LightWave
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LightWave(ライトウェーブ、正式名称はLightWave 3D)はアメリカ合衆国のNewTek社による3次元コンピュータグラフィックスのソフトウェア。日本においてもCM・ゲーム・アニメの制作に頻繁に使用されている。比較的安価なため、趣味で使用する個人ユーザーも多い。Lightwaveのユーザーを俗にライトウェーバー(Lightwaver)と呼ぶ。
もともとはAmiga用のVideoToasterという動画編集用のハードウエアにバンドルされていた3D CG処理ソフトであった。バージョン4まではAmigaプラットフォームにのみ提供されていたが、コモドール社の倒産に伴いバージョン5ではWindows 95/98、Windows NT(Intel版およびDec Alpha版)、Macintosh、SGI IRIX、SUNなど多様なプラットフォームに提供。しかしその後はSGI IRIX版もバージョン6.5を最後に開発が打ち切られ、バージョン7以降はWindowsとMacintoshの2プラットフォームにのみ提供されている。
2005年11月現在のバージョンは8.5。バージョン9が既にアナウンスされている。日本ではディ・ストーム社が販売している。
プレイステーションの市販開発キット「ネットやろうぜ!」にはバージョン4.0が付属していた。SonyのVAIOにバンドルされていた例もある。
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[編集] インターフェース
モデリングからアニメーションまで制作できる統合型の3D CGソフトだが、モデリング・テクスチャを設定する「モデラー」と、モデリングしたデータを配置し、アニメーションを設定しレンダリングする「レイアウト」という2つのソフトから構成されているのが特徴である。これは、モデリングに関する部分とシーン構築に関する開発者の権利の都合上、分離せざるを得なくなったことに起因する(という見方もある。当時のAmigaではモデラーとレイアウト両方の機能を備えた単一のソフトウェアではコード量が肥大しメモリを圧迫してしまうため、2つの独立したソフトウェアとして製作したことが、事の発端であると思われる)。
モデラーとレイアウトが分離していることで、他社3Dソフトと較べ動作が軽く高性能のPCでなくとも動作するメリットがある。その反面、分離されたソフト間のやりとりに手間がかかりCG制作効率の低下をもたらしている。特にゲーム開発においては、ゲーム機専用のモデルデータにコンバートする作業を頻繁に行なうものであるが、LightWaveの場合、他社製3Dソフトと比較しても、モデラー→レイアウト→コンバートという一段階余分な手順を何度も繰り返すことになる。
バージョン7からはモデラー・レイアウト分離型の為に発生する手間を軽減するHUB機能が搭載された。モデラーとレイアウトをボタン一つで仲介する機能で、レイアウトで行った変更が瞬時にモデラーに反映される。この機能でやりとりの手間は軽減されたが動作が不安定でユーザーからは不評である。
Lightwave特有の分離型に起因する作業効率の悪さを改善するため、バージョン9からは、レイアウトにモデリングの機能を持たせる事になった。その他には現在の3Dソフトでは主流となっているエッジ編集機能の追加やノード方式のマテリアル設定機能が追加され改善を行なっている。
他社製ソフトのMaya、3ds Max、Softimage XSIではハイエンドなレンダラーmental rayを導入しているが、Lightwaveはmental rayを未だに導入しておらず、3ds MaxにおけるV-Ra-y、Brazilのようなサードパーティープラグインの対応数が少ない。Lightwaveは標準でラジオシティが扱え、高速なレンダリングに定評があったが、他社ソフトに高性能なレンダラーが搭載された為に過去のものとなっている。
LighwaveにはVIPERというマテリアル調整をする際に発生するレンダリング待ちの時間を減らす為のリアルタイムテストレンダラーがついているが、FPrimeというレンダリング速度に定評のあるリアルタイムレンダラーがWorley Laboratoriesから発売され、マテリアルやライティングを調整する為のレンダリング待ちの無駄な時間が大幅に減り作業効率の向上に一役買っている。FPrimeではVIPERでは不可能であったラジオシティなどの高品質のレンダリングが可能である。
他の問題点としては、今後の映像作品やゲーム制作において重要な位置を占めるであろう群集シミュレーション機能が、AI.implant や MASSIVE、character studio のようなプラグイン形式でも開発されていない。パーティクルでシミュレーションした結果をキャラクターモデルと置き換えて、事前に登録したアクションを実行する群集シミュレーションは可能であるが、多数のキャラクターが個々の思考によってランダムなアクションを行うような群集シミュレーションはできない。
とはいえ、今もって3D CGソフトにはPhotoshopのようなデファクトスタンダードが存在しないが、LightWave 5.5が世に出た頃は今にもまして混沌としており、3D CG編集のインターフェースに関する方法論など何もない状態であった。大抵のソフトが「難解」「非直感的」と評される状態にあって「粘土をこねるように直感的にモデリングできる」と評された同ソフトが、他の3D CGソフトのインターフェースに与えた影響は大きい。
[編集] プラグイン
当初から非常にラジカルなプラグインアーキテクチャーを採用しており、ソフトウェア本体は単なるプラグインサーバーに過ぎず、基本的なコア機能もプラグイン機構を通じて実装されている(それが可能なアーキテクチャーであった、とも言える)。
またその仕様もオープンにされていたため、大量のサードパーティー製・個人製プラグインが製作された。プラグイン・アーキテクチャーの利点のひとつはそのフットワークの軽さであり、3D CGの先進のトピックが、他の高額なハイエンドソフトウェアを差し置いていち早くLightWave上で実現されることさえあった。そして標準の機能の不便さを、開発元の対応を待たずに私製プラグインで補うことも盛んに行われ、その成果はたびたび広く公開された。
現在でこそ、こうしたプラグイン機構は珍しいものではなく3DCDソフトなら備えていてしかるべきという感があるが、当時の同価格帯ソフトではプラグイン機構の採用を見合わせているものも多く、LightWaveがプロ・アマ問わず広く支持された背景には、こうした大量のプラグイン(とユーザーコミュニティー)の存在に負うところが多い。
当時でこそ先進性を誇ったLightWaveのプラグインアーキテクチャーだが、その設計は現在(バージョン8)に至るまで、バージョン5の時点で確立されたものから全く変化しておらず、他の3D CGソフトウェアが軒並みオブジェクト指向アーキテクチャーを採用しているなか、さすがに時代遅れの感が強い。モデラーとレイアウトの統合が実現できないのも、後方互換性確保のために、この基本設計を変更できないからであろう。モデラーとレイアウトが統合され、オブジェクト指向アーキテクチャーを採用するというのは、Alias PowerAnimator→Maya、SOFTIMAGE|3D→SOFTIMAGE|XSIの例と同じく、今ある全ての資産を捨て、一から出直す必要があるのだろう。
[編集] 代表的なプラグイン
- unReal Xtreme:伝統的アニメのような質感を出せる、セルシェードレンダリングのためのプラグイン。
- Sasquatch:モデルに毛を生やすためのプラグイン。