アトラス (ロケット)
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アトラスロケットはアメリカの大型使い捨て打ち上げロケットの一つである。アトラスシリーズには大きく分けて、タイタンICBMの配備に伴って余剰となったアトラスICBMを流用・改良したアトラスI、チャレンジャー事故の影響でアメリカの衛星打ち上げ能力が一時的に喪失したことを受けて開発されたアトラスII、さらにメインエンジンをロシア製液酸ケロシンエンジンであるRD-180に、上段を液酸液水エンジンであるセントールエンジンに換装したアトラスIII、及び第一段をCommon Core Boosterと呼ばれる大型のもの(メインエンジンとしてRD-180を用いる)へ変更したアトラスVの5種類のシリーズがある。 なお、本稿ではそれら全てについて扱う。
目次 |
[編集] アトラス
- 詳細はアトラス (ミサイル)を参照
[編集] アトラスII
Atlas II | ||
---|---|---|
段数 | 4 | |
第0段 | ||
エンジン | RS-56-OBA ×2 | |
推力 | 2094 kN | |
燃焼時間 | 172 s | |
燃料 | LOx/ケロシン | |
第1段 | ||
エンジン | RS-56-OSA ×1 | |
推力 | 386 kN | |
燃焼時間 | 283 s | |
燃料 | LOx/ケロシン | |
第2段 | ||
エンジン | RL-10A-3A ×2 | |
推力 | 147 kN | |
燃焼時間 | 488 s | |
燃料 | Lox/LH2 | |
第3段 | ||
エンジン | R-4D | |
推力 | 980 N | |
燃焼時間 | 60 s | |
燃料 | N2O4/モノメチルヒドラジン | |
打ち上げ | 1991年 12月07日 最初の打ち上げ | |
ペイロード (低軌道) | 6580 kg | |
ペイロード (GEO) | 2810 kg |
アトラスIIは、アトラスICBMから改良されたアトラスシリーズの最終モデルで、地球低軌道・GTO・及び静止軌道への投入を目的として設計された。アトラスII(IIA、IIASを含む)は1988年からデルタロケットに取って代わられる2004年にかけて63機が打ち上げられた。より大きなアトラスロケットはアトラスIII及びアトラスV(後述)として開発された。
[編集] 特徴
アトラスIIでは、各段でアトラスIよりも強力なエンジンと拡張された燃料タンクを利用することによってより大きなペイロード打ち上げ能力を持つ。アトラスIIは2200 kN (490000 lbf) もの総推力によって2767 kg (6100 lb) 以上のペイロードを静止軌道 (35000 km) に投入することが可能である。また、このシリーズではペイロードをさらに増加させるために上段として液水液酸ロケットエンジンを利用するセントールロケットを用いる。さらにアトラスIIは低コスト化された電子機器、優れた飛行制御コンピュータと前身のアトラスIよりも延長された燃料タンクを持っている。
アトラスIIシリーズ最大の派生型がアトラスIIASで、GEOに3.445~3.7 tのペイロードを投入可能である。
[編集] 背景
アトラスIIはケープカナベラル空軍基地の45番発射台から打ち上げられる。最も最近の西海岸からのアトラスIIの打ち上げは2003年12月にヴァンデンバーグ空軍基地30番発射台からである。 1988年5月、1980年代後半のアトラスIの失敗を受け、アメリカ空軍はDSCS (Defence Satellite Communication System) および商業衛星の打ち上げのために、アトラスIIの開発担当としてジェネラルダイナミクス(現在のロッキードマーティン)を選定した。
[編集] 各種情報
- 主機能: 打ち上げロケット
- 主契約企業: ロッキードマーティン(機体・組み立て・アヴィオニクス・試験・システムインテグレーション)
- 主要な他契約企業: ロケットダイン(エンジン, MA-5); プラット&ホイットニー(セントールエンジン, RL-10); ハニーウェルテレダイン(アヴィオニクス)
- エンジン: MA-5A(ロケットダイン)×3, RL10A-4(プラット&ホイットニー)セントールエンジン×2
- 第0段推力: 2200 kN (414000 lbf)
- 全長/全幅: 47.54 m (156 ft); 4.87 m (16 ft) クラスター部
- コア直径: 3.04 m (10 ft)
