電波障害
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電波障害(でんぱしょうがい)とは、通信機器や電子機器から放射される電波(もしくは高周波電流)が、別の電子機器の動作に影響を及ぼす現象のことである。
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[編集] 概要
電波障害により生ずる現象は、機器の誤動作、TVI(テレビの受信に影響する)、BCI(ラジオの受信に影響する)、テレホンI(電話に影響する)、アンプI(オーディオなどのアンプに影響する)などさまざまである。
一方、ビルなどの大規模建築物や鉄道、道路などの高架構造物による遮蔽や反射によるテレビ電波のゴースト障害や、列車の走行によるフラッター障害などについては、一種の環境問題となっており、自治体によっては環境アセスメントなどで扱われることがある。
一般家庭においては、従来では各種の無線通信を行う無線局(不法局も含む)や、工業用機械を原因とする電波障害が最も大きな問題とされていた。しかし、近年では電波や高周波の電気信号を扱う電子機器が増えたことから、どこの家庭にもあるような普通の電子機器でも、電波障害の発生源となる可能性がある。また、携帯電話やPHSによる電波障害は、特に医療機器に対する影響が問題となっている。
類似の用語として電磁波障害がある。これは主に人体に対する影響を指すこと、磁界による影響(送電線など電波以外を扱うもの)を含めることから、電波障害とは区別して考えられる。電磁波#電磁波により懸念される悪影響を参照。
[編集] 電波障害の分類
電波障害はいくつかの種類に分類できる。それぞれ基本的な対策方法が異なるため、電波障害の防止に当たっては、現象がどの分類に当てはまるかを注意深く見極める必要がある。
[編集] 高周波電流の伝達経路による分類
- ノーマル・モード - 電波障害を及ぼす高周波電流が、電源線を電源電流と同様の経路(行きと帰りの2本の線が接続された場合に電流が流れる)で流れる場合をノーマル・モードと呼ぶ。高周波電流は2本の電源線を逆位相で流れる。
- コモン・モード - 電波障害を及ぼす高周波電流が、電源線と大地で形成される経路で流れる場合をコモン・モードと呼ぶ。高周波電流は2本の電源線を同位相で流れる。
[編集] 電波が放射される部位による分類
- アンテナから放射される場合
- 機器のケース(筐体)から放射される場合
- 電源端子・電源線から放射される場合
- 周辺機器から放射される場合
[編集] 障害を与える高周波電流の種類による分類
[編集] 電波障害の対策
電波障害が生じた場合に重要なことは、その発生源を特定することである。発生源と疑われる機器の電源を切ることにより、電波障害が消滅することを確認する。次に、原因となる高周波電流の発生原因と伝達経路を調べ、必要な対策を講じる。対策における基本的な知識を次に述べる。
[編集] ノーマル・モードによるもの
ノーマル・モードでは原因となる高周波電流は電源回路を通して伝達するため、発生源の機器と障害を受ける機器のどちらか、あるいは両方の電源回路に、ライン・フィルターと呼ばれる高周波電流を阻止する回路を挿入する。ライン・フィルターにはノーマル・モード用、コモン・モード用、ノーマル・コモン両用の3種類があるので、使用時には確認が必要である。
[編集] コモン・モードによるもの
コモン・モードによる電波障害の原因は、おおむね次の通りである。
- 発生源の機器において、アースの電位が一定しない場合(設計の不都合、部品の劣化などが原因)
- アンテナが正しく動作しておらず、アンテナ線やケースなど本来電波が放射されない部分から電波が放射されている場合
そのため、次のような対策が必要である。
- 発生源の機器に、十分に接地抵抗の低いアースを接続する
- 発生源から外部に出ている線(アンテナ、アース、各種周辺機器)に高周波電流を阻止するフィルターを挿入する
この場合のフィルターとして、「トロイダル・コア」と呼ばれるドーナツ型のフェライトでできた製品、「スナップ・オン・チョーク」と呼ばれる円筒形のフェライトを半分に切った形状の製品がある。この中に対象とする電線を通すか、巻きつけて用いる。
[編集] 無線機器における基本波によるもの
電波障害の発生源となる無線機器において、次のような場合の多くは基本波に起因するものである。
- 設計や調整の不都合が無い場合
- 電池を電源とする機器で、他の機器と配線が接続されていない場合
無線機器における基本波は止めることができないので、可能であれば電波の出力電力を低減するか、発生源の機器と障害を受ける機器の間隔を離す。また、障害を受ける機器をシールドすることも有効である。原理的には、障害を受ける機器が電波を受信するための機器の場合には、帯域消去フィルタを接続することにより基本波による障害を防ぐことができるが、この方法は他に比較して非常にコストが掛かり、また基本波以外による障害は防ぐことができないため、できる限り他の方法を検討すべきである。
[編集] 無線機器における高調波によるもの
無線機器から発生する高調波は、出力側にローパス・フィルター(ある一定の周波数以下の高周波電流のみを通過させる回路)を接続することによって抑制できる。また、障害を受ける側の機器にローパス・フィルターを設けることも効果がある。この場合にも、機器組み込み型の回路のほか、前々項で述べたトロイダル・コアやスナップ・オン・チョークが用いられる。
無線機器にローパス・フィルターが内蔵されていても、アンテナや回路の調整が不十分であると正常に動作しないことがあるので、それらの状態に注意すべきである。
[編集] 回路や装置の性質に起因するもの
無線機器の他、工業用モーターの接点における火花、高圧発生装置など、回路や装置の性質に起因する高周波電流が発生することがある。これらの場合、発生源からの不要な高周波電流の輻射を抑えるような対策が必要である。また、テレビの受信ブースターが部品の劣化により異常発振し、電波障害を起こす事例も報告されている。
[編集] 建造物等によるテレビの受信障害
建造物による受信障害は建築物により直接的に電波が遮られたり電波が散乱(又は乱反射)して直接波と反射波の干渉(伝播距離の差異による到達時間のよる問題)を起こす場合がある。
テレビの受信障害については建造物等設置者による、ケーブルによる送信やUHF、SHF送信所の設置などがあるがケーブルテレビがある地域では無償でケーブルテレビに加入してもらうことが一般的である。しかし地上デジタルテレビジョン放送では、建造物の建設後に電波が送信されている場合、建造物設置者の責任による受信障害とするのは難しい。
デジタル方式の場合は乱反射による障害は既知であるため、乱反射波を考慮した設計となってる。このため乱反射にはかなり耐えられる設計となっている。デジタル化により映像はアナログ方式の映像と比較して鮮明になる場合が多いと考えられる。