMAは精神疾患の治療に効果があると主張する研究者や医師もいるが、毒性が指摘されている点、扱いの難しさ、濫用の防止などの問題点により、現在日本の臨床では使用されていない(詳細は該当項目を参照)。
ドラッグと呼称されることもある。
特に依存性や毒性の強いものは世界的にその使用が厳しく規制されているが、その依存性と警察による厳しい取り締まりから密売が横行し価格が高騰、暴力団、ギャング、マフィアなどの集団犯罪組織の重要な資金源になっている。
目次 |
[編集] 濫用による症状
種類により症状は様々であるが、多くの場合薬物依存症に苦しむこととなる。また薬物の作用による幻覚状態や譫妄・錯乱状態が犯罪や自殺を引き起こすことも珍しくない。
犯罪に走る以外にも精神的・身体的の両面で健康を大きく害する場合がある。精神病関連では、覚せい剤精神病・大麻精神病などが知られているが、患者が薬物乱用の発覚を恐れるため、乱用の事実をしばしば隠す。このため、物質誘発性精神疾患として精神科医療施設で治療が行われているのは、患者群の一部に過ぎないと思われる。 覚せい剤乱用の場合、逆耐性の機序のために治療は困難を極める。大麻で誘発された精神病は、しばしば遅発性で、重篤になりやすい。
[編集] 法規制
麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬の所持・譲渡・製造・輸出入が厳しく規制されている。覚せい剤取締法やあへん法または刑法及び大麻取締法においても規制が行われている。ただし、国から許可を得た研究者や製造業者などはこの限りではない。
[編集] 法運用の限界
現在、麻薬に指定されている物質と化学構造が非常に良く似ているが麻薬には指定されていない薬物(デザイナーズ・ドラッグ)を意図的に作り出し、それらが販売され麻薬的に使用される(違法ドラッグ・脱法ドラッグ・合法ドラッグなどと呼ばれる)という現象が社会問題となっている。
作用が似ていても化学的構造が少しでも異なれば麻薬として法で取り締まることは出来ず、仮にそれらを麻薬に指定しても次々と新しい物質が作られるという「いたちごっこ」が続いている。しかし化学的構造や作用が麻薬に似ているのであれば、法的には麻薬でなくとも危険性は麻薬に準じるものと考えられ、実際に健康被害や死亡例の報告もある。
国や自治体により、麻薬の化学構造のうち麻薬様作用を起こす部分を特定し、それらと似た化学構造を持つ薬物を一括して麻薬として指定するなどの法対策が考えられているが、いまだ解決には至っていない。
[編集] 刑罰
麻薬には依存性・毒性があり、乱用による犯罪が起きたり暴力団・マフィアが資金源にしたりする恐れが高いため、ほとんどの国では許可無く製造・所持・使用すると刑罰が科される。中国、シンガポール、マレーシアのように東アジア諸国には死刑を科す国も存在する。
しかし、単に刑罰を科しただけでは依存症から抜け出せないため、再犯で刑務所に収監される人が後を絶たない。
このため、「薬物依存者には刑罰よりも治療が必要だ」とする意見も多く、オランダのようにある程度の麻薬の使用を合法化したり、害の少ない大麻を合法化したりする事例も見られる。また、国内では医療刑務所に収監するケースも見られる。
[編集] 文化と麻薬
[編集] ヒッピームーブメント
2の定義による麻薬の一種LSDはヒッピームーブメントに大いに関与した。
[編集] シャーマニズム
[編集] 宗教
[編集] その他
[編集] 黄金の三角地帯
アヘン(阿片)の原料であるケシ(芥子)がタイ・ラオス・ミャンマーの山岳地帯で多く栽培されていることから、この地域は「ゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)」と言われている。
[編集] ケシ
日本では麻薬の原料となりうる特定種のケシの栽培については、医薬品の原材料(総合感冒薬や鎮痛剤の成分である)とするため厚生労働省の委託を受けた特定農家での栽培、ならびに都立薬用植物園(東京都小平市)での展示目的の栽培以外は違法である(市販されている観賞用のヒナゲシは麻薬成分を産生しない種類である)。
[編集] アヘン戦争
アヘン戦争は清の林則徐がイギリスのアヘン密輸を禁じ、アヘンを没収し、廃棄処分したことを口実に起こされた戦争。1840年より二年間。
[編集] 摂取方法
麻薬の人体への摂取方法は、血液を経由して脳へ薬物を送り込む方法がほとんどである。その手段として、そのまま飲む経口摂取のほか、舌下する、粉末状の麻薬を歯茎に塗布する、粉末状の麻薬を鼻孔へ吸引し鼻腔粘膜から吸収する、直腸粘膜から吸収する、性器粘膜から吸収する、喫煙する、蒸気を吸引する、注射器による静脈注射・筋肉注射、などがある。経口摂取の場合、主に小腸から吸収され、肝臓で一旦解毒された後血液に混じるため、肝臓で分解される物質は、経口摂取以外の方法を採られる。
[編集] 戦時中の覚醒剤
麻薬に類似する覚醒剤は戦時中の日本やドイツで、士気を高めるため兵士や特攻機の乗組員へ、また夜間の生産効率を上げるため工場の従業員等に用いられたことがある。
[編集] 種類
- 日本において麻薬及び向精神薬取締法で麻薬に指定されているもの
- モルヒネ
- ヘロイン
- コカイン
- LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド、通称エル、紙)
- MDMA(3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、通称エクスタシー、X(エックス)、バツ、罰、玉)
- マジックマッシュルーム(成分:シロシビン、シロシン、通称MM(エムエム))
- 2C-B(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェネチルアミン)
- GHB(ガンマヒドロキシン酪酸)
- BZP(1-ベンジルピペラジン)
- 5-MeO-DIPT(5-メトキシ-N,N-ジイソプロピルトリプタミン、通称ゴメオ、フォクシー)
- AMT(3-(2-アミノプロピル)インドール)
- その他(麻薬及び向精神薬取締法の別表第一)
- 日本においてその他法令で規制されているもの
- 日本において規制の対象ではないが広義の麻薬に含まれるもの
- カート
[編集] 参考文献
- 一戸良行 『麻薬の科学』 研成社、1982年。ISBN 4-87639-310-9
- 鈴木陽子 『麻薬取締官』 集英社新書 0051B、2000年。ISBN 4087200515
- 森田昭之助 『麻薬の恐怖 - その歴史・各国の現状から実例まで』 健友館、1991年。ISBN 4874612350
- 森田昭之助 『麻薬中毒 - 覚醒剤からコカイン、マリファナまで』 健友館、1992年。ISBN 4773702761
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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