鍋
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鍋(なべ)とは、調理器具の一種で、食材に火を通すための物であり、煮物・茹で物・揚げ物等の調理法に利用される、比較的深さがある道具。英語では平たいものをパン(pan)といい、フライパンなどの名称に見られる。
「○○鍋」というときは、鍋の種類名称である場合と、鍋を使って食卓上で作る煮物料理の名称である場合(鍋料理を参照)がある。
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[編集] 種類
[編集] 日本
- 雪平(行平)鍋(ゆきひらなべ)
- 最も代表的な和風鍋で、蓋のない中程度の深さの片手鍋。汁の注ぎ口が左右両方に付いている場合が多い。煮物、茹で物、だし取りなど、鍋を利用する日本料理のほとんどに対応する一種の万能鍋である。蓋は落し蓋を利用する。
- やっとこ鍋
- 雪平鍋の取っ手と注ぎ口を取り去った形状の鍋。取っ手がないので鍋を持つときは、やっとこという専用の鍋ばさみ(プライヤのような形状)を使う。利用法は雪平鍋と同様であるが、取っ手を無くすることで収納性を高めており、プロの料理人向けの鍋である。一般家庭で利用されることはほとんど無い。
- 坊主鍋(ぼうずなべ)
- 雪平鍋の底を丸底にした形状の鍋。丸底のため煮汁の対流が効率よく行われ熱周りが良い。取っ手の無い、やっとこタイプの坊主鍋もある。一般家庭で利用されることはほとんど無い。
- 羽釜(はがま)、鍔釜(つばがま)
- 丸底で鍋の中央付近につば(はね)が張り出している竈専用の鍋。つばが付いているのは、竈の穴の縁に引っ掛けて釜が下に落ちないようにするためであり、飾りや熱効率を高めるのが目的ではない。蓋は木製で厚みがある重い物を用いる。
- 文化鍋(ぶんかなべ)
- 炊飯専用の深さがある両手鍋。材質はアルミ合金製である。鍋の縁が蓋よりも上にせり出し、重さのある蓋は富士山の裾野状の形となっているのが特徴。炊飯時に蓋の隙間から飛び出した水分は、せり出した縁によりせき止められ吹きこぼれる心配が無く、蓋の傾斜に沿ってまた鍋の中に流れ込むよう工夫されている。本来、炊飯に最適化されて作られた鍋であるが、肉厚もあり熱効率が良いことから、煮込み料理に利用されることもある。過去には家庭の必需品で、ご飯を上手く炊けることが料理上手の一つの条件であったが、電気炊飯器の普及により利用者は激減した。近年では、鍋でご飯を炊くことが出来ない者も多い。
[編集] 西欧
- ソースパン
- 片手の浅鍋。文字通りソース作りに多用される。
- 外輪鍋(そとわなべ)
- 直径が比較的大きく深さの浅い両手鍋の日本での呼び名。フランスのsautoir(ソトワール)という片手のソテー(sauté)パンが語源であるが、外輪鍋は両手鍋なのでソトワールとは別の種類の鍋である。
- 半寸胴鍋(はんずんどうなべ)
- 直径の2/3強の深さをもつ深鍋。煮込み料理に多用される。
[編集] 中国
[編集] その他
- 圧力鍋(あつりょくなべ)
- 鍋に蓋をして密閉し、蒸気が逃げないようにすることで内部の圧力を上げ、水の沸点を摂氏100度以上にして高温高圧で加熱する鍋。完全に密閉すると内部の圧力が高くなりすぎて危険なので、圧力調整弁が蓋に装備されており、一定の圧力が保たれる仕組みになっている。
[編集] 材質と特徴
- 陶器 - 土鍋
- 火のあたりが柔らかく、保温性が高いのが特徴。おでんやお粥など弱火で長時間煮込む料理に適している。陶器製のため衝撃を加えると割れる危険性がある。また、急激な温度変化にも弱いので、鍋底に水滴が付いている状態で火に掛けるとひびが入ることがある。土鍋のサイズは号数で表示されるが、号数は寸(3.03cm)と同一なので、7号であれば約21cmとなる。
- 耐熱ガラス
- 鉄
- 古くは鍋の材料として最も多用されていた。丈夫で熱にも強く、油のなじみがとても良い。熱伝導率も比較的良好である。錆びやすいこと、重いことが欠点。鋼板をプレス加工したものと鋳物製のものがある。いずれも、防錆力を高めるため表面に琺瑯加工を施した製品が市販されている。
- 銅
- 実用できる材質の中で最も熱伝導率がよく、鍋の材質として理想的なものである。しかし、材質的に柔らかいので傷が付きやすく、錆びやすいので手入れが大変なのが難点となっている。防錆のため、銅鍋の内側には必ず錫のメッキが施されており、内側が銀色に輝いているのはこのためである。
- ステンレス
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- 単層鋼
- 熱伝導率が非常に悪く鍋の材質としてはあまり好ましいものではない。
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- 多層底
- 単層鍋の底の部分のみ多層構造にしたもの。底面の加熱むらは少ないが、側面(特に底に近い下部)に加熱むらが出やすく焦げ付きの原因となりやすい。
- 石
- 朝鮮料理などに用いられる。石材としては、長水石などが用いられる。