治安
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- 治安(ちあん)は社会統制上の概念であり、国家社会が安定的である状態をさす。本稿で記述する。
- 治安(じあん、歴史的仮名遣い:ぢあん)は日本の元号(1021年2月2日 - 1024年7月13日)。治安 (元号)参照。
治安(ちあん、古くはじあんとも、英:public peace, public order)とは国家による統治が安定的に遂行されていること。
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[編集] 概要
治安とは一般的に国家社会の秩序の状態を言い、これを保持することを治安維持と言う。国家は治安維持のために法律を定めて司法機関・警察を組織する。治安維持は自由主義国家(小さな政府)においても安全保障と並んで国家の最低限の仕事としての一つと考えられており、安定した国民生活の前提的な基盤である。治安とは総合的・複合的な現象形態であるため、客観的に捉えることは難しいが、テロ、戦闘、暴動、凶悪犯罪などが頻発する地域は概して治安が悪いといえるので犯罪発生件数などに示されることが多い。
[編集] 治安の意義
治安は社会秩序を形成する上で非常に重要な前提となっている。時代や地域によって治安維持の手法や治安の意味は変化しているが主に以下のような意義がある。
- 経済活動においては公正な競争が促進される。治安が悪化すれば、窃盗などの犯罪や組織的な破壊活動によって安定的な生産活動が阻害される。また警備などの安全確保への投資を強いられるので、設備投資のリスクやコストなどが増加する。長期的な治安悪化がインフレを誘発することもある。
- (公正な民主主義国家であれば)政治体制が安定的に運営され、政権の変更を求める場合も法の手続きに則り非暴力的に行うことができる。仮に治安が悪化しており、暴力的手段が定着していれば、政権を変更させるためにクーデターや革命などのコストやリスクを度外視した手段が乱用されることにもつながる。
- 「目的のために手段を正当化する」類の過激的なイデオロギー集団の活動を阻害する。治安の悪化が進めば政権奪取を目的とした破壊活動や政治目的達成のためのテロや暗殺などを引き起こす可能性があり、また武力によって一部の地域を独自に実効支配することや、対立する勢力に対する虐殺などが発生する可能性が高まる。
- 麻薬の取り締まりや武装の闇取引などの非合法かつ犯罪性の高い経済活動を抑制する。治安悪化に伴い、こういった経済活動はより活発に行われるようになり、市民生活に致命的な打撃を与える。社会全体が退廃し、教育水準やモラルが低下する。
[編集] 治安を巡る視点
独裁体制においては、しばしば「治安の維持」などを名目とした実質上の反対者(反政府勢力など)の弾圧が行われることもある。「治安がよい」ということは裏を返せば管理社会であることの現れであるともいえ、治安維持を目的とした治安維持のための監視や権限の強化はプライバシー侵害などの人権侵害をもたらす弊害もありえる。
また一方で「治安の維持」を軽視し、政府の不正義を主張する勢力を反政府主義者ととらえ、危険視する意見もある。治安の維持に失敗すれば、犯罪が増加するだけでなく、経済活動が大幅に制限され、文化遺産が失われ、教育水準やモラルが低下し、闇市場で火器や麻薬などが出回り、軍閥、マフィアが台頭することが考えられ、最悪の場合は国家体制そのものが崩壊することもありうる。このため、治安維持は非常に重要な国家の責任であると言える。
[編集] 関連項目
- 警察 - 行政警察 - 公安警察 - 公安調査庁
- 犯罪 テロリズム 暴動 暴力団 カルト 内戦
- 対反乱作戦
- 法律 刑法 民法
- 治安維持法 - 治安警察法 国家保安法
- 共謀罪 厳罰化
- 全体主義 - プロパガンダ - 情報操作 - ディストピア