髪切り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
髪切り(かみきり)は、江戸(現・東京都)や伊勢国松坂(現・三重県松阪市)に伝わる妖怪。ひらがなでかみきりとも表記される。
目次 |
[編集] 概要
どこからともなく突然現れ、人が気づかぬ間に、その人の髪を切る。人間が獣や亡霊と結婚しようとしたときに多く出現すると言われている。
正体については、「髪切り虫」という虫の仕業という説もあれば、当時捕えられた狐の腹に大量に髪が詰まっていたとの説もある。
寛政時代の雑書『諸国里人談』、根岸鎮衛の著書『耳袋』、大田南畝の随筆『半日閑話』などで述べられている。
[編集] 出没例
多くの妖怪と異なり、比較的近年の出没例があり、新聞記事でも報じられている。
明治7年。東京都本郷3丁目の鈴木家に、ぎんという名の女性が召使いとして勤めていた。
3月10日の21時過ぎのこと。ぎんが屋敷の便所で用を済ませようとしたところ、寒気のような気配が感じられた。すると突然、結わえていたぎんの髪が切れ、乱れ髪となってしまった。驚きのあまり、ぎんは近所の家へ駆け込み、そのまま気絶してしまった。
その家の家人がぎんを介抱して事情を聞き、その便所のあたりを調べた。するとそこには、斬り落とされた髪が転がっていた。
やがてぎんは病気となり、親元へと引き取られた。あの便所には髪切りが現れたとされ、誰も入ろうとしなくなったということである。
[編集] 関連項目
[編集] 出典元
- 村上健司 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、116頁。
- 水木しげる 『妖鬼化 1 関東・北海道・沖縄編』 Softgarage、2004年、37頁。