現代仮名遣い
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現代仮名遣い(げんだいかなづかい)は、1946年に出された内閣告示「現代かなづかい」を改定して1986年7月1日に内閣告示第1号として公布された、日本語を表記する一つの方法のこと。
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[編集] 性質
「現代かなづかい」の「現代語をかなで書き表す場合の準則」という表現を「現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころ」と改め、制限的な色彩を薄めたものが「現代仮名遣い」である。
「現代かなづかい」は、表音式仮名遣いへ移行するまでのつなぎとして考えられていた。だが、仮名遣いの完全な表音化は不可能であり、「現代かなづかい」はそのまま定着してしまった。「現代仮名遣い」はそうした状況の追認であると言ってよい。
「現代仮名遣い」の内容は、「現代かなづかい」のそれと、全くと言ってよいほど変わっていない。
[編集] 原則
「現代仮名遣い」は、以下の二つの原則によっている。
- おおまかに現代語の音韻にしたがって語を書き表す。
- 特定の語については、表記の慣習を尊重する。
歴史的仮名遣の表記を、現代語音韻に基づく表音主義によって改めることによってできた仮名遣いであるので、完全な表音式表記ではない。
[編集] 形式
「現代かなづかい」は歴史的仮名遣の書き替えという形式をとっていた。「現代仮名遣い」は、「語を現代語の音韻に従って書き表すこと」を「原則」として優先的に説明し、「表記の慣習」を「特例」であるとして後から補足する形で説明している。
例として「ワ」と発音する単語は通常、「わ」と表記するが、助詞の「は」は「ワ」と発音するが「は」と表記する。助詞の「を」も同様に「お」と発音し「を」と表記する。助詞の「へ」も、「え」と発音し「へ」と表記する。
ある音の次に、その音の段と同じ母音が来るときで、かつ、その音が「オ」「エ」の場合は、通常は「う」「い」と表記する。
例:
- 交換。コーカンと発音し、こうかんと表記。
- 永久。エーキューと発音してえいきゅうと表記。
ただし、歴史的仮名遣で「ほ・を」が「オ」と発音されていた語は、母音部分を「お」と表記する。
例:狼。歴史的仮名遣での表記はおほかみで、オーカミと発音する。→現代仮名遣いではおおかみと表記。
歴史的仮名遣での「ゐ」は「い」に、「ゑ」は「え」に変換される。
[編集] 見方
現代仮名遣いに反対する見方は、以下の二つの意見に分かれる。
- 仮名遣いは発音を表すものではなく、言語を破壊する
- 漢字に依存していて、表音でない
因みにウィキペディア日本語版では、現代仮名遣いを使用することを原則としている。 よって、当然この項も現代仮名遣いを用いて表記されている。
[編集] 丸谷才一による批判の要点
- 読みづらくなった
- 語源をわからなくした
- どう表記したらいいのか誰にもわからない言葉がかなり多く生じた
- 五十音図と連関する動詞の活用を破壊した
- 同語異発音のゆとりを消した
- 拗音、促音を小さく書く表記法のせいで煩雑になった