環礁
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環礁(かんしょう atoll)とは、ゆがんだ楕円形もしくは円形に広がる珊瑚礁のことである。
[編集] 概要
主に亜熱帯に分布している。幅数十から数百メートルの楕円形の細長い礁の部分と、中央部の礁湖で構成される。その大きさは礁の外形は、最大数十キロメートルになることもある。礁の部分は、完全な楕円形を構成するとは限らず、紐状の礁が点在するケースも珍しくない。
形成過程については、チャールズ・ダーウィンが唱えた沈降説によって、説明できる。すなわち、まず、熱帯の火山島の周囲に珊瑚礁が形成される。その後、火山島が沈降することにより、珊瑚礁のみが上方に成長、中央の火山島が完全に海面下になると、楕円状の珊瑚礁のみが海面に残る。現在では、沈降の原因はプレート運動で説明される。したがって、環礁は海洋プレート上の、ホットスポットから離れた周辺部で、しかも低緯度の地域に存在する。
珊瑚礁のみで形成されているため、島の標高は低く、高いところでも数メートルである。礁湖の水深は数百メートルであるが、礁の外縁の海底は急崖となっており、海岸よりさほど遠くないところで、水深4,000から6,000メートルの大洋底になっていることも珍しくない。
なお、環礁が大きく隆起すれば、周囲を絶壁で囲まれ、中央にくぼみのある島になる。これを隆起環礁といい、南北大東島などがその例である。
[編集] 礁の利用
礁湖は、礁に囲まれた広大な水面を提供するため、艦船の避泊地として利用されてきた。日本海軍はトラック島などを根拠地として利用している。また、しばしば核実験の場(アメリカ:ビキニ環礁、エニウェトク環礁、フランス:ムルロア環礁、ファンガタウファ環礁、イギリス:キリスィマスィ島)として用いられたことから核関連の用語としてニュースや文献などに頻出する。このほかにも、リゾート・観光地としての利用も多い。
[編集] 環礁での生活
軍事基地・観光・援助によって生活している地区を除けば、礁湖や外洋における漁業によるものがほとんどである。陸地が少ないため、農業には向かず、また山地がないために清水の確保には雨水の利用が重要となる。