T・S・エリオット
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トマス・スターンズ・エリオット(Thomas Stearns Eliot, 1888年9月26日 - 1965年1月4日)は、イギリスの詩人、劇作家で文芸批評家である。代表作には、5部からなる長詩『荒地』(The Waste Land、1922年)、詩劇『寺院の殺人』(Murder in the Cathedral、1935年)、詩劇論『詩と劇』(Poetry and Drama、1951年)などがある。
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[編集] 生涯
誕生はアメリカ合衆国のミズーリ州セントルイス。ハーバード大学で、アーヴィング・バビットに師事し、卒業後、ヨーロッパ各地と米国を往復し、研究活動を行う。その後はソルボンヌ大学やマールブルク大学、オックスフォード大学にも通う。1927年にイギリスに帰化し、イギリス国教会に入信。「文学では古典主義、政治では王党派、宗教はアングロ・カトリック」と自身を語っている。有名な「四月は残酷きわまる月("April is the cruellest month")」で始まる長編詩『荒地』で第一次世界大戦後の不安を描きだした。また、評論『伝統と個人の才能』(Tradition and the Individual Talent、1919年)によって、保守主義の思想家としても知られている。この中で、エリオットは「詩人とは表現するべき個性を持たず、特定の表現手段を持つ人で、それは個性ではなく手段であり、その中で印象や経験が特殊な予期せぬ状態で結合する。」と書いている。
[編集] 作品
[編集] 荒地
1921年に初稿を執筆。エズラ・パウンドの助言により、エピグラフ(コンラッド『闇の奥』の引用)の変更や、エピソードの削除等を行った。
フレイザー『金枝篇』の聖杯伝説を骨格として、聖書、ダンテ、シェイクスピアなどの引用を散りばめ、意識の流れの手法も用いて、第一次世界大戦後の荒廃した世界と救済への予兆を描きだした。末尾にはサンスクリット語も使用され、インド思想の影響も指摘されている。
1922年に文芸誌に発表。433行の難解な詩であり、中々理解されなかったが、1930年代になってF・R・リーヴィスらに評価されるようになった。
[編集] 4つの四重奏
1935-42年の'Burnt Norton' 'East Coker' 'The Dry Salvages' 'Little Gidding'を1つに纏めたもの(1943年)。『荒地』のような緊張感は無い。初期と比べると宗教的な主題が強くなる。森山泰夫の和訳がある(大修館)。
[編集] 寺院の殺人
1935年に発表された。殉教者トマス・ア・ベケットを主人公とする。無韻詩で書かれている。『寺院の殺人』(1935)の第2幕に登場する「誘惑者」と主人公トマスの対話は、シャーロック・ホームズの『マスグレーブ家の儀式』を真似たものである。
[編集] その他
1939年,児童向けの詩 『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法("Old Possum's Book of Practical Cats")』を発表、なお、ポッサムおじさんは、エズラ・パウンドが彼につけた渾名である。彼の死後、この作品が、ウェスト・エンドとブロードウェイにおけるアンドリュー・ロイド・ウェバーの大ヒットミュージカル『キャッツ』の原作となる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- The Waste Land [1]