転置式暗号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
転置式暗号(てんちしきあんごう、Transposition cipher)は平文の文字を並び替えて暗号文を作成する暗号のことである。文字を別の文字、記号に変える換字式暗号とともに、古典的な暗号の1つであり、16世紀頃には換字式、転置式という分類がされている。
[編集] 概要
転置式暗号とは、簡単に言えば席替えである。例えば40文字を並べ替える場合、可能性は40!(40の階乗)-1であり、(マイナス1したのは、平文の分も含んでいたため)解読は不可能かと思われる。しかし、40!の中には「こうきげせよ」など、明らかに推測されやすいものも含まれている。(平文「こうげきせよ」の3文字目と4文字目を交換しただけ)また、あまりにも複雑すぎると、暗号化、復号がしにくくなり、厄介である。(例えば1000文字の文をどう並び替えるか、書くだけでも精一杯であろう)よって、規則性があるのが普通である。
紀元前5世紀にはスパルタでスキュタレー暗号が使用される。これは、細長い紙に文字を書いているだけのように見えるが、ある特定の太さの棒に巻くと、平文が現れるというものだ。これならば、ある特定の太さの棒に紙を巻きつけ、文字を書いていき、それを送り、届いた紙を特定の棒に巻きつければ読める。
文字数をnとするときn!-1の可能性があるわけだが、先にも述べたように有用な数はもっと少ない。また、例えば3文字の場合平文「あいう」は「あうい」など5つが考えられる。しかし、たかが5つではすぐに解読者は6つ目の平文「あいう」に行き着くだろう。短いと鍵の数が少なく、長いと暗号化、復号が困難と、難点が多い。よって、換字式暗号に主役の座をうばわれてしまう。
ただ、解読する側にとって全てを試すときは、厄介な面もある。例えば「しだこいなさくたんろ」を全ての可能性を試していると、「さだくんころしたいな→佐田君、殺したいな」と「しろいこなたくさんだ→白い粉、沢山だ」と、意味が理解できるものが2つ以上出来上がってしまう可能性がある。
[編集] 種類
- 図形を使う方法(図形転置式)
- 例えば正方形に3×3の升目を作り、横に平文を入れていき、縦に読んで暗号文を作る方法。
-
- 空間を設ける方法(空間転置式)
-
- 図形の升に空間を設ける方法。
- 鍵を使った方法(鍵式転置式)
- 定められた鍵の順番を使い、暗号文を作り出す方法。ADFGVX暗号の並べ替えもこれ。
- 上記の方法を2度使う方法(二重転置式)
- 鍵式転置式を使った後、空間転置式を使うなど。