鉄道郵便局
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鉄道郵便局(てつどうゆうびんきょく)とは、かつて郵政省に存在した郵便局の一種である。
引受した郵便物を列車に連結した郵便車で運送、区分していた。1970年代以降、自動車、航空機による輸送に押され、1984年2月に取扱便、車内継走区分が廃止、1986年9月に護送便も廃止、廃局となった(通称59.2システムという)。その殆どは各地域区分局に吸収されたが、一部は輸送郵便局として存続したものもあった(青森西郵便局参照)。鉄道郵便局はその特殊かつ過酷な作業環境におかれており、その鉄道局での経験と精神を称して「鉄郵魂」とも言われる。
目次 |
[編集] 鉄道郵便局一覧
局名に続く線路名は、所掌乗務線路である。なお時期により線路名、所掌する鉄道局に変動がある。
- 東京鉄道郵便局
- 東京門司線・東京浜松間(東海道本線)
- 東京青森線・東京郡山間(東北本線)
- 東京仙台線・東京平間(常磐線)
- 東京新潟線の一部(高崎線、上越線など)
- 水戸郡山線(水郡線)
- 東京伊勢崎線(東武伊勢崎線)
- 東京銚子南廻線(総武本線)
- 東京銚子北廻線(成田線など)
- 東京鴨川東廻線(外房線など)
- 東京鴨川西廻線(内房線など)
- 東京塩尻線(中央本線)
- 東京小田原線(小田急小田原線)
- 東京寄居線(東武東上線)
- 熊谷荒川線(秩父鉄道線)
- 富士甲府線(身延線
- 小山水戸線(水戸線など)
- 高崎小山線(両毛線など)
- 長野鉄道郵便局
- 東京直江津線(高崎線、信越本線など)
- 名古屋長野線(中央本線、篠ノ井線など)
- 長野川口線(飯山線など)
- 豊橋辰野線・飯田辰野間(飯田線)
- 松本糸魚川線(大糸線)
- 新潟鉄道郵便局
- 大阪青森線・直江津酒田間(信越本線、羽越本線など)
- 東京新潟線の一部(上越線、信越本線など)
- 郡山新潟線(磐越西線など)
- 会津若松川口線(只見線)
- 会津若松荒海線(会津線など)
- 柏崎新潟線(越後線)
- 名古屋鉄道郵便局
- 東京門司線・浜松大阪間(東海道本線)
- 名古屋鳥羽線(関西本線、参宮線など)
- 松阪和歌山線・松阪新宮間(紀勢本線)
- 豊橋辰野線・豊橋飯田間(飯田線)
- 岐阜富山線・岐阜高山間(高山本線)
- 金沢鉄道郵便局
- 大阪青森線・敦賀直江津間(北陸本線)
- 金沢輪島線(七尾線)
- 敦賀東舞鶴線(小浜線)
- 岐阜富山線・高山富山間(高山本線)
- 高岡城端線(城端線)
- 大阪鉄道郵便局
- 東京門司線・大阪糸崎間(山陽本線など)
- 大阪青森線・大阪敦賀間(東海道本線、北陸本線など)
- 大阪東舞鶴線(福知山線など)
- 亀山大阪線(関西本線)
- 京都下関線・京都鳥取間(山陰本線)
- 京都王寺線(奈良線など)
- 柘植草津線(草津線)
- 松阪和歌山線・新宮和歌山間(紀勢本線)
- 王寺和歌山線(和歌山線)
- 米原貴生川線(近江鉄道本線)
- 姫路和田山線(播但線)
- 加古川谷川線(加古川線)
- 西舞鶴豊岡線(宮津線)
- 西脇松井庄線(鍛冶屋線)
- 広島鉄道郵便局
- 東京門司線・糸崎門司間(山陽本線)
- 姫路広島線・新見広島間(芸備線など)
- 鳥取岡山線(津山線、因美線など)
- 岡山玉野線(宇野線)
- 京都下関線・浜田下関間(山陰本線)
- 東京門司線・糸崎広島間(呉線)
- 福山三次線(福塩線)
- 小郡益田線(山口線)
- 厚狭長門線(美祢線)
- 米子鉄道郵便局
- 京都下関線・鳥取浜田間(山陰本線)
- 姫路広島線・姫路新見間(姫新線)
- 岡山米子線(伯備線など)
- 宍道落合線(木次線)
- 江津浜原線(三江北線)
- 高松鉄道郵便局
- 高松宇和島線(予讃本線)
- 高松窪川線(土讃本線)
- 高松牟岐線(高徳本線、牟岐線など)
- 池田徳島線(徳島本線)
- 熊本鉄道郵便局
- 門司鹿児島西廻線(鹿児島本線)
- 熊本大分線(豊肥本線)
- 熊本三角線(三角線)
- 八代都城線(肥薩線、吉都線)
- 門司鹿児島東廻線(日豊本線)
- 鳥栖大分線(久大本線)
- 門司長崎線(長崎本線、佐世保線、大村線など)
- 佐賀唐津線(唐津線など)
- 諫早加津佐線(島原鉄道線)
- 福岡伊万里線(筑肥線)
- 有田佐世保線(松浦線)
- 吉松隼人線(肥薩線)
- 伊集院枕崎線(鹿児島交通南薩線)
- 宮崎都城線(日南線、志布志線)
- 鹿児島山川線(指宿枕崎線)
