過料
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過料(かりょう)とは、金銭を徴収する制裁の一。過料は金銭罰ではあるが、罰金や科料と異なり、刑罰ではない。特に刑罰である科料と同じく「かりょう」と読むので、二つを区別するため、過料をあやまちりょう、科料をとがりょうと呼ぶことがある。
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[編集] 概要
過料を課す定めは多いが、その性質は一様でなく、適用される法理・手続も数多くある。大きく分けて、次の3種に分けられる。
いずれにしろ、過料は刑罰ではないので刑法総則・刑事訴訟法が適用されない。科罰手続の一般法としては、非訟事件手続法の規定と、地方自治法の規定があり、他にも個別法令により独自の手続が定められていることも多い。また、裁判所が手続に関与して課すことも多い。
非訟事件手続法(明治三十一年六月二十一日法律第十四号)
- 第百六十一条 過料事件(過料についての裁判の手続に係る事件をいう。)は、他の法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
[編集] 秩序罰としての過料
秩序罰としての過料には、民事上の義務違反に対するもの、民事訴訟上の義務違反に対するもの、行政上の義務違反に対するもの、地方公共団体の条例・規則違反に対するものがある。
- 民事上の義務違反に対するもの - 民法84条の3、商法18条など
- 民事訴訟上の義務違反に対するもの - 民事訴訟法192条など
- 行政上の義務違反に対するもの - 住民基本台帳法50条など
- 地方公共団体の条例・規則違反に対するもの - 地方自治法14条3項など
[編集] 執行罰としての過料
執行罰とは、非代替的作為義務または不作為義務の不履行に対して、一定額の過料を課すことを予告して心理的に強制を加え、間接的に義務の履行を促すものである。予告してもなお義務の履行がなされないときは、決議書を交付して納付を命じ、これに従わないときは国税滞納処分の例により当該過料を強制的に徴収することとなる。 この執行罰は、刑事罰と比較して実効性・抑止効果が薄いとされ、現行の法律において規定されている例はほとんどない。 現在、執行罰としての過料を定める例は、砂防法36条のみである。
砂防法(明治三十年三月三十日法律第二十九号)
- 第三十六条 私人ニ於テ此ノ法律若ハ此ノ法律ニ基キテ発スル命令ニ依ル義務ヲ怠ルトキハ国土交通大臣若ハ都道府県知事ハ一定ノ期限ヲ示シ若シ期限内ニ履行セサルトキ若ハ之ヲ履行スルモ不充分ナルトキハ五百円以内ニ於テ指定シタル過料ニ処スルコトヲ予告シテ其ノ履行ヲ命スルコトヲ得
[編集] 懲戒罰としての過料
懲戒とは、規律維持のため、義務違反に対し制裁を科すことをいう。その例としては、裁判官分限法2条、公証人法80条2号など。なお、裁判員制度において裁判員(または裁判員候補者)の虚偽記載や出頭義務違反等に課される過料(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律82条、83条)は、この懲戒罰としての過料に当たると解される。