鉄腕アトム (実写版)
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鉄腕アトム (実写版)では手塚治虫原作の漫画『鉄腕アトム』の実写版を解説する。
毎日放送制作・フジテレビ系列(当時のMBSは関西テレビ放送とともにフジテレビとネットワーク関係があった)にて、1959年3月7日~1960年5月28日まで放送。全65話。
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[編集] キャスト
- アトム:瀬川雅人(まさひと)
この番組の後、映画にも出演。また吉田拓郎のパックで演奏したりもしていた。現在、ジャズ評論家。
- お茶の水博士(表記は御茶の水博士):田中明夫、森野五郎
- お茶の水夫人:田上嘉子
- 田鷲警部:寄山弘、北川国彦、倉田地三
- ヒゲオヤジ:富永一郎
- 隼探偵:根岸弘子
- 四部垣:根岸一正
- ダマ夫:中川三男
- 一本足:高橋正夫
- スケルトン:ジャック・アルデンパイ
- スパルタ博士:三鬼弘
- フランケン:羅生門
- スカンク:赤羽茂
- コンク:龍断四郎
- ルソー:小林正
- ケチャップ大尉:三鬼 弘
[編集] スタッフ
- 製作:松崎啓次
- 脚本:渋谷五十八、岩田重利、コオロギハルヲ、宮川一郎、坂巻昇
- 音楽:小川寛興、益田克幸
- 演奏:楽団ブルーコーツ
- 撮影:瀬川浩、吉田豊
- 特撮:加藤守男、山根茂幹、山崎明
- 美術:山崎正夫
- 照明:伊藤一夫
- 録音:KRC
- 監督:吉川博、志波西果、大橋秀夫、難波敏夫
- 製作:松崎プロダクション・第一巻のみ三笠映画と共同制作
[編集] 主題歌
- オープニング(初期):『鉄腕アトムの歌』
- 作詞:青木義久
- 作曲:益田克幸
- 歌:中島そのみ
- オープニング(後期):『鉄腕アトムの歌』
- 作詞:青木義久
- 作曲:益田克幸
- 歌:上高田少年合唱団
[編集] 放送リスト
5部構成の各13回となっている。フィルムは、殆どが松崎プロダクションに保管されているとの事で、 第二巻以降のDVD化を望む声も多い。
1 ZZZ団(1話~13話)
飛行自動車が出てくる。アトムがチェスをする場面では分厚い手袋のため演技の苦労が察せられた。
2 メキシコ(14話~26話)
ジェットマン、カニ男、スフィンクスといった多彩なロボットが登場する。
3 フランケンとアトム(27話~39話)
アトムの両親が登場。
4 アトム火星に飛ぶ(40話~52話)
火星探検の巻である。火星で宇宙人と戦う事になる。アトムは何度も壊れ、そのたびに腹部を開いてメカを修繕している。また、ロボットに対する偏見にも悩んだ巻である。
5 気体人間(53話~65話)
アトムがギャングに潜入した際にサングラスをかける場面がある。ヘルメットがあるため、サングラスをかけるのに耳たぶをかなり変形させてかけていた。
[編集] 制作秘話
- 1年間に及ぶ人気作となったものの、原作のイメージと余りにもかけ離れていたため(詳細は後述)、手塚治虫は自分の漫画を実写にすることに対し不満を抱いていた。これが数年後のアニメ版の原動力ともなった。
- 原作が連載されていた『少年』によると、放映当時「アトム友の会」という企画があり、1960年3月頃に、アトムを囲みスタジオ案内などがされたと記されている。
- 空を飛ぶときの全身像の撮影には苦労していて、第一部は人形を使い、第二部は瀬川雅人少年と空を合成にした。第三部から再び人形としている。足から出るのは、各巻により煙だったり、火花だったりしていた。
- 第一部でアトムが服を着る場面があり、さすがにコスチュームは脱いで服を着せていた。ただし、頭にターバンを巻いたりもしている。看護婦姿の時は、このターバンもなかった。第二部以降のコスチュームなら軍服も着られたが、第一部では苦労したところであろう。
- 指先から火花を出すシーンが時々あり、花火を手に挟むか乗せていたと思われるが、やけどしそうなやり方であった。
- 第四部頃から、各話の初めに前回までのストーリーを説明する構成となった。
- 低予算で制作したため、三鬼弘が悪役で何度も出演した。
- 火星探検の巻では、宇宙人の声は、テープの早回しを用いていた。宇宙人は予算の関係故か、クリーンルームでの作業着のようなスタイルとしていた。
[編集] コスチュームに関する逸話
- 当初は原作のイメージに近くするためにプラスチック製のブーツやプロテクターを装着したスタイルとした。このスタイルのイメージは裸に近いが、相撲取りのような大柄な体つきになってしまった。原作が掲載されていた雑誌『少年』のインタビューによると、このコスチュームは、着るのに1時間以上かかったそうである。また着ると非常に暑いため、アトム役の瀬川少年は汗疹に悩まされた。
- その後、諸般の事情でコスチュームを一新した。イメージとしてはレオタード状のつなぎ(色は不明)、肌色タイツ、プーツと、スーパーマンに近いスタイルに変更した。つなぎは背中部にファスナーがあった。このつなぎの製作に苦労したという。まだ少年体型だったことから、腕の太さ等のバランスのためか、帯状の生地を上から下まで体に合わせてつなげていくというコスチュームとした。パンツの部分などはフィットさせるのが大変であったという。つなぎの腹部にアクセント的に、突起が二つつけられ、燃料注入部となったり、聴力増大のスイッチとなったりした。タイツの素材は伸縮性がなかったらしく、膝に時々随分しわがよっていたのは、ご愛嬌であった。
