PC-6000シリーズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
PC-6000シリーズは、日本電気 (NEC) が販売していたパーソナルコンピュータシリーズである。
キーボードと本体が一体化したデザインで、ホビーパソコンの代表格である。姉妹機種はPC-6600シリーズ。
現在、WindowsやUNIX上で動くPC-6001のエミュレータが開発されていて、当時のゲームソフトなどが実行できるようになっている。
目次 |
[編集] PC-6001
1981年に発売。定価は89,800円。
アイボリーとブラウンを基調とした筐体に、オレンジ色の特殊キー群をアクセントとしたポップなデザイン。 当時の家庭用としては画期的ともいえる、8色のカラー表示、ひらがな表示、三重和音も可能なPSG音源、ジョイスティックインターフェース標準搭載などを特徴として、パピコンの愛称で親しまれた。
本体に付随しているキーボードは、全てのキーが横長の直方体に近い形で、相互に離れて並んでいる独特の形状である(輸出用の6001Aは通常のキーボード)。これは、アプリケーションごとにオーバーレイシートを載せて使うことを意図したものである。また、かなキーの横に赤いランプがあり、かな入力モード時に点灯する。
VDPはモトローラのMC6847とモジュレータを採用。 映像出力はテレビ接続を用いたためあまり鮮明なものではなかったが、色のにじみを逆手にとって表現力を高めるというApple IIなどと類似のテクニックがよく使われた(代表的な作品に「タイニーゼビウス」などがある)。VRAMは主記憶上に配置され、最大2画面分もつことができ(うち1画面はテキスト専用、RAMを拡張すると最大4画面分)、画面(ページ)を切り替えながら使えるという当時としては珍しいものであった。画面数は、BASICの起動時にHow many pages?という問い合わせがなされ、ユーザーが1~4の数字を入力することで決定された。なおPC-8000シリーズやPC-8800シリーズなどとは異なり、テキストとグラフィックの重ね合わせはできない(グラフィックモードでの文字表示はグラフィックとして描画される)。
カートリッジスロットを1個持ち、RAMを32Kバイトまで拡張可能であるほか、拡張ユニット(カートリッジを複数接続可能とする、背面にフロッピーディスクインターフェースを持つ)、拡張BASICカートリッジ(ディスク関係のBASIC命令の強化や、CIRCLE/GET/PUTなどの拡張がなされた)、フロッピーディスクユニット(5.25インチ、片面倍密度)、ボイスシンセサイザー(音声合成)等の接続などが可能。
すがやみつるのパソコン入門漫画「こんにちはマイコン」の教材ともなり、多くのパソコン少年を育てた。また堀井雄二が初購入、かつ商業ゲームのデザインデビューを果たしたマシンでもある。
海外ではイラクの国営メーカー、「Al Warkaa」がアラビア語版のPC-6001を発売。
後に開発されるMSXは当機の強い影響を受けている。
[編集] 仕様
- CPU μPD780C-1(Z80-A互換) 4MHz
- RAM 16KB(最大32KB)
- テキスト表示 32桁×16行
- グラフィック表示 256×192ドット 2色 または 128×192ドット 4色 1面(RAM拡張時は最大3面)
- BASIC N60-BASIC (Microsoft 16K BASIC)
- インタフェース
[編集] PC-6001mkII
1983年に発売された、PC-6001の上位互換の後継機。定価は84,800円。
PC-6001に対し、キーボードが通常タイプのものに変更され、デザインも一転して硬質になった。
グラフィック機能も大幅に強化され、RGBディスプレイの接続により鮮明な表示が可能となった(専用ディスプレイ使用時は最大15色、PC-8000シリーズ用やPC-8800シリーズ用などの一般的なものでは最大8色)。もっとも、これによって色のにじみが解消された為、にじみを逆用して擬似的に着色していたソフトは白黒表示(本来は白黒が正常)となってしまい、”色が出ない”という問い合わせがユーザーから寄せられることになった。ページ切り替えのシステムも継承された(最大4画面、うち1画面はテキスト専用)。また、通常の英数字・カタカナ・ひらがなのキャラクタセットとは別に、絵文字のキャラクタセットが追加された。さらに、漢字ROM搭載により、教育漢字を含む1,024種の漢字をグラフィックで表示できた。
また本機最大の特徴として、内蔵の音声合成により日本語を発声でき、しかもBASICからコマンドで簡単に発声内容を作ることが可能であった(音声合成機能自体は、PC-6001にもオプションで提供されていた)。なおサウンド機能はPSG音源で変化はない。
