非訟事件手続法
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通称・略称 | なし |
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法令番号 | 明治31年6月21日法律第14号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 民事法 |
主な内容 | 非訟事件の手続に関する基本法 |
関連法令 | 家事審判法
借地非訟事件手続規則 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
非訟事件手続法(ひしょうじけんてつづきほう)とは、非訟事件の手続に関する基本となる日本の法律である。明治31年6月21日に公布、民法関係は民法施行の日(明治31年7月16日)、商法関係は商法施行の日(明治32年6月16日)に施行された(附則1条)。
非訟事件の意義については非訟事件の項目に委ねることにし、本項目では法律の構成等の問題点を中心に触れることとする。
目次 |
[編集] 構成及び内容
本法は、以下のような手続を規定している。
- 第1編 総則(第1条~第33条の3)
- 他の多くの法律と同様、冒頭に全体の総則となる規定を置いている。
- 第2編 民事非訟事件(第34条~第125条)
- 民法や信託法に実体的な根拠がある非訟事件の類型に関する手続である。もっとも、これらの法律に根拠がある事件類型の全てが本編に規定されているわけではなく、例えば、家庭裁判所に管轄がある非訟事件に関する手続は家事審判法に規定が設けられている。
- 第3編 公示催告事件(第141条~第160条)
- 申立てに基づき、裁判所が不分明の利害関係人に対する公告をし、権利等の届出の催告を行い(公示催告)、誰からも権利等の届出がされない場合には申立てに係る権利につき失権の効力生ずる旨の裁判(除権判決)をする手続である。有価証券を紛失した場合、権利に関する不動産登記の抹消を申請するにあたり登記義務者が行方不明の場合(手続きについては抹消登記を参照)などに使われる。
- 第4編 過料事件(第161条~第164条)
- 国の法律違反に対する行政上の秩序罰(詳細は行政罰を参照)としての過料を科すための手続である。過料事件は本来的には非訟事件には含まれないが、非訟事件と関連性を有するものとして、本法に手続規定が置かれている。
[編集] 構成上の問題点
[編集] 法務局に管轄がある事件の存在
本法は、本来は裁判所が管轄する非訟事件について規定した法律である。しかし、実際には、117条から125条にかけて法務局に管轄がある「法人及ビ夫婦財産契約ノ登記」に関する規定が置かれている。これは、本法が制定された当時、登記事務を裁判所が行っていたことの名残であり、第二次世界大戦後の法改革により登記事務が裁判所から法務局に移管したにもかかわらず、登記に関する規定が本法に残ったことによる。そのため、この部分は現在では管轄の点から非訟事件に関する規定とは言えず、本法の中でも異質な存在となっている。
なお、商業登記についても同様の問題があったが、商業登記法の制定により商業登記に関しては問題が解消されている。
[編集] 倒産法に関する規定の存在
かつては商事非訟事件に関し、135条ノ24から138条ノ16にかけて株式会社の会社整理や特別清算に関する手続規定が置かれていた。これらは沿革的には非訟事件としては把握されていなかった事件類型であり、訴訟に該当しないから非訟事件であるとして本法に手続規定を置いたものと考えられている。
しかし、この部分は破産法や民事再生法などとともに倒産法制の法領域を形成するものと把握されており、本法に規定があることにより非訟事件の概念に混乱をもたらしているとも言われている。この点を問題視しないとしても、会社整理や特別清算に関する規定が本法と商法に分けて規定が置かれている問題があり、非常に分かりにくい立法方式となっている。会社法の制定により、かつて存在した第3編 商事非訟事件に関する規定は削除されたため、この問題は立法的に解決した。
[編集] 会社法制定による変更
2005年(平成17年)の会社法の制定により、本法から商事非訟事件に関する規定(旧126条~140条)は削除されている。会社整理の制度は廃止され、特別清算に関する規定は会社法典に置かれている(会社法879条以下)。
[編集] 関連法令
性質上は非訟事件に属するとされながら本法に規定が置かれず、別途作られた法律等として(ただし、本法の準用はある)、借地条件の変更等の手続について定めた借地非訟事件手続規則、家庭裁判所が管轄する家事審判手続について定めた家事審判法などがある。