信管
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信管(しんかん)は、メインの火薬・爆薬などを爆発させるための起爆薬を伴う装置。Fuse。
砲弾、爆弾などの炸薬を起爆させるものが信管であり、銃・砲の発射薬に点火するのは一般に雷管という。
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[編集] 動作
衝撃、水圧、電気刺激、化学反応などにより作動するが、意図せぬタイミングでは作動することが決して無く、かつ望むときには確実に作動する信頼性が要求される。
基本的に、信管の動作は、二つに分けられる。前半が安全装置解除で、それを行わないうちは叩いても作動することはない。後半が起爆で、これが確実に行われることによって意図する破壊を実現できる。
たとえば手榴弾は、ピンを抜いてハンドルを外さない限りは落下させたり蹴飛ばしたりしても爆発することはない。無論そういった扱いはするべきではないし、溶鉱炉などに投入した場合にはその限りではない。
[編集] 分類
信管は、装着位置・作動方式・装着対象などによって分類できる。
[編集] 装着位置による分類
- 弾頭信管(Point Detonation Fuse)
- 弾底信管(Base Detonation Fuse)
- 弾頭点火弾底起爆信管(Point Ignition Base Detonation Fuse)
- その他の信管
- 上記以外の装着位置の信管。例えば手榴弾では、炸薬中心部を貫通するように信管が設けられていることが多い。
[編集] 作動方式による分類
- 着発信管
- 着弾によって起爆する信管
- 瞬発信管(Super Quick Fuse)
- 着弾の衝撃力によって直ちに起爆する信管。最も単純で生産性の高い構造であり、精密な起爆タイミングがとれる。
- 無延期信管(Non Deley Fuse)
- 延期信管(Dely Fuse)
- 着弾時の衝撃力または慣性力をトリガーとして延期式起爆装置を作動させる信管である。発射時からタイマーを作動させる信管は時限信管として区別される。建物を攻撃するときに無延期信管よりもさらに深部で起爆させる場合や、砲弾等をあえて起爆させずに時限爆弾化させて行動不能地域を作るなどの戦略目的で利用される。
- 時限信管(Time Fuze)
- 火道式時限信管
- 内部に導火線が内蔵されている信管。延期時間の個体差が大きく経年劣化も早いため、現在はほとんど使用されていない。
- 化学式時限信管
- 内部に複数の薬剤等が別々に填実してあり、発射によって始まる化学変化の進行度で起爆する信管。
- 機械式時限信管
- 内部にバネや歯車からなる機械時計が内蔵されている信管。
- 電気式時限信管
- 内部に電子部品等で構成される時計が内蔵されている信管。極めて正確な延期時間が取れるが、静電気等に脆弱である。
- 火道式時限信管
- 近接信管(Variable Time Fuse)
- その他の信管
- 上記の信管を複数組み合わせて、より確実に起爆するようにした信管もある。
[編集] 不発弾と信管
信管が所定の目的(起爆)を果たせなかった場合は不発弾になる。ただし故障ではなく、柔らかい土中に落ちた為に作動しなかったなどの場合には、ちょっとした衝撃で起爆するおそれがある。
そのため不発弾処理においては、まず識別が行われ、この際砲弾や爆弾本体よりも、信管の種類や状態が重視される。時限信管や近接信管は、衝撃を与えなくても起爆する可能性があり、むやみに接近してはならない。やむを得ず信管を取り除く必要がある場合、これが最も危険である。これらの作業はEODと呼ばれる専門の資格を有する者しか実施できない。
第2次世界大戦後、少年たちの間で不発弾の信管を用いた危険な遊びが一部で流行し、それは強烈な爆竹ともいうべき存在であったが、その表現で片付けるにはあまりに危険すぎる代物で、死傷者を出したという。