- 仙台鉄道郵便局
- 東京青森線・郡山盛岡間(東北本線)
- 東京仙台線・平仙台間(常磐線)
- 仙台山形線(仙山線)
- 一関大船渡線(大船渡線)
- 小牛田新庄線(陸羽東線)
- 新庄酒田線(陸羽西線)
- 福島秋田線(奥羽本線)
- 米沢坂町線(米坂線)
- 花巻盛岡線(釜石線、山田線)
- 盛岡大館線(花輪線)
- 北上横手線(北上線)
- 平郡山線(磐越西線)
- 青森鉄道郵便局
- 東京青森線・盛岡青森間(東北本線)
- 大阪青森線・酒田青森間(羽越本線、奥羽本線)
- 青森函館線(青函連絡船)
- 野辺地大畑線(大湊線、大畑線)
- 能代弘前線(五能線)
- 大館阿仁合線(阿仁合線)
- 青森三厩線(津軽線)
- 札幌鉄道郵便局
- 函館旭川線(函館本線)
- 滝川根室線(根室本線)
- 深川幌延線・深川築別間(留萌本線、羽幌線)
- 国縫瀬棚線(瀬棚線)
- 函館松前線(江差線、松前線など)
- 木古内江差線(江差線)
- 帯広広尾線(広尾線)
- 池田北見線(池北線)
- 釧路網走線(釧網本線など)
- 長万部岩見沢線(室蘭本線)
- 苫小牧様似線(日高本線)
- 旭川鉄道郵便局
- 旭川稚内線(宗谷本線)
- 旭川網走線(石北本線など)
- 名寄遠軽線(名寄本線)
- 音威子府稚内線(天北線など)
[編集] 鉄道郵便局と郵便番号
鉄道郵便線路と受渡する局は約2000局あったが、すべてに3けたの郵便番号を付定することは不可能であったため、3けた目「9」を乗務員を親局として番号を付定した。なお例外として
- 秋田県、岩手県、青森県、北海道の04、07~09地域は「8」も乗務員の番号として付定した。
- 東京都、神奈川県など一部の地域については「9」を乗務員の番号とせず、静止局の番号に付定した。地域としては10~17、21~24、27、33、35、42、43、45~49、53~58、60、65、80である。
その上で線路の下り順に番号を振り、線路の異なるごとに4けた目を更新した。 すなわち秋田県内では大阪青森線を象潟から順に018-01、018-02…とし、大館阿仁合線を018-4X、盛岡大館線を018-5X、福島秋田線を019-0X~019-2Xとして、車内にて継走区分の上受渡したのである。
[編集] 区分方法
鉄道郵便局における区分方法について記述する。
[編集] 郵便物の区別
郵便物は以下のような種別ごとに区分された。
- 普通通常
- 小型普通通常 定形 二種郵便物
- 大型普通通常 小型以外
- 大型小型は自県内宛及び、自動車便等のみにより運送される場合、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸以外の各局から他府県にあてる大型普通通常が10通以未満の場合、合わせて区分ができた。
- 普通速達
- 書留速達
- 書留通常
- 書留速達と書留通常は、航空便及び速達のみを指定して運送する便、大口差出となる場合に区別し、それ以外は合わせて区分した。
- 書留は航空便を経由するとき、大型と小型に区分できた。
- 速達としない小包郵便物
- 速達小包郵便物
- 小包は書留小包と普通書留とに分割して区分できた。
[編集] 区分ならび送付
区分は郵便番号による区分と、郵便番号によらない区分により異なった。
- 郵便番号による区分
- 五けた局区分 五けたの郵便局ごとに区分し、当該の局に送付。
- 五けた集合区分 三けた目までが同じ番号の五けた局を複数合わせて区分し、指定された三けた局または五けた局に送付。
- 三けた局区分 三けたの郵便局ごとに区分し当該の局に送付。
- 三けた区分 三けた目までが同じ番号のものをまとめて区分し、当該の3けた局に送付。
- 三けた集合区分 異なった三けた番号を複数合わせて区分し、指定された三けた局に送付。
- 二けた区分 二けた目までが同じ番号のものをまとめて区分し、指定された郵便局または乗務員に送付。
- 二けた集合区分 異なった二けた番号を複数合わせて区分し、指定された郵便局または乗務員に送付。
- 郵便番号によらない区分
- 配達局区分 郵便区ごとに区分し、当該の局に送付する。
- 区区分 区を有する市において、区ごとに区分し、指定された局に送付。
- 市区分 市(二十三区も市に含める)ごとに区分し、指定された局に送付。
- 受渡区分 受渡局の受持区域ごとに区分し、受渡局に送付。
- 府県区分 都道府県ごとに区分し、継走区分する乗務員に送付。ただし例外が多々ある。
