空き家の冒険
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空き家の冒険 (The Adventure of the Empty House、1905年)は、アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ作品の1つ。「ストランド・マガジン」1903年10月号、「コリヤーズ・マガジン」1903年9月26日号初出。
「最後の事件」で宿敵ジェームズ・モリアーティ教授と対決し、死亡したと思われていたシャーロック・ホームズがロンドンに生還後、初めて解決した事件の話である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 粗筋
ホームズの死から3年。ロンドンでロナルド・アデア卿が不可解な状況で殺される事件が発生した。ワトスンは新聞記事を基に、ホームズに倣って推理をしてみるが、犯人の見当がまるでつかない。
そんなある日、老人と鉢合わせするワトスン。謝ったのに老人は気分を害した模様で早々にその場を去ってしまう。それから数時間後、その老人が先程の態度を詫びにワトスンを訪ねてくる。が、何を隠そう彼こそ世間に死んだと思われているのを幸い、身を隠してモリアーティの残党狩りを続けていたホームズだった! 老人の変装を解いたホームズを見るなり、あまりに大きな驚きのためワトソンは失神してしまう。
喜びの再会を果たした後、ホームズは東洋武術であるバリツを使ってモリアーティを滝壺の底にたたき落としたこと、その後残党の追跡から逃れ、行方をくらましたこと、また3年間の行方不明中に何をしていたかを語り、今夜の大捕り物に同行してくれるようワトソンに依頼する。それは長い間待ちわびていたモリアーティ教授の残党狩りの好機であり、同時にアデア卿殺人事件を解決に導くものであった。
ホームズとワトスンはロンドンの裏道を通り、ある1軒の空き家に入る。そこはかつてホームズとワトスンが暮らしていた、ベーカー街221Bの向かいにある部屋であった。ホームズの部屋には、ホームズそっくりの蝋人形が置かれており、これでホームズを狙撃しようとするモリアーティの残党を罠にかけようというのである。
[編集] 大空白時代
「最後の事件」でホームズがライヘンバッハの滝壺に落ちたと思われた1891年5月4日から、「空き家の冒険」でホームズが復活した1894年4月までを研究家たちは大空白時代 (the Great Hiatus) と呼ぶ。
この間、ホームズは2年間をチベットで過ごし、ペルシアを通ってマッカ(メッカ)をのぞき見、カルトゥーム(スーダンのハルツーム)でカリフと会見し、南フランスのモンペリエでコールタールの研究をしていたと聖典にはある。だが、この言葉を実際に信じる研究家はそれほど多くない。
ホームズが大空白時代に何をしていたか、研究家の間でも諸説分かれている。代表的なものでも、
- 滝壺に落ちて死亡していた(その後の物語はワトスンによる創作)
- ロンドンで活動し、死んだふりをしていた
- 連合国のスパイ活動をしていた
- コカイン中毒治療のためにウイーンへ行っていた
- 日本に来ていた(原作者死後にこの説を元にしたパロディ作品も存在する)
- ホームズは二人いた(『空き家の冒険』以降のホームズは別人である)
- 『空き家の冒険』以降のホームズはジェームズ・モリアーティの変装である
などの諸説がある。