金井美恵子
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金井美恵子(かない みえこ、1947年11月3日-)は日本の小説家・詩人。群馬県高崎市生まれ。群馬県立高崎女子高等学校卒業。姉の久美子は画家で、美恵子の作品のブックデザインも手がける。
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[編集] 来歴
幼少の頃より映画を見つづけて、大の映画好きとして知られる。映画監督ジャン・ルノワールの大ファン。蓮實重彦や山田宏一との親交が深い。小説に関しては、フローベールを枕頭の書とする。
長く官能を刺激する独特の文体でよく知られる。大学へ行かずに、1967年『愛の生活』で太宰賞次席、現代詩手帖賞を受賞して、小説と詩作の二分野から作家生活を始めた。自身はもともと小説を書くことを志望していたが、詩を書くようになったのは、天澤退二郎などの『凶区』の同人と交流を持つようになったためだった。『春の画の館』を境に、詩作していない。「書くこと」が意識された多くの作品は、しばしばヌーヴォー・ロマンと共に言及される。『プラトン的恋愛』で第7回泉鏡花文学賞受賞。『タマや』で第27回女流文学賞受賞。
青山真治の初の小説『ユリイカ』文庫版の解説タイトルに使ったものからきた、著作『「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ』などに示されるとおり、文壇やそれを取巻くジャーナリズムなどに一定の距離を置く。文学などの素養に富み、洞察力にもすぐれてその評論は鋭い。
朝日新聞社のPR誌「一冊の本」で『目白雑録』を連載中。冴え渡る毒舌が注目を集めている。
目白で姉・久美子、愛猫・トラーと同居生活をおくる。つとに有名な愛猫家ぶりを綴ったエッセイ集に『遊興一匹 迷い猫あずかってます』がある。金井作品は愛好者も多く、文壇での評価も高いのだが絶版が多く現在入手困難な単行本が多数あり、ファンを嘆かせている。
2005年頃からヨーロッパのサッカーに興味を持ったミーハー。SKY PerfecTV!のサッカーチャンネルに加入して観戦に熱中している。FCバルセロナのファン。中田英寿が大嫌い。
[編集] 目白四部作
『文章教室』『小春日和』『タマや』『道化師の恋』の目白を舞台にした一連の作品。
それぞれの作品は独立しているが、目白と云う同一の舞台で繰り広げられる物語、主人公及び脇役のキャラクターがそれぞれの作品にゲストとして登場している。小春日和の10年後を描いた『彼女(たち)について私が知っている二、三の事柄』と併せ目白シリーズと呼ぶ事もある。
[編集] 著書(刊行順)
- 愛の生活(筑摩書房/1968年)※短編小説集
- 夢の時間(新潮社/1970年)※短編小説集
- マダム・ジュジュの家(思潮社/1971)※詩集
- 現代詩文庫55 金井美恵子詩集(思潮社/1973)※詩集
- 兎(筑摩書房/1973)※短篇小説集
- 夜になっても遊び続けろ(講談社/1974)※エッセイ
- 岸辺のない海(中央公論社/1974)※長編小説
- アカシア騎士団(新潮社/1976)※短編小説集
- 添寝の悪夢 午睡の夢(中央公論社/1976)※エッセイ
- 書くことのはじまりにむかって(中央公論社/1978)※エッセイ
- プラトン的恋愛(講談社/1979)※短編小説集
- 単語集(筑摩書房/1979)※短編小説集
- 既視の街(新潮社/1980)※共著・写真/渡辺兼人
- 水の城(書紀書林/)※詩集
- くずれる水(集英社/ 1981)※連作短編小説集
- 手と手の間で(河出書房新社/1982)※エッセイ
- 花火(書肆山田/1983)※詩集
- 言葉と<ずれ>(中央公論社/1983)※エッセイ
- 映画 柔らかい肌(河出書房新社/1983)※映画批評
- 私は本当に私なのか 自己論講義(朝日出版社/1983)※対談集・木村敏と共著
- 愛のような話(中央公論社/1984)※短編小説集
- おばさんのディスクール(筑摩書房/1984)※エッセイ
- 文章教室(福武書店/1985)※目白四部作
- ながい、ながい、ふんどしのはなし(筑摩書房/1985)※エッセイ
- セリ・シャンブル3 金井美恵子・金井久美子の部屋(旺文社/1985)
- あかるい部屋のなかで(福武書店/1986)※短編小説集
- 小説論―読まれなくなった小説のために(岩波書店/1987)※講演エッセイ
- タマや((講談/1987)※目白四部作
- 小春日和(インディアン・サマー)(中央公論社/1988)※目白四部作
- 本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ(日本文芸社/1989)※エッセイ
- 道化師の恋(中央公論社/1990)※目白四部作
- 遊興一匹 迷い猫あずかってます(新潮社/1993)※エッセイ
- 奇蹟の映画作家アッバス・キアロスタミ(ユーロスペース/1993)※山根貞男、篠崎誠と共著
- 本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬPART2(日本文芸社/1993)※エッセイ
- 愉しみはTVの彼方に(中央公論社/1994)※映画批評
- 恋愛太平記(1)(集英社/1995)※長編小説
- 恋愛太平記(2)(集英社/1995)※長編小説
- 完本 岸辺のない海 (日本文芸社/1995)※長編小説
- 軽いめまい(講談社/1997)※長編小説
- 柔らかい土をふんで、(河出書房新社/1997)※長編小説
- 愛の生活・森のメリュジーヌ(講談社文芸文庫/1997)※文庫オリジナル編集
- 重箱のすみ(講談社/1998)※エッセイ
- ピクニック その他の短篇(講談社文芸文庫/1998)※文庫オリジナル編集
- 彼女(たち)について私が知っている二、三の事柄(朝日新聞社/2000)※目白シリーズ
- ページをめくる指(河出書房新社/2000)※絵本論
- ノミ、サーカスへゆく(角川春樹事務所/2001)※童話絵本
- 噂の娘(講談社/2002)※長編小説
- 待つこと、忘れること?(平凡社/2002)※エッセイ
- 「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ(講談社/2003)※エッセイ
- 目白雑録(朝日新聞社/2004)※エッセイ
- スクラップ・ギャラリー 切りぬき美術館(平凡社/2005)※エッセイ
- 目白雑録2(朝日新聞社/2006)※エッセイ
- 快適生活研究(朝日新聞社/2006)※目白シリーズ
[編集] 全集
- 金井美恵子全短篇(全3巻)(日本文芸社/1992)