蔵米
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蔵米(くらまい)は、ごく広義には蔵に納められる米のことであるが、一般には江戸時代において、幕府や藩などの蔵に年貢として収納された米のことを指す。この米は大きく分けて俸禄支給と換金とにまわされるため、さらに蔵米には以下で述べるふたつの意味が生じた。
[編集] 俸禄としての蔵米
この意味での蔵米は、武士の俸禄制度のひとつ。また、その制度により支給される米のことを指す。「切米」(きりまい)とも言い、また「くらまい」の表記も「庫米」「廩米」と書かれる場合もあった。
例えば幕府の直臣の場合、旗本・御家人などは知行地を与えられ、その知行地から収納する年貢米が収入となる。しかし中・下級の旗本や御家人の中には知行地を与えられず、幕府の天領から収納され幕府の蔵に納められた米から、俸禄として現物支給された者たちもいた。この現物支給される米のことを蔵米と言い、こうした者たち、あるいはその階層のことを「蔵米取り」と称した。蔵米取りの者の禄高は「蔵米三百俵」のように俵数で表されるのが一般的であった。
諸藩においても、中・下級家臣の俸禄を蔵米とする場合があった。また特に譜代諸藩などでは、家臣に実際に知行地をあたえる地方知行(じかたちぎょう)が次第に形骸化し、知行を与えられながら実際は蔵米を支給される例も多くなっていった。このような形態を蔵米知行と呼ぶ。
[編集] 市場における蔵米
この意味での蔵米は、幕府や藩の蔵から換金のために市場に放出された米のことを指す。江戸時代の諸藩は、収納した米をより有利な形で換金するために、江戸や大坂といった大都市に蔵屋敷を設けて廻米をおこない、これを市中の米市場に放出・売却した。なおこれに対して、こうした蔵屋敷を経由せずに商人の手で大坂などの大都市に集荷される米を納屋米といった。