UTOPIA 最後の世界大戦
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UTOPIA 最後の世界大戦(ユートピア さいごのせかいたいせん)は、足塚不二雄(藤子不二雄)によるSF漫画作品。同両人による、最初で最後の書き下ろしの単行本である。100ページ、全1巻。
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[編集] 作品概要
機械文明の発展した未来を描き、それが必ずしも人類に平和をもたらすものではないというテーマを掲げて描かれた。そして戦後間もない頃に描かれた作品のため、戦争批判や戦後復興への憧憬も色濃い内容である。そしてこの作品の中核である「ユートピア」で描かれている、「人々が管理され、裏切り者は弾圧・抹殺される」という点で、管理社会に対する批判も見て取れる(「ディストピア」も参照の事)。
合作作品とされているが、会社を辞め創作に専念していた藤本(藤子・F・不二雄)が指揮をとり、当時はまだ新聞社に務めていた安孫子(藤子不二雄A)が合間に手伝うという形で執筆されたという。画風は当時両人が入れ込んでいた、手塚治虫の影響が強い。そして作品の随所に、藤子両人のその後の作風や構成の原点を見て取れ、#豆知識に記述の通り、後の藤子作品にもネタとして取り上げられることがある。
[編集] 鶴書房(初出)版
- 鶴書房により、1953年に単行本として刊行された。この本の扉絵は、当時の人気漫画家、大城のぼるが描いている。本来のタイトルは「UTOPIA」だったが、単行本化の際に「最後の世界大戦」のタイトルがついている。
プロの漫画家を目指していた藤子両人は上京し、あちこちの雑誌社に持ち込みをするも、当時の雑誌は人気作家の手塚治虫の漫画ですら月に数ページしか掲載しておらず、100ページもの作品をとても雑誌に掲載できる状況ではなかった。また、当時の子供向け作品としてはやや難解なストーリーで、出版社から難色を示されていた。結局、この原稿は手塚の紹介で、単行本化されたという経緯がある。現存部数は非常に少なく、初版本は数百万円の値段がついている(原作者ですら持っていないという)。松本零士はこの本を当時購入し、現在も所有している。
[編集] 復刊
- 1981年には、名著刊行会より『日本名作漫画館』として復刊。カバー扉絵は藤子Fによる書き下ろしで、カバーを外すと鶴書房時代の扉絵となっている。本編最後のコマは原作者によるものではなかったため、カットされた。絶版。ちなみに復刻に当たって解体された原本は、小松左京が所有していたもの。
- 1991年、中央公論社刊『藤子不二雄ランド』第一期の最終巻(No.301)として再び復刊された。内容は先述の復刊されたものと同じく、最後のコマがカットされた。なお、この版には藤子初期の作品である「ユリシーズ」(原作:ホーマー)、「おやゆびひめ」(原作:アンデルセン)も同時収録されている。絶版。
これらは鶴書房版よりも比較的入手がしやすいものの、ネットオークションや古本屋でいずれも高値で取引されており、2007年現在、気軽に読む事は難しい。
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
20XX年、第三次世界大戦は終わりに近づき、A国軍はS連邦の首都マスクワへ総攻撃に移る。追い詰められたS連邦は最終兵器「氷素爆弾」をA国に投下する計画を立てた。氷爆の発明者は兵器としての使用を頑なに拒むが、軍部は強行する。一方A国は実験台として戦争反対罪の死刑囚を氷爆のシェルターに閉じ込めようとする。このシェルターの中に放射線を当てれば、氷爆の脅威から逃れられるというものである。だが、そこへ見せしめに連れて来た死刑囚の息子である少年もシェルターに飛び込んでしまう。A国軍部は敵襲を甘く見ており、この実験をあてにはしていなかったが、ついに氷爆は投下され、街も人々も一瞬で凍り付いた。シェルターの実験は成功し、中で生き残った少年の父は人間の愚かさをあざ笑った。
それからやがて、少年が目覚めると父は動かなくなっていた。しかも地上では百年もの歳月が流れていたのだった。少年が見た百年後の世界は、地球の半分が氷爆の影響のために凍り付いていたが、奇跡的にも復興を遂げていた。だが少年は父の事を思い出し泣き出してしまう。救出に当たった人々の計らいで、ロボットから頭を殴られた少年は、そのショックで父の記憶を失う。一方でこの少年は、地球国首都「ユートピア」を目の当たりにする。科学が著しく進歩した「ユートピア」では、人間は二百歳まで生きられる様になり、人口は470億人にも増えていた。
しかし、この「ユートピア」では科学至上主義が蔓延していた。人間は思想を管理、あるいは抹殺され、反逆者は「0の空間」へと送られ、存在そのものを消されてしまうのであった。そして消された人間の代わりに、氷爆の影響で高い知能を身に付けたロボット達が地上世界を支配しようとしていた。ロボットによる支配を不服と思う人々は、人間らしい生活を取り戻すため「人類連盟」を水面下で結成し、ロボットの勢力に立ち向かう。 そして少年は、人類対ロボットの争いと、そして失った自身の記憶に翻弄される……。
[編集] 豆知識
- 本作の「0の空間」は『21エモン』にも登場する。こちらでは「長生きし過ぎて絶望した人々が入る場所」とされている。
- ドラマ版『まんが道』で、小道具として本作が出てくるが、名著刊行会版で使用された扉絵になっている。
- 『ドラえもん』の作品中でスネ夫がこの作品(またはこれに酷似した題名の作品)を入手したことを自慢している場面がある。
- 『エスパー魔美』のエピソードで、漫画コレクターの男性のコレクションにこの本があり、古書店主が驚くという場面がある。
- 『笑ゥせぇるすまん』の作品中では、喪黒福造がこの作品(またはこれに酷似した題名の作品)を所持している場面がある。
[編集] 参考文献
- まんが道(藤子不二雄A)
- UTOPIA 最後の世界大戦(藤子不二雄ランド No.301)
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