自警団
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自警団(じけいだん)とは、権利の侵害が強く想定される場などにおいて、司法手続によらず自らの実力行使をもって自己および共同体の権利を維持確保するために結成される組織。
自警団とは自力救済の発露の一つであるが、司法制度が整備された近代以降はほとんど存在していない。しかし、大災害や戦争時などのように警察・治安機関が機能しない場合には、民衆が自衛のために自警団を結成することが見られる。日本でも関東大震災の際に東京などで自警団が結成されたことや、第二次世界大戦後の混乱期にヤクザを中心とした自警団が結成され闇市の秩序維持等に携わったことなどの事例が挙げられる。こうした混乱期の自警団は、司法が機能不全を起こしたときの存在であるため、必ずしも法に則った自警行為が行われる訳ではなく、「自警」の名の下で違法行為が行われることが多発する。関東大震災時に自警団が多くの朝鮮人を殺傷したとされているのは、この一例である。かかる例は世界中で見られ、現在では大規模な虐殺事件等が発生した場合、正規軍や警察そのものが関与する例は少なく(但し、正規軍や警察が背後で糸を引いている例は多い)、自警団が主体となることがほとんどである。旧ユーゴ内戦やルアンダでの虐殺行為等も自警団の一種である民兵が引き起こした例がほとんどである。
上記のような緊急時に結成される自警団のほか、共同体の成員が共同体維持のため持続的に結成している自警団もある。この自警団はむしろ「共同体維持のためのボランティア組織」と呼ぶべきであろうが、例えば治安が悪化している大都市部(ニューヨークなど)において有志によって結成されているガーディアン・エンジェルスはその一つである。日本においても大規模災害対策への認識が高まっていることや犯罪検挙率が低下していることなどを背景として、自主防災組織・自主防犯組織などのように、共同体維持のための住民による自主的な組織化への動きが活発化しつつある。
また、20世紀後葉から21世紀初頭にかけて、世界を覆う電子ネットワーク社会(インターネットなど)が急速に構築されているが、その進展度があまりにも急速であるため、電子ネットワーク社会で発生する様々な事象に対処しうる法整備は立ち遅れていると言われている。そうした中、自力救済を目的として、電子ネットワーク上の猥褻図画や誹謗中傷を除去したり荒らし行為を排除する「電子自警団」と呼ばれる存在が現れている。