赤穂城断絶
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赤穂城断絶(あこうじょうだんぜつ)は1978年の東映制作の時代劇映画。従来のオーソドックスな忠臣蔵の内容を実録調に撮った深作欣二監督作品。
主演の大石内蔵助役には、「柳生一族の陰謀」でも深作欣二と組んだ萬屋錦之介が抜擢された。大石内蔵助暗殺に暗躍する吉良家家老・小林平八郎を演じた渡瀬恒彦はこの作品の演技により、キネマ旬報賞助演男優賞と第21回ブルーリボン賞助演男優賞を受賞した。
[編集] 解説
深作欣二としては今までの忠臣蔵とは違った新しい解釈の作品に仕上げたかったようだが、初めて大石内蔵助を演じる事になった萬屋錦之介が従来の物語を要望したため、結果的に本来のオーソッドックスな内容に仕上がった。
それでも何か変化のあるものにしたかった深作は単なる美談調の作りにはせず、ドキュメンタリータッチの実録調でこの映画を撮り、仇討ちを公儀幕府への反逆として描いた。
例えば、「仁義なき戦い」にも見られた組織内の内部分裂を、お家再興と幕府の吉良に対する裁きの申し出を慎重に進めようとする大石ら穏健派と仇討ちを頑なに主張する堀部安兵衛ら強硬派の対立に置き換える演出が施されている。
特に近藤正臣演じる元赤穂藩士・橋本平左衛門のように当初は強行に仇討ちを唱えながらも、生活苦のために次第に体が病気に蝕まれ、最後には妻と心中してしまうという組織の末端で生きる者の悲哀を生々しく描いている。
また、今まで赤穂浪士と吉良家の対立として描写されていた仇討ちを、従来通りの主君の無念を晴らすという目的を明確にすると共に、討ち入り後の幕府の動向を描く事によって、あらためて仇討ちを赤穂浪士の公儀幕府への反逆として位置付けている。
それでも不完全燃焼のままでいた深作は1994年に「忠臣蔵外伝 四谷怪談」を監督した。