田中熊五郎
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田中熊五郎(たなか くまごろう)は、必殺シリーズの登場人物で、南町奉行所の筆頭同心であり、中村主水の上司でもある。山内としおが演じた。尚、必殺シリーズのエンディングにおける彼の氏名の表記は、筆頭同心田中となっている。
『新・必殺仕事人』で初登場。この時は、勘定奉行所で高い地位が約束されており、主水達、南町奉行所の同心達とは、ほんのしばらくの付き合いのつもりだったが、いつの間にかズルズルと南町奉行所の筆頭同心として、居着いてしまう。この頃の田中はおかま言葉を使っておらず、主水に対しても「あんた」呼ばわりしていた。
制作者サイドの意向としては、主水が親子ほども歳の違う上司(田中初登場時に、主水と田中の年齢が紹介されており、それによると当時、主水は43歳、田中は24歳であった)にガミガミと叱られることで、ドラマを面白くさせようという狙いがあったという。
しかし、必殺シリーズが世に言う仕事人ブームで人気が高まり、舞台(殊に京都南座での「納涼必殺祭り」)や映画にも進出してさらなる人気を博するようになると、そちらでの設定もテレビシリーズに組み込まれ、エリート役人であったはずの田中もその性格を大きく変えるようになる。
田中の場合は、舞台での好評を博した山内のおかま演技が、そのままテレビシリーズに取り入れられ、『必殺仕事人III』以降、田中はおかまであるとのイメージが定着し、おかまの田中様として視聴者に受け入れられることとなり、『必殺仕事人IV』では羽子板や役者絵といった少女の部屋かと見紛うような田中の自室が登場するに至った。
『必殺仕事人Ⅳ』の第25話では、八丈島へ転勤させられることで姿を消す予定であったが、主水が始末した敵のところに酔った田中が現れ、加代と順之助によって石で気絶させられる。そのため田中が「下手人を捕まえた」という運びになり、手柄を上げたことで八丈島への転勤が消えることになる。
こういった、必殺シリーズのバラエティーショー化には、『必殺仕事人』以降の仕事人ブームに影響されて必殺シリーズを見始めた若年層を中心とする視聴者には歓迎されたが、『必殺仕掛人』以来の旧作をこよなく愛する年長の視聴者からは批判が寄せられ、同シリーズの放送休止後十年以上たった現在でも、一部のマニアと呼ばれるファンから必殺シリーズをくだらなくした元凶であると、厳しく非難されている。
しかしながら、こういったバラエティーショー化が、従来はキワモノ扱いであった必殺シリーズのファン層の幅を広げたことは否めない事実であり、そういった点で見れば、田中の存在と功績は大きかったと言えよう。