雑居ビル火災
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雑居ビル火災(ざっきょビルかさい)とは、都市部に顕著な雑居ビルで発生する火災の様式(または傾向)である。単なるビル火災と違い雑居ビルの営業形態に被害を拡大する社会要因がある。
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[編集] 概要
管理者のはっきりしない・防災責任者があいまい・入居者の活動に拠り、避難経路にすら可燃物が置かれる事が多いといった状況は、一旦火災が発生すると、入居者らによる初期消火が行われない・防災設備の不備・避難経路が無くなるといった事態を引きおこす。これはビル自体の所有権が分割されることにも原因がある。
- 通路や階段にゴミや商品などが放置される傾向にあり、これらの可燃物が火災発生時に煙突化現象で、延焼被害を悪化させる。
- また違法営業テナントが多い。不特定多数が出入りする事と行政側に違法実態を察知されるのを恐れ、救助の際には被災者の実数把握を困難にしている。要救助者の放置などが起きやすい。更に云えば放火犯も出入り自由とあって、都市防災上のアキレス腱である。
この場合、廊下や階段に放置されたゴミ等は、証拠隠滅上恰好の放火対象になる。
[編集] 現状と将来
- 老朽化した4~5階建ての歓楽街などに散見される小規模雑居ビルでは、防災設備の不備による火災で人命が失われる事例も多い。社会的にも問題視され、地元消防局の立ち入り検査が実施される等しているが、依然として消防法令違反率がなお約45%(東京消防庁調べ・平成15年6月30日現在)に上るなどの問題が残されている。
- 近年では高層建築の雑居ビルも登場し、防犯のみならず防災上でも危険が多い。非常事態を悪化させる要因を多く持っている。
- 利用する側も歓楽街であると知っているため、事故のときに享楽が露見するのを恐れて退避しないなど危険にさらされる。テナント店の従業員もそれを察して、時に煩がられる注意喚起をしないため惨事に至ってしまう。
- 利用する客側と営業店舗との双方に違法営業という弱みがあるので、単に防災設備の指導というのではない総合政策が必要である。