PC-6001のさまざまなハードウェア構成(拡張BASICの有無、拡張RAMの有無)と互換性を持たせるため、起動時にBASICのモード(1~5)を選択する以下のようなメニューが表示されるという独特なシステムであった。
- N60-BASIC (RAM 16K)
- N60-BASIC (RAM 32K)
- N60拡張BASIC (RAM 16K)
- N60拡張BASIC (RAM 32K)
- N60m-BASIC (RAM 64K)
モード決定後はページ数(前述)の入力があり、FDD使用時はさらに最大ファイル数 (How many files?) と3回も入力してようやくBASICのプロンプトに至ることができた。
本機は日本語発声、漢字表示という画期的な機能を持っていたが、実用用途のメインストリームはすでに同社のPC-8801mkIIや富士通のFM-7に移ってしまっていたため、市場には主にホビー用途として迎えられた。
160×200ドット15色という画面モードは、程良い解像度の低さで処理速度を稼ぐことができ、吟味された15色は豊かな色彩を提供したため、独特な味のある優れたゲームソフトが多数制作された。一時代を築いた傑作マシンである。
武田鉄矢をイメージキャラクターとして起用した。
[編集] 仕様
- CPU μPD780C-1 4MHz
- RAM 64KB
- テキスト表示 40桁×20行
- グラフィック表示 320×200ドット 4色 または 160×200ドット 15色 最大3面
- BASIC N60m-BASIC (RAM64KB),N60-BASIC(RAM 16KB/32KB),N60-拡張BASIC (RAM 16KB/32KB)
- N60m-BASICは本機にしか搭載されていない。PC-6601以降は、N66-BASICという名称になった(主な違いは歌う機能の有無)。
- インタフェース
[編集] PC-6001mkIISR
1984年に発売された、PC-6001mkIIの上位互換の後継機。定価は89,800円。
FDDがないこととキーボード一体型であることを除けば、同時発売されたPC-6601SR (Mr.PC) とほぼ同仕様。外見は色を除いてPC-6001mkIIとほとんど変わっていないが、角が取れて若干丸みを帯びている。
グラフィック機能はさらに強化され、PC-8800シリーズと同等の640×200ドットを表示することが可能。テキスト表示も上位機種と同等の最大80桁×25行となった。ページ切り替えもあるが、グラフィックモード時にVRAMとして消費する容量が32KBに増えたため、2画面(うち1画面はテキスト専用)となった。
サウンド面では他のSRシリーズ同様、FM音源を搭載し、表現力が大幅に向上した。 また、音声合成機能は、PC-6601などと同様、「喋る」だけでなく2オクターブの音階で「歌う」ことも可能となった。
ただ、店頭にはMr.PCが目立つように置かれていたため、本機は陰に隠れていた。ラインナップ的にMr.PCの引き立て役であったことは否めない。
起動時のモード選択メニューは、N66SR-BASICとビデオテロッパの追加により7項目にふくれあがった。
付属ソフトは、ビデオテロッパと、ピンボールゲーム"David's Midnight Magic"である(いずれもカセットテープ供給)。
[編集] 仕様
- CPU μPD780C-1 4MHz
- RAM 64KB
- テキスト表示 最大80桁×25行
- グラフィック表示 640×200ドット 15色中4色 または 320×200ドット 15色
- BASIC N66SR-BASIC、N66-BASIC、N60-BASIC、N60-拡張BASIC
- PC-6000シリーズであるが、搭載しているBASICの名称はPC-6601SRと同じくN66SR-BASIC、N66-BASICである点に注意。
- インタフェース
- モニタ(Mr.PC用ディスプレイテレビPC-TV151またはカラーディスプレイ。家庭用テレビへの接続はオプション)
- CMT
- プリンタ(セントロニクス準拠)
- RS-232C(オプション)
- ATARI仕様ジョイスティックx2
- スーパーインポーズ(Mr.PC用ディスプレイテレビ接続時のみ使用)
- 3.5インチ 1DD FDD
- ここにはPC-8000/8800シリーズの5.25インチ2D FDDを接続して使うことができた。
PC-8000シリーズ | PC-8800シリーズ | PC-6000シリーズ | PC-8200シリーズ | PC-6600シリーズ | PC-100 | PC-9800シリーズ | PC-H98シリーズ | PC-9821シリーズ | PC98-NXシリーズ