にこいち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
にこいちもしくはニコイチとは、機械・器具の修理に際し、二つの不良個体から部品を組み合わせ、一つの個体にすること。二つの個体がそれぞれ別な個所で故障あるいは破損している場合に行われ、一方の個体の故障個所に他方の個体から取り出した良品を組みこむことで修理を行うものである。
かつて自動車の中古車市場などで、事故車などから部品を取って一台の車に仕立て上げた粗悪品を言う言葉として使われていたが、その後一般名詞化したものと思われる。二個で一個の略から出た言葉である。
なお、ニコイチで部品を供給した側も、さらに別な故障個所をもった第三の個体があればそちらにも部品を供給することができるし、逆に故障個所の多い個体の場合3個体あるいは4個体を用いないと1個体の良品を再生できない場合もあるが、これらも広い意味でのニコイチといえる。
通常、製造メーカー自身、あるいはメーカー指定の修理会社等で保守サービスを行う場合には、製造メーカーが供給する修理用部品を用いて故障個所や破損個所を修理する。しかし、製造メーカーや修理会社による修理が受けられない場合で、どうしても修理を要する場合には、やむなくこのような修理方法をとらざるを得ない。このような必要が生ずることがあるのは例えば次のような場合がある。
製造メーカーは製品の製造終了後一定期間は保守サービスを提供するが、その期間が過ぎると修理用部品が無くなるなどの理由で修理を辞退することがある。また、製造メーカーが倒産、解散あるいは業態変更したことなどにより、その製品の保守サービスができなくなることがある。古くなってもその製品を愛用したいと考えるユーザーに可能な方法のひとつがニコイチ修理である。無線機、オーディオ製品、フィルムカメラなどの古いが価値のある製品(ビンテージ製品)ではよくこうした修理方法が必要になる。
また、メーカー修理が可能であるにも拘らず、修理費用の節約のために行う場合もある。特にエレクトロニクス技術を多用した機器では、機器の高密度実装が進んだ結果、修理時の交換単位が大きくなった。30年前の真空管式テレビ受像機では、不良になった真空管や焼き切れた抵抗器を交換するなどの修理が行われたが、近年では機能の大半を占める回路基板アセンブリをそっくり交換する方法で修理を行うことが多い。パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどでも、そうした修理方法を採用する場合がある。このため修理費が高くつき、消費者は修理よりもむしろ買い換えを選びたくなることがある。中古品の修理などはまさにそうした場合で、メーカー修理を選ばず、ニコイチ修理で済ませることで費用を節約するユーザーや、非メーカー系の修理業者がでてくる所以である。当然のことながら正規の修理ではないので、メーカーに再修理を持ちこむなどすると修理を断られることがある。このため、修理は自己責任で行う必要がある。
こうしたニコイチ修理のためには、同等な製品が複数あることが必要であり、特に古い製品の場合にはまずニコイチの相方を探すことから始めなければならず、ジャンクを探して中古販売店やネットクオークションを頼ることなどが必要になる。
別な例として、鉄道車両の転用改造にあたり、先頭車(制御付随車)の運転台部分の車体を切り離し、中間電動車に切り継ぎして制御電動車を作り上げるような手法、両運転台の車両が必要な場合に片運転台の車両に別の車両から運転台部分を切り継いで造る場合(例:キハ58×2両→キハ53)にもみられる。これも広義のニコイチ的な改造と考えられる。
オートバイあるいは、普通自動車に二人で乗車している場合を言うこともある。アマチュア無線などで「ニコイチワンパックモービル」といえば、二人乗車の状態であることを指す。オートバイのタンデム乗車は、二人で一体となって走るのであるから、言葉的は適当な表現である。