那智四十八滝
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那智原始林(和歌山県那智勝浦町)には60余に達する多くの滝があるが、このうち48の滝は瀧篭行の行場として、番号と諸宗教(神道を中心に、儒教、仏教、道教、陰陽五行説など)にもとづく名が与えられていた。それらの滝を総称して那智四十八滝(なちしじゅうはちたき)と呼ぶ。
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[編集] 概要
これらの滝では、青岸渡寺開祖と伝えられる裸形上人をはじめとする宗教者たちのほか、花山法皇も二の滝の断崖上に庵を設けて、千日瀧篭行をしたと伝えられている。熊野那智大社は元来、このような瀧篭行の行場として成立したものであり、本宮・新宮とともに熊野三山を形成するようになってからも、多くの行者が瀧篭行をおこなってきた。
明治初期以降は、神仏分離令・修験道廃止令によって、これらの行を支えた神仏習合的な信仰が失われた。加えて、那智での瀧篭行は特に厳格さや秘密性が強く、行法や作法の伝授も全て口伝であったため、所在や名称の総覧も不明となっていた。
だが、1991年、わずかに残された古地図・古文書などを手がかりに、地元の有志・新聞社・僧職・神職などが四十八滝探査プロジェクトを行い、再確定に成功した。また、1992年からは青岸渡寺の手によって、那智四十八滝回峰行が再興されている。
[編集] 四十八滝一覧
これら48の滝は、那智山内にある、本谷、東の谷、西の谷、新客(しんきゃく)谷の4つの谷に点在する。
第48番の内陣は、修行者各自が内観すべきものとされ、物理的な実在ではない。
- 那智一の滝(那智滝、那智の大滝))
- 曽以の滝(文覚の滝)
- 波津井の滝
- 宇美耶売の滝
- 登美褒斯の滝(布引の滝)
- 那智二の滝(如意輪の滝)
- 那智三の滝(馬頭観音滝)
- 地智利滝
- 地津の滝(岩屋の滝)
- 中津の滝
- 天津の滝
- 喜多の滝(北辰の滝、妙見滝)
- 多須伎の滝(持国天の滝)
- 保登乎利の滝(多門天の滝)
- 奈免良の滝(口なめら滝)
- 金山の滝(奥奈免良の滝)
- 弥都波能売の滝
- 須曽呂の滝
- 句句廼馳の滝
- 嘉良須祇の滝
- 大日霊女滝(大陽の滝)
- 登磨免の滝(念仏の滝)
- 倍牟の滝(弁財天の滝)
- 登利奇の滝(十五童子の滝)
- 多々良の滝
- 恵機珥の滝
- 珠波留の滝(広目天の滝)
- 揚利計の滝
- 都露岐の滝(増長天の滝、牛尾の滝、阿利計の滝)
- 可遇突智の滝(垂珠の滝、帝釈の滝)
- 多摩の滝(帝釈の滝)
- 伊奈美の滝(新客の滝)
- 烏瑠奇の滝
- 飛都岐の滝
- 味廼の滝(三ツ滝)
- 美奈味の滝(南極の滝)
- 奈珂悟の滝(陰陽滝)
- 鳴伺多礼の滝(津利波志の滝)
- 夜見の滝(久良雅里滝)
- 布里智利滝
- 珠保志滝(奥滝)
- 登美の滝(毘沙門の滝)
- 九頭竜滝(美津珂計滝)
- 波二夜須の滝
- 摩津宇の滝(松尾の滝、琴糸の滝)
- 月夜見の滝
- 弖利古の滝
- 内陣の滝
[編集] 参考文献
- 篠原四郎、1972、『那智大滝 : 那智叢書18』、熊野那智大社 —— 那智四十八滝のリスト掲載
- 中嶋市郎、2002、「「那智四十八滝」探査プロジェクト」、別冊太陽編集部編『熊野 : 異界への旅』、平凡社、pp.114-5 ISBN 4582943845
- 宇江敏勝、1999、『熊野修験の森 : 大峯山脈奥駈け記』、岩波書店 ISBN 4000004468 → 2004、増補版、新宿書房(宇江敏勝の本第2期)、ISBN 4880083070 —— 青岸渡寺主催による大峯奥駈行の参加記。滝めぐり行の記録を含む。
[編集] 関連項目
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