新・必殺仕事人
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『新・必殺仕事人』(しん・ひっさつしごとにん)は、必殺シリーズの第17弾として、朝日放送と京都映画撮影所(現・松竹京都映画株式会社)が制作し、1981年5月8日から1982年6月25日にかけてテレビ朝日系列で放映された時代劇。全55回。
藤田まこと演じる中村主水シリーズの第8弾であり、「必殺仕事人」シリーズの第2作目でもある。
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[編集] 作品内容
前作『必殺仕事人』最終回で仕事人チームが解散してから、3年の歳月が流れた。中村主水も裏稼業から足を洗い、その影響でやや肥り気味になるほど怠けた生活を送っていた頃、江戸を離れていた加代(鮎川いずみ)が、ぼろぼろの姿で主水の前に現れた。主水は加代に金を渡し、お互い会わなかった事にしてその場を立ち去る。飾り職の秀(三田村邦彦)も密かに江戸に舞い戻っており、3人の仕事人は再会を果たした。
加代は「3人で裏稼業を再開しよう」と持ち掛けるが、秀はある大店の養子縁組の話が進んでいる最中であり、主水もかつての仲間であった畷左門(伊吹吾郎、現・吾朗)の悲劇に直面していたため、2人ともその気は全く無かった。あきらめきれない加代は壊れた三味線の修理を頼みにある三味線屋に向かい、2人の親子に出会う。
この親子は、普段は江戸の柳橋で小さな三味線屋を営んでいるが、実は闇の仕事人のおりく(山田五十鈴)と勇次(中条きよし)であった。加代が訪れた頃から、おりくはある人物から仕事人である事をネタに強請られていた。加代は裏家業を再開したいあまりにこの2人を監視し、勇次に捕まる。強請られていたおりくの様子を暗に察していた勇次は、加代が強請り主だと思ったからであった。秀の助けでその場の難は逃れたが、主水とおりくも強請りがらみで、偶然にも互いに仕事人であることがわかる。その後、ある人物に強制されておりくを強請っており、最終的に飛び降り自殺した女の最期の恨みの言葉を聞いた主水は、裏稼業への復帰を決意、加代と秀を呼び出し仕置を宣言した。そこへおりく・勇次親子が現れ、主水たちに協力を申し出る。
敵に回して容易に済む相手では無いと悟った主水は、仕方なく1度きりの条件付で手を組み、一味を抹殺した。おりく・勇次親子の殺しの凄腕振りを見届けた主水は、「また会えるかしら?」と呟く加代に対し、「向こうは向こう、こっちはこっち。別に会いたくもねえや」と一蹴する。だが、やがて別の事件をきっかけに、2つの仕事人チームは1つに統合。かくして不信感に満ちた新しい仕事人チームが誕生した。
[編集] 制作の背景
「必殺シリーズ」第17作、そして「中村主水シリーズ」の第8作となった本作は、前作「必殺仕事人」の続編という作品世界である。
前作『必殺仕事人』放送途中より起こった、飾り職の秀の人気をそのまま受け継ぐ形で、三田村邦彦が連続登板。『必殺仕置人』『新・必殺仕置人』の念仏の鉄(山崎努)、『必殺必中仕事屋稼業』『江戸プロフェッショナル・必殺商売人』のおせい(草笛光子)に続く、歴代主水シリーズ3番目の再登場の殺し屋として注目された。
同じく前作『仕事人』より、仕事人の密偵役として、鮎川いずみも連続登板。前作とはうって変わって、本作よりお馴染みの「何でも屋」を開業(第8話~)。性格も、かつての『仕置人』『暗闇仕留人』の鉄砲玉のおきん(野川由美子)を彷彿させるキャラクターに変化していった。
そして、主水シリーズ2度目の登板として山田五十鈴が登場。同時に、必殺シリーズ初登場として過去に『商売人』第3話、『仕事人』第61話に、悪役としてゲスト出演、スペシャル「恐怖の大仕事 水戸・尾張・紀伊」では仕事人・与市(フランキー堺)に宙吊りにされ、殺される悪役を演じ、シリーズ第16作『必殺仕舞人』ではオープニングナレーションを担当した中条きよしが、シリーズ第6作『必殺仕置屋稼業』の市松(沖雅也)と、第7作『必殺仕業人』のやいとや又右衛門(大出俊)のキャラクターを併せた仕事人・勇次役を好演。秀の人気と併せて勇次の人気も過熱し、俗に言う仕事人ブームを巻き起こすきっかけを作った。
本作の特徴としては、『商売人』以来主水シリーズとしては2度目となる2つの殺し屋グループ(「主水・秀・加代」組、「おりく・勇次」組)が1つのグループとして統合し、毎回の仕置に挑むという事と、お互いに「不信感」を持ち続けてはいるが、1人のプロの殺し屋として仕事を遂行して行くという描写が上げられる。
