青蔵鉄道
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
青蔵鉄道(せいぞうてつどう,中国語読みチンツァンティエルー 青藏铁路)は中華人民共和国西部の青海省西寧とチベット自治区首府ラサ(拉薩)を結ぶ高原鉄道。総延長1,956km。西部大開発の代表的なプロジェクトとして当初は2007年完成予定としていたが、1年ほど前倒しして2006年7月1日に全通した。
なお、外国人(香港、台湾人含む)がラサまで乗車する場合はチベット入域許可書が必要であり、旅行代理店の主催するツアーに参加する必要がある。
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[編集] 1期工事
青海省都西寧と同省海西モンゴル族チベット族自治州のゴルムドを結ぶ第1期工事は1958年に着工し、1979年完成、1984年から営業運転されている。全長814km。この区間は海抜2,000m から3,000m ほどである。
[編集] 2期工事
2001年、国務院は262億人民元の資金を投じてゴルムドとラサを結ぶチベット区間の建設を決定し、同年6月29日着工した。この第2期工事区間は全長1,142キロに達する。
2005年10月に全線の基礎工事及び軌道敷設を完了し、貨物輸送が正式開業に先駆けて開始された。2006年7月1日にゴルムド~ラサ間の旅客営業運転を開始した。これは形式上、乗客を乗せての「試運転」であり、正式開業は2007年7月1日の予定である。
[編集] 路線図(ゴルムド-ラサ)
駅名にカーソルをあわせると標高を表示。
●:展望台設置駅
注:灰色で示した駅は無人駅
[編集] 旅客列車運行状況
- 北京西~西安~ラサ 毎日運行 所要48時間(硬座389元、軟臥1,262元)
- T27次 北京西 21:30発 → ラサ 2日後20:58着
- T28次 ラサ 8:00発 → 北京西 2日後8:00着
- 成都~ラサ 隔日運行 所要49時間
- T22/3次 成都 18:18発 → ラサ 2日後18:28着
- T24/1次 ラサ 9:05発 → 成都 2日後9:55着
- 重慶~ラサ 隔日運行 所要49時間
- T222/3次 重慶 19:20発 → ラサ 2日後18:28着
- T224/1次 ラサ 9:05発 → 重慶 2日後9:55着
- 蘭州~ラサ 隔日運行 所要30時間
- K917次 蘭州 16:45発 → ラサ 翌日22:30着
- K918次 ラサ 9:32発 → 蘭州 翌日15:45着
- 西寧~ラサ 隔日運行 所要27時間
- K917次 西寧 20:07発 → ラサ 翌日22:30着
- K918次 ラサ 9:32発 → 西寧 翌日12:19着
- 上海~西安~ラサ 隔日運行
- T164次 上海 16:11発 → ラサ 2日後19:50着
- T165次 ラサ 8:32発 → 上海 2日後13:45着
- 広州~西安~ラサ 隔日運行
- T264/5次 広州 10:29発 → ラサ 2日後19:50着
- T263/6次 ラサ 8:32発 → 広州 2日後19:37着
西寧~ゴルムド間には区間列車が多数設定されている。 (2006年現在)
実質的に鉄道利用よりも航空運賃のほうが安い。しかし車窓風景を眺めることができるなど、鉄道ならではの旅行ができる。
このほか、貨物列車が運行され、ラサまでの物流コストが削減された。
[編集] 工事の困難
青蔵鉄道チベット区間は最高地点が海抜5,072m、その近くの唐古拉駅が海抜5,068mであり「世界一高い場所にある鉄道駅」となる。平均海抜は約4,500m、また海抜4,000m 以上の部分が960km もあり、このような高所に鉄道が建設されるのは世界でも例がない。まさに世界の屋根を走る鉄道といえる。
高所の土地は凍土となっており、ロシアやカナダの凍土研究も参考にして建設が進められたが、地球温暖化により凍土が融解した場合の安全性が不安視されている。
中国政府は20億元を投じて高原の環境保護にも努めていると主張している。
[編集] 車両
空気の希薄な地域を走行するため、航空機メーカーであるボンバルディアの技術を導入した与圧設備を持つ車両が投入されている。寝台車(軟臥、硬臥)には酸素吸引設備が用意され、吸入チューブが無料で配布される。軟臥には個人用液晶モニターが設置されている。紫外線対策、落雷防止装備も設置される。車内のトイレは身体障害者用も設置され、垂れ流し式ではなくタンク式としている。
列車は最高160km/h(海抜5,000m 以上の区間では80km/h)で走行する。また、医師、看護師も同乗して高山病対策を行っている。
[編集] 展望
青蔵鉄道の開通により、チベット産業の支柱である観光業が飛躍的に発展することが予測されており、またチベットと中国他省との物流が大きく改善することにより、チベットの産業開発全般にも寄与することが期待されている。
一方、チベットへの漢族流入が促進されることで、チベットの「漢化」が一層進み、独自の文化が破壊されることが懸念されている。また軍用車両も運行され、軍事物資、人員を運搬する主要幹線としても使用されている。チベットに存在する豊富な天然資源の輸送路としても活用されている。
なお、今後は青蔵鉄道の支線がシガツェ市まで建設される予定であり、その路線は最終的にネパールとの国境、更にカトマンズまで延伸される計画となっている。
[編集] メディアによる紹介
2006年11月、NHKが外国メディアとして初めて青蔵鉄道を取材した。撮影クルーが西寧発ラサ行きの列車に同乗し、車窓風景や名所、沿線の人々などを追った。その成果は2007年1月2日21時からNHK総合テレビで特番として放映された(再放送同8日午前8時35分から)。
西寧とラサを結ぶ列車は一日おきに一往復運行される。ラサ行きは西寧を21時に発ちラサには翌日22時半に着く。列車が崑崙山脈、チベット高原を日中に通過できるよう時間を設定したという。列車はゴルムド駅で高地用のNJ2型ディーゼル機関車(アメリカ製)に交換し、唐古拉(タングラ)駅で西寧行きとすれ違う。
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