- 区域区分 複数の都道府県をまとめて区分し、継走区分する乗務員に送付。ただし例外が多々ある。
- 航空区域区分 航空郵便の到着事務を行う局で指定された区ごとに区分し、航空郵便の到着事務を行う局に送付。
しかしながら実際には小型普通通常ならび一部の大型通常を除き、合わせて区分することが認められていた。これは番号の有無により分別する手間よりも有利であると判断されたためである。
[編集] 地域・種別による区分方法
各乗務員により要求される区分の内容、また種別により異なるが、原則以下の通りである。これは例えば東門線東浜間と京下線鳥浜間とでは、当然に東浜間の方が東京、横浜等へ送付する量の割合が多い事が予想された。そのためそれぞれの乗務員区間により異なる区分方法を指定していたためである。
[編集] 小型普通通常の区分方法
[編集] 郵便番号による区分
- 10~17地域(東京都区内)
10通以上ある場合、以下の地域は三けた局区分を行った。
100~104 12・13地域 150~153 17地域
上記以外の地域は二けた区分を行った。このときの送付先は、芝局、下谷(上野)局、蒲田局、世田谷局、新宿局。 10通以下の場合、東京中央局に送付したが、上野・隅田川・新宿の三駅に特例があった。
- 53~55地域(大阪市内)
10通以上ある場合、すべて三けた局区分を行った。 10通以下の場合、大阪中央局に送付した。
- 21~24、45・46、60・61、65地域(横浜、名古屋、京都、神戸市)
10通以上ある場合、三けた局区分を行った。ただし乗務員に9が付されている場合は、三けた区分の対象とはしない。 各地域ごとに10通以上の場合、二けた集合区分により各中央局に送付した。
- 上記以外の地域(ただし自地域及び最近区間を除く)
3けたごとに20通以上ある場合は3けた区分を行い、送付する。 20通に満たない場合、2けたごとに10通以上の時それぞれ指定された局に送付する。
[編集] 郵便番号によらない区分
- 10~17地域(東京都区内)
- 53~55地域(大阪市内)
それぞれ配達局ごとに区分し、送付した。ただし区に複数の配達局がある場合、指定された局に送付した。これも上記の三駅の特例がある。また大阪市の場合一局で一区以上を配達するため、「合わせ区分」が行われていたと思われる。
- 上記以外の地域ただし(自地域及び最近区間を除く)
航空便を経由するものについては、各受渡局に送付した。それ以外のものについては、府県ごとに10通以上ある場合に、指定された局、乗務員に送付した。
[編集] 自地域宛の区分
[編集] 郵便番号による区分
- 3けた目が乗務員の番号である「9」(あるいは8も含む)の局については、通数によらず五けた局区分を行い、当該局に送付した。それ以外については三けた区分を行い送付した。一集配局に複数の番号がある場合、また五けた局が多数ある場合、その番号ごとや、三けた局区分を行った。つまり岐阜中央局に送付するときは「500」「501」と別に区分し、福島中央局に送付するときは通数により福島中央局自配とそれ以外とに区分し送付した。
[編集] 郵便番号によらない区分
- 受渡局ならび、その受持局毎に区分し、送付した。なお同一市町村に複数の集配局がある場合、その地域別に指定受渡局を設定し、その局に送付した。
[編集] 最近区間
- 郵便物は原則として各常務員が区分、差立するものであるが、便接続の関係上、処理する時間を確保できない事があるため、乗務開始後おおむね一時間以内に受渡する区間について最近区間を設定した。即ち青函乗務員は上便では東青盛青間、阪青酒青間に引き継ぐが、青森近辺の局に対する郵便物を未処理のまま引き継いで青森駅乗務後から区分をしたのでは受渡に間に合わない。そのため野辺地と弘前までの各局分については青函乗務員で区分した上で、それぞれの乗務員に引き継いだのである。当然ながら時期によって最近区間の設定は異なる。
- この場合、例えば青森中央局では自局で野辺地と弘前までの分を区分送付するため、青森で静止局から受渡した郵便物から乗務員が区分送付することはなかった。仮にあったとした場合、郵便車で投函を受けた郵便物である。
- 最近区間への区分は、上記「自地域宛の区分」と同様だが、通数は各受渡局ごとに5通以上あるときに当該局へ送付した。
- 受渡に失敗することを受渡欠便というが、「欠便は誤送より責が重い」として鉄道局員ではこれを特に嫌った。
カテゴリ: 鉄道関連のスタブ項目 | 鉄道のサービス | 郵便