High Availability Cluster Multiprocessing
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High Availability Cluster Multiprocessing (HACMP) とは、AIX UNIXプラットフォーム上で稼働するIBMの高可用性クラスターパッケージである。RS/6000の初期から提供が始まり、IBMのUNIX系システムではシステム構築のための標準パッケージの一つとして扱われている。
以前、別ライセンスだったES機能も統合され、ライセンス価格も下がったために採用する企業も増えつつある。
[編集] 動作仕様
高可用クラスターとして、各ノード間の健常性を確認し合う、ハートビート機能をKeepAliveと呼び、ネットワークアダプタを介したTCP/IPによるものと、RS-232Cによるシリアルインターコネクトによるものを使用する。現時点でRS-232Cをインターコネクトに推奨している唯一の高可用クラスタパッケージでもある。[1]
スプリットブレインシンドローム対策として、KA信号の多重化及び、特定のデバイスに特化しない事を前提としており、特に大きな対策はない。強いて言えば、KA信号の途絶の際に生き残るサバイバルノードをノード命名規則にて規定し、強制終了ノードにおいてはデッドマン・スイッチにより、強制的にサービスを中断する手法をとっている。この手法は、高可用クラスタとしては最も原始的な方法であり、このような方法を残しているパッケージは他に存在しない。
基本機能であるプロセスの起動時名称による監視は、psコマンドのelオプションによるもので、実際の各種パッケージの監視には全く役立たない。しかし、拡張機能として、HACMP5.1以降に追加されたユーザオリエンテッドなシェルによる拡張監視機能により、より多くのソフトウェアパッケージの動作を監視する事が可能となる。
この機能を使用しないシステムは、他社商用クラスタでは標準の機能以下という事になり、手抜きといわざるを得ない。
- 注記
- ^ 他高可用クラスタパッケージにおいては、RS-232Cの使用は推奨されていない。その理由は、ノイズが乗り易いためにハートビートが途切れたり、排他制御が一切利かないため、信頼性に欠く点が挙げられる。そのため、HACMPにおいては、NICのKA多重度を上げるなどの信頼性確保が必須となる。
[編集] セールス状況
IBM社のセールス能力によりHP社のMC/ServiceGuardと同等の実績を上げているが、クラスターサービスとしてアプリケーションを登録する際に考慮する点や作成すべきシェルの数が多いなど、エンジニアから敬遠される傾向が強い。
特にサービス監視やサービスの依存リソースの監視などの機能が極端に弱く、割り切って機能を切り落とすか、あえて実装する場合にはその点を補完できるスキルが要求される。そのため、実態としてHAクラスタとして、他ベンダの製品より著しく劣るのも事実だが、IBMサーバ固有のHWの堅牢性により信頼をつないでいる。
また、IBM社の企業戦略として1つのサーバ1つのブランドという思想上、自社によるRDBMSのDB2を多用し、Oracle社のOracleDBとの親和性が弱いとされてきた。そのため、クラスターパッケージが多用されるDBサーバとしての扱い量が限定され、RDBMSとしてNo.1シェアを誇るOracleDBを使用したいユーザから敬遠される傾向もあった。
近年、IBM社及びその協力SIerの方針変更にて、AIX/Oracleの組み合わせを提案する回数が増え、今後の対応に期待が非常に集まる。