親潮
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親潮(おやしお)は北太平洋を流れる寒冷な亜寒帯海流(寒流)であり、広義にはベーリング海から北西太平洋を反時計回りに流れる北太平洋の海流を意味する。狭義にはアラスカ海流、アリューシャン海流、東カムチャツカ海流の延長上で、千島列島南部から北海道東部沖、東日本沖にかけて流れる低温・低塩分の性質を持つ海流である。千島海流とも呼ばれる。この流れは日本列島の東岸で黒潮とぶつかり北太平洋海流(北太平洋ドリフト)となって東方へ向かう流れとなる。
近年の研究では、東カムチャツカ海流の一部が千島列島北部の海峡からオホーツク海に流入し(=東樺太海流)、オホーツク海の更に低温・低塩分な海水と混合したものが再び千島列島中部の海峡から流出、それと太平洋を南下する東カムチャツカ海流の本流とが更に混合したものが親潮の直接の源とされている。
親潮はその名が示すとおり非常に栄養塩に富み、豊かな水産資源をもたらす。その栄養塩の濃度は黒潮の少なくとも5~10倍と言われ(数十倍~数百倍とも言われる)、親潮海域は世界的にもっとも豊かな漁場の一つである。春になると日射量の増加や温度躍層の発達に伴って植物プランクトンの大増殖が起こり、動物プランクトンや魚類の格好の繁殖場になる。
東北日本沖は親潮起源の海水が分布する海域に黒潮や黒潮起源の暖水塊が分布し、更に沿岸を津軽海峡から流出する対馬海流分枝の津軽暖流も流れる複雑な海域であり、混合水域と呼ばれている。
親潮は低温のため黒潮より密度が高く重いので、混合水域では黒潮の下に沈みこむ形になる この時にできる潮目では黒潮とともに北上してきた多様な魚類が親潮の植物・動物プランクトンにより繁殖し、この海域は量・種類ともに豊富な好漁場となっている。
気候にも親潮は大きな影響を与えている。北海道の東部や東北太平洋岸では夏にあまり気温が上がらず霧が発生することが多い。これは夏の暖かくて湿った空気(太平洋高気圧)が親潮によって冷却されるためである。
また、氷期に海水準変動が低下した時にベーリング陸橋ができて、親潮へのベーリング海の影響が無くなったため、東アジアでは寒冷化の影響をあまり受けなかったという説がある。これは現在の東アジアが同緯度のヨーロッパ地域より寒冷な環境であるにもかかわらず、氷期にほとんど氷河が形成されなかったことの原因の一つとされ、東アジアでは鮮新世以来の植物の種が96%生息しているのに対し、ヨーロッパでは27%しか残っていないことを根拠としている。しかし、全く寒冷化の影響を受けなかったわけではなく、季節性や降水量の問題も関わってくるため異論もあるようだ。
en19:41, 5 Apr 2005の翻訳を元に大幅加筆・編集