音響兵器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
音響兵器(おんきょうへいき)とは音波を投射することにより対象物を破壊、あるいは対人において戦闘能力を奪うことを目的とする兵器である。ただ、非破壊・非殺傷性のものでは出力を調整する事で、音響装置(スピーカー)としても兵器としても利用可能な物もあり、その解釈が若干曖昧である。
[編集] 概要
これに類する装置のアイデアは古く、音響装置を用いて破壊力や殺傷力・もしくは心理的ダメージを目的とした兵器などは、1960-1970年代に旧ソビエト連邦が低周波を利用した物を実用化したとする説も見られる。ただこの旧ソ連の低周波兵器は存在はおろかその情報自体が不明確であることにも絡み、本記事では割愛する。
ただ、騒音を何らかの軍事的活動に利用した例はあり、ナチスドイツのユンカースJu87が固定脚の構造から計らずしもサイレンに似た音をだし、急降下爆撃時に爆撃目標周辺に恐怖心を引き起こしたのは有名で、後に威圧効果かが認められて、空力式のサイレンが取り付けられたものもある。このほかV1飛行爆弾はジェットエンジンの構造から独特の飛行音を発生させたが、これが攻撃の標的とされたロンドン市民にストレスを与えている。
音波は通常、発生源から放射状に広がる波の性質を持つが、音響兵器となる物では兵器後方の味方にまで被害を出すわけにも行かないため、指向性を持たせるのが一般的で、これにより対象に何等かの影響を与え得る物とされる。
現用のものでは、長距離音響装置LRAD(Long Range Acoustic Device)と呼ばれるものがイラク駐留米軍に配備されるとの報道が2004年にあった。この装置は直径80cmの椀型をしており重量約20kgで、約270mの効果範囲にある対象に向け作動させる事で、攻撃の意欲を無くさせる事ができるとしている。これは暴動などの際に催涙ガス(催涙弾など)を使用すると呼吸器疾患のある者が重体となったり死亡する危険性があるため、これに代わるものとしての利用が期待されている。ただこの音に長時間晒された場合には、聴覚を傷める危険もある。
なおこの装置は、距離の離れた限られた範囲内に音声メッセージを明確に伝えることにも利用でき、例えば災害発生時に相手側に無線受信機がなくても被災者に適切な指示を伝えたり、群衆の中の特定集団にのみ指示を出す(廻りの人間の妨げに成らない)事も可能であろう。
構想中のものでは、水中で音波を発信、複数のスピーカーから出力された音波をアクティブフェイズドアレイの原理により衝撃波として、艦船に向かってくる魚雷の信管を誤作動させ、これを破壊しようと言う計画もある。
- Slashdot記事(英語)
[編集] 使用事例
こうした兵器の戦場での運用や成果は一般に報道されにくいものだが、2005年11月5日、エジプトからケニアへの航海途上にあった米国の民間・商用豪華客船がソマリア沖で武装海賊の襲撃を受けた際、長距離音響装置(LRAD)で海賊を撃退したことが報じられた。非殺傷兵器であるとされるがゆえに、こうした民間での利用も今後進んでいくことになるのかもしれない。
なおイスラエルでは同国の陸軍が「スクリーム(叫び)」と呼ぶ、車載型の音響機器を使用して人に不快感や平衡感覚喪失を一時的に発生させる装備を採用、2005年にヨルダン川西岸のデモ隊追放に使用した。この装備は10秒間隔で断続的に不快音を発生させる物で、人の平衡感覚を司る内耳に作用する周波数だという。ただこれも長時間照射では健康被害を与える危険性も指摘されている。
これらの場合、非殺傷性といえども後遺症が残る可能性を考慮すれば、必ずしも人道的かどうかで議論を招く所だが、防衛用の装備としては、転倒や打撲の危険がつきまとう高圧放水よりも危険性は低いと見られ、まずまず平和的な解決方法といえる。
[編集] 関連項目
- 非殺傷兵器
- スタンガン
![]() |
この「音響兵器」は、武器・兵器に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(軍事ポータル|軍事PJ|航空PJ) |
カテゴリ: 武器・兵器関連のスタブ | 兵器 | 音響機器