- このつなぎは瀬川少年の成長に合わせて2回ほど新調された。これに合わせて、体型の成長に対応可能なタイツ、スカーフを採用したと考えられる。ブーツもこれに合わせたタイプとしている。スカーフも「気体人間の巻」では、少し厚手の細長いスカーフに変えられていた。『少年』の記事では、コスチューム一新時に、「こちらの方が評判が良いようです」と紹介されていた。『少年』では、手塚治虫と瀬川アトムが合成で一緒に移っていてそれを漫画のアトムが飛びながら担いでいるという写真が掲載されたこともあった。この時に、アトムは手塚氏の背中を右手で支え、左手は伸ばして前方を指すという構図にしている。手塚治虫の写真には、手塚氏の言葉として「やあ 月の裏側が見えるぞ」 と、書いている。
- つなぎにベルトをしているのだが、これが第二部の途中で突然、つなぎの同じ色から黄色に変わり、ヘルメットも同時にブラスチックの角タイプから、金属に曲げた角上の板を耳の上につけるという最終的なヘルメットに変わった。
- 格闘した時につなぎがずれるとタイツの下にブリーフが見えることもあった。
- 第五部(気体人間の巻)では、腕を前に伸ばして飛んでいるシーンがよく出てきたが、手袋が短いため、つなぎから素手が10cmくらい出てきていて、これもご愛嬌であった。
- この当時、小学校高学年で半ズボン、タイツかストッキングというスタイルは普通で、視聴者には違和感はなかったようである。ただ、レオタード風つなぎを後ろから見ると、帯がつながった感じで見慣れるまでは違和感も与えていた。
- ヘルメットは耳の上に角が付いているような形であった。このヘルメットも3種類あった(第一部のものを含めると4種類)。 初めは白っぽいプラスチック製のもので、円錐状の角が耳の上の方に付いていた。「メキシコの巻」の途中から、黒っぽい金属的なヘルメットに変わった。角は金属を折り曲げたような形になり、耳を半分覆うような形状となった。「火星探検の巻」で、形状は同じながら、より頭にフィットした新しいヘルメットとなった。このヘルメットも、頭に被せているだけだったので、時々ずれて、眉毛部にかぶさったりもしていた。
- 「火星探検の巻」(アトム火星に飛ぶ)では、アトムが探検隊の隊長となり、軍服としてダブルのジャケットを着た。タイツ姿を見せるため、ズボンははかせなかったので、ベルトの上までの短い丈のものである。ジャケットの襟部にはバッジ、肩から胸には装飾紐がつけられていた。スカーフはむすび方を変え、軍服の中に入れていた。『少年』の記事には敬礼した写真も出ていて、「火星探検で隊長になったので、軍服を着ました。かっこいいと評判です。さあ、みんなで応援しましょう。」と記されている。軍服を着る時に、つなぎの腕部が太いためひっかかり着にくそうであった。一方、違和感の多少あった、つなぎの背中部が隠れるので、見栄えがしたようである。この回では軍服のボタンをはずし、前を開け、さらにつなぎの胸部を開いて、内部のメカを直す場面もあった。
[編集] アトムの演技等について
- 飛行の場面では、スカーフをひらめかせるのに扇風機を使ったとみられるが、瀬川少年が必死で瞬きを抑えていると思しい場面が見受けられた(竹内義和の著書『大映テレビの研究』では「本物のヘリコプターの先にくくりつけて撮影したともいう」という憶測が記されているが、それを裏付ける資料はない)。
- 第一部のエンディングでは瀬川少年がアトムのヘルメットを取り、視聴者に向かって「皆さん、僕が鉄腕アトムの役をやっている瀬川雅人です。」と挨拶するという、現在見ると夢を壊しかねないシーンがある。また、第四部のエンディングでは、探検隊長で軍服を着たアトムがロケットにまたかり、「さようなら」と手を振っていた。
- 第三部で、アトムは両親をプレゼントされた。アトムは、母を「ママ」と呼んだが、何となく恥ずかしそうな雰囲気を漂わせていた。
- 空を飛ぶときのスタイルは、当初は腕を胴に付けていたが、「フランケンの巻」から腕を前に伸ばす形に変わった。これは原作においても同様の変遷が見られる。
- 「火星探検の巻」では、隊員が火星でも宇宙服を付けていなかったり、アトムが宇宙空間で声を出すという描写が見られた。科学考証という言葉も一般に知られていなかった時代らしいエピソードといえる。また、この巻ではアトムがロボットへの差別を何回も経験する巻で、その屈辱感を表情や言葉に表していた。
- 少年の登場人物が車を運転する場面があった(同様のシーンは当時『少年ジェット』や『鉄人28号』でも見受けられた)。
- 第五部の「気体人間の巻」では、出演した女の子に「アトムさんは素敵ね」というセリフがある。また、第一部ではアトムが助けた少女・ミッシェルもアトムに好意を持った。当時の少年ヒーロー番組では、ゲストとはいえ「女の子にもてる」という設定は珍しい部類に属した。
[編集] 前後番組の変遷
フジテレビ系 土曜18:15枠 | ||
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