界面活性剤
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界面活性剤(かいめんかっせいざい)は、分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質の総称。両親媒性分子と呼ばれる事も多い。ミセルやベシクル、ラメラ構造を形成することで、極性物質と非極性物質を均一に混合させる働きをする。また、表面張力を弱める作用を持つ。
洗剤の主成分であり、工業的に大量に合成・使用されている。サポニンやリン脂質、ペプチドなど、天然にも界面活性剤として働く物質は数多く存在する[1]。
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[編集] 作用
界面活性剤はひとつの分子内に親水性部分と親油性部分をもつ。水中であれば、親水性部分を外側に、親油性部分を内側にしたミセルを、非極性溶媒中では内外の反対になったミセルを形成する。このミセルの内部には外部環境とは性質の異なる物質を取り込むことができるため、界面活性剤の存在下では極性・非極性の両方の物質が均一に混合した溶液が作成できる。親水性物質と疎水性物質を均一化する作用を界面活性作用といい、作用の強さはHLB値によって定量的に示される。
界面活性剤は洗剤用途に大量に使用されているほか、食品や化粧品の乳化剤・保湿剤としても重要な位置を占める。界面活性剤は微妙に化学構造を変化させただけで大きく異なる特性となるため、非常に多くの種類のものが生産・使用されている。
[編集] 分類
界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに大別される。また、低分子系と高分子系に分類されることもある。
アニオン性界面活性剤は、親水基としてカルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つものが多い。カルボン酸系としては石鹸の主成分である脂肪酸塩やコール酸塩が、スルホン酸系としては合成洗剤に多く使われる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやポリアクリルアミドゲル電気泳動にも利用されるラウリル硫酸ナトリウムなどがある。
カチオン性界面活性剤は、親水基としてテトラアルキルアンモニウムを持つものが多い。逆性石鹸などに利用される。
双性(両性)界面活性剤は、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方をもっているもので、上記のそれぞれを組み合わせた構造をもつ。
非イオン性(ノニオン性)界面活性剤は、イオン化しない親水性部分を持つもので、アルキルグリコシドのような低分子系、あるいはポリエチレングリコールやポリビニルアルコールのような高分子系が存在する。Triton X 、Pluronic、Tween などの商品名で売られている。
[編集] 雑貨工業品品質表示規程による分類
日本においては、経済産業省による雑貨工業品品質表示規程によって分類されている。[2]「合成洗剤、洗濯用又は台所用の石けん及び住宅用又は家具用の洗浄剤」については、含有される界面活性剤の種類と含有率を表示するように定められている。
- 陰イオン系(アニオン系)界面活性剤
- 脂肪酸系(陰イオン) - 純石けん分(脂肪酸ナトリウム)、純石けん分(脂肪酸カリウム)、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム
- 直鎖アルキルベンゼン系 - 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
- 高級アルコール系(陰イオン) - アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
- アルファオレフィン系 - アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム
- ノルマルパラフィン系 - アルキルスルホン酸ナトリウム
- 非イオン系(ノニオン系)界面活性剤
- 脂肪酸系(非イオン) - しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド
- 高級アルコール系(非イオン) - ポリオキシエチレンアルキルエーテル
- アルキルフェノール系 - ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル
- 両性イオン界面活性剤
- アミノ酸系 - アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム
- ベタイン系 - アルキルベタイン
- アミンオキシド系 - アルキルアミンオキシド
- 陽イオン系界面活性剤
- 第四級アンモニウム塩系 - アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩
[編集] 参考文献
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