鳥獣人物戯画
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鳥獣人物戯画 (ちょうじゅうじんぶつぎが)は、京都市右京区の高山寺に伝わる絵巻物。国宝。一般的には鳥獣戯画と呼ばれる。甲・乙・丙・丁の全四巻からなる。なお、現在は甲・丙巻が東京国立博物館、乙・丁巻が京都国立博物館に寄託されている。
鳥羽僧正覚猷(とばそうじょう かくゆう)の作、と伝えられるが、それを示す資料はなく、むしろ鳥羽僧正の筆が加わっているかどうかも確かめがたい。各巻の画風の違いから、複数の作者によって書かれたとする説があり、制作年代は12世紀~13世紀(平安時代末期~鎌倉時代初期)とみられることから、作者も制作年代も異なる別個の作品の寄せ集めで、いわば戯画の集大成といえる。おそらく歴史上無名の僧侶などが、動物などに例えながら世相を憂い、ときには微笑ましく風刺したものであろう。
動物や人物を戯画的に書いたもので、特にウサギ・カエル・サルなどを擬人化して書かれた甲巻が非常に有名である。当時の世相を描いたものとして知られ、「日本最古の漫画」とも言われる。
福音館書店「こどものとも」で『かえるのごほうび』として使用された。
2005年にはキリンビバレッジ「茶来」のおまけとして鳥獣人物戯画のカエル・ウサギ・キツネ・サルの携帯ストラップが登場した。
[編集] 断簡・模本について
鳥獣人物戯画は長い年月を経過し、また多数の作品を集めたというその性格から、描かれた当時の形態を留めていない。脱落や繋ぎの変更があり、本来は鳥獣人物戯画の一部であったと思われる「断簡」が多数ある。それらは現在の形になる以前に模写された模本により、描かれた当時、あるいはその中間の形を推定することができる。
- 断簡
- 東京国立博物館所蔵断簡
- 益田家旧蔵断簡(実業家・茶人である益田孝が収集していた)
- 高松家旧蔵断簡(ブルックリン美術館蔵)
- MIHO MUSEUM所蔵断簡
- 模本
[編集] この絵の著作権
2004年5月にデジタル複製を行う京都の会社がこの絵のコピーの著作権を主張するという事件が起きた。当時はWinnyの製作者が逮捕された直後で、インターネット空間における著作権議論が活発な時期であった。2ちゃんねるではそれ以前に鳥獣戯画の一部をトップページに使用しており、2ちゃんねる管理人の西村博之はこれに抗議し、以前使用していた鳥獣戯画のトップ絵の上に「著作権侵害中」とかかれたトップページが暫くの間用いられた。なおこのデジタル化された絵画に関しては、絵自体の作者には著作権が認められるが、複製写真には著作権は認められないというのが一般的な見解になっている。