田辺・菅野ダイアグラム
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田辺・菅野ダイアグラム(たなべ・すがの—、Tanabe-Sugano diagram)は、第4周期dブロック元素の正八面体型錯体における結晶場あるいは配位子場の強さと各スペクトル項のエネルギーの相関を表したグラフのことである。 1954年に田辺行人と菅野暁によって提唱された。
田辺・菅野ダイアグラムは横軸に配位子場の強さ(配位子場分裂の大きさ)ΔoをラカーパラメータBで割った値、縦軸に各スペクトル項の基底状態とのエネルギー差EをBで割った値をとり、各スペクトル項についてプロットしたものである。 各スペクトル項の基底状態とのエネルギー差Eは、配位子場の強さΔo、中心金属のラカーパラメータB、Cを使って表すことができる。 配位子場の強さに応じてCとBの比が変化しないとすると、エネルギーはΔoとBのみで表すことができる。 実際C/Bはほぼ一定の値を持つ。 EおよびΔoをBを単位として表すと、Bの値によらずに1つのグラフで表せる。 これが田辺・菅野ダイアグラムである。
田辺・菅野ダイアグラムを用いると、紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長(スペクトル項間のエネルギー差に対応する)から配位子場の強さを求めることができる。 また、吸収が観測できないスペクトル項のエネルギーがどの程度かを予測することもできる。
田辺・菅野ダイアグラムの左端(配位子場が0)は自由な金属イオンに対応し、ここには原子のスペクトル項が示されている。 そこから配位子場によって縮退が解けて、各スペクトル項に分裂する様子が示されている。 エネルギーの0点は基底状態であるが、d電子がd4~d7の錯体については配位子場が弱いときには高スピン錯体、配位子場が強いときには低スピン錯体となるため、基底状態のスペクトル項が配位子場によって変化する。 そのため、エネルギーのプロットも境界となる配位子場の値で折れ曲がる。 エネルギーのプロットにはほぼ直線のものと緩やかな曲線になるものの2種類がある。 前者は他に同じ対称性のスペクトル項が存在しない状態に、後者は他に同じ対称性のスペクトル項が存在する状態に対応する。 同じ対称性のスペクトル項のエネルギーのプロットには非交差則が成り立つためにこのような形になる。