ただし本作は『商売人』とは違い、第3話で一旦おりくが旅に出てしまったため(山田五十鈴のスケジュール調整がその理由)、第4話以降勇次が単独で主水たちと組み、お互いにいがみ合いながらも、いつしか仲間意識を芽生えさせていった。また、本作は毎回登場する悪人よりも、被害者の死に至るまでの人生模様に描写の重点を置いている。
本作より『必殺仕事人IV』まで続く、主水・秀・勇次の3人の仕事人は、『仕事人』から始まった後期「必殺シリーズ」を代表する名キャラクターシフトの代表として、現在でも非常に根強い人気を誇っている。主水シリーズ最終作となった映画「必殺! 主水死す」には主水グループとして東ちづる演じるおけいと共に秀・勇次のコンビが再登場(秀・勇次が同時に出演するのは『必殺仕事人IV』以来であった)、秀・勇次が主水の死を見届けるというという演出も。
サブタイトルがコミカルになっていくのもこの作品からである。
余談だが、当初の番組タイトルは「必殺処刑人」と予定されていた。これは勇次の殺し技に由来する物なのであろう。
[編集] 殺し技
- 中村主水 - 悪人を油断させながら、相手の一瞬の隙を付いて、脇差を相手の急所に刺す。
- 秀 - 金属製の房が付いた金色の簪で、悪人の首筋を刺す。
- 勇次 - 表稼業に使う三味線の三の糸を悪人の首筋目掛けて投げ、首に巻き付け締め上げ、宙吊りにして窒息死させる。
- 初期は予め輪を作った糸を相手の首の前に垂らして掛け、一瞬にして吊り上げる技だったが(第1~13話)、第14話より、まず標的を前に輪上にした糸を口に咥えて引き延ばした後、標的との距離を微調整し、遠くから首筋目掛けて投げ宙吊りにする形態に定着した。
- おりく - 三味線の撥で、悪人の首筋を斬る。
[編集] キャスト
- 中村主水 - 藤田まこと
- 秀 - 三田村邦彦
- 加代 - 鮎川いずみ
- 筆頭同心内山 - 須賀不二男(第1~12話)
- 筆頭同心田中 - 山内敏男(現・としお、第13~55話)
- せん - 菅井きん
- りつ - 白木万理
- 勇次 - 中条きよし
- おりく - 山田五十鈴(第1~3、14~18、23~25、37~40、47~49話)
- ナレーション
[編集] 主題歌
[編集] 放映リスト
- 主水腹が出る
- 主水気分滅入る
- 主水子守する
- 主水寝言に奪う
- 主水アルバイトする
- 主水喧嘩の仲裁する - 秋野暢子が被害者役でゲスト出演。
- 主水女の気持わかります
- 主水端唄で泣く
- 主水留守番する
- 主水純情する
- 主水ふてくされる
- 主水金一封あてにする - 筆頭同心・内山が退場。
- 主水体を大切にする - 筆頭同心・田中が初登場。
- 主水悪い夢を見る
- 主水公休出勤する
- 主水家で説教する
- 主水心中にせんりつする
- 主水上役に届け物する
- 主水夜長にガッカリする
- 主水つらく夜勤する - 前日に開局した福島放送がこの話からネットを開始(福島テレビからのネット移行。FTV時代は腸捻転解消前は同時、解消後は遅れネット)。
- 主水左遷を気にする
- 主水浮気する
- 主水かくれて夜勤する
- 主水泣いて減食する
- 主水猫を逮捕する
- 主水仮病休みする
- 主水出張する
- 主水弁解する
- 主水ねこばばする
- 主水御用納めする
- 主水蜂にゴマする
- 主水安心する
- 主水粗食に我慢する
- 主水家でほっとする
- 主水友情に涙する
- 主水凧市で交通整理する
- 主水娘と同居する
- 主水女の節句に遠慮する
- 主水友達を気にする
- 主水ケチに感心する
- 主水父親捜しする
- 主水バクチする - 山口放送がこの話で同時ネットを打ち切り、遅れネットに切り替えた(4日遅れ火曜22:00~22:54)。
- 主水表の仕事に熱中する
- 主水予算オーバーする
- 主水心配する
- 主水火の用心する
- 主水かくし芸する
- 主水倹約する
- 主水三味線にビクビクする
- 主水金魚の世話する
- 主水ビックリする
- 主水つゆ支度する
- 主水甘味対策する
- 主水入学祝する
- 主水仕事仕舞する
時期は不明だが、本放送当時広島ホームテレビが民放4局の基幹地区にもかかわらず、同時ネットから遅れネットに降格した。
テレビ朝日系 金曜22時台(当時はABCの制作枠) | ||
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