- 離床重量: 204.3 t (414000 lb)
- 初打ち上げ: 1992年2月10日
- モデル: II, IIA, IIAS, IIAR
- 打ち上げ場: ケープカナベラル空軍基地
[編集] 参照
[編集] 外部リンク
[編集] アトラスIII~IV
[編集] アトラスV
[編集] 概要

- アトラスVはロッキード・マーティンによって開発されたロケットである。アトラスVはアトラスロケットの最新バージョンという位置づけであるが、過去のアトラスロケットの特徴はほとんど残っていない。バルーンタンク(当初のアトラスロケットでは、極限まで軽量化するために燃料タンクが非常に薄いステンレスで作られており、燃料内圧もしくは窒素ガスによって形を維持した)は使われていないし、1.5段式(主エンジン+ブースター)の機体構成も用いていない。それどころかアトラスVの1段目はタイタンシリーズのような強固な構造を取り入れている。
- アトラスVは、アメリカ空軍のEELV (Evolved Expendable Launch Vehicle:発展型使い捨てロケット) 計画の一環としてロッキードマーティン コマーシャルローンチサービス社で開発された。アトラスVはケープカナベラル空軍基地の41番射場(以下CC LC41)から打ち上げられるが、将来の極軌道衛星用としてヴァンデンバーグ空軍基地(以下ではVAFB SLC-3E)が用意されている。現在までに8機のアトラスVが打ち上げられ、全て成功した。アトラスVファミリーの1段目には新規に開発されたCommon Core Booster(CCB; 共通一段システム/メインエンジンとしてロシア製のRD-180を用いる)を使用する。CCBは直径3.8 m (12.5 ft) ・全長32.5 m (106.6 ft) で、284,453 kg (627,105 lb) の液体酸素とRP1ロケット燃料を搭載し、最大で5機の固体ロケットブースターを取り付けることができる。CCBのRD-180エンジンはおおよそ3.8 MN (900,000 lbf) の推力を発揮し、約4分間燃焼する。
- 1.68 m (5.5 ft) ストレッチされて全長12.68 m (41.6 ft)・直径3.05 m (10.0 ft) となった第2段のセントールは圧力安定式低温燃料タンクを用い、1基~2基のプラット & ホイットニー社製RL10A-4-2エンジン(推力99.2 kN)を使用する。セントールに搭載されている慣性航法装置群 (INU) はアトラスおよびセントール両方に対して航法と誘導を提供し、同時に燃料タンク圧力及び燃料消費を制御する。また、セントールは宇宙空間での再着火に対応しているため、地球低軌道のパーキング軌道へ投入するだけでなく、GTOに衛星を投入することが可能である。現在耐障害性の高いINUへのアップグレードが進行中であり、これによって全てのアトラスロケットの信頼性がさらに増すことだろう。
- アトラスVにおいては従来の(アトラスIIから使われていた)4メートルペイロードフェアリングに加えて、ロッキード・マーティンはフライトプルーブンであるエリコン・コントラヴェス社製5メートルペイロードフェアリング (4.57 m使用可能) を導入した。また、アトラスVは中小型のペイロードの場合はアトラスV 400/500シリーズ、大型のペイロードにはアトラスV Heavy(さらに大きなペイロードの打ち上げを可能とするために3つのCCBを束ねた強力型)というように3種類の構成をサポートする。
- なお、アトラスV Heavy型の場合は受注から30ヶ月で打ち上げ可能となる。(情報元: [1])
- 旧来のフェアリングではペイロードのみをカバーするが、コントラヴェスフェアリングではペイロードのみならずセントールロケットまで収納される。
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[編集] 型名
全てのアトラスロケットは(H-IIAと同様に)ロケットの構成から決まる3桁の数字の名称を持つ。100の位の数字はノーズコーンフェアリングの直径 (4 m / 5 m) を表し、10の位の数字は第1段に取り付けられる固体ブースターの本数を表す(固体ブースターロケットは4 mフェアリングならば0本から最大4本、5 mフェアリングの場合は0から最大5本まで)。最後に1の位の数字はセントールロケットに搭載されるエンジンの個数(1個 / 2個)を示している。シングルエンジンのセントールは主に静止トランスファ軌道に投入されるか、あるいは地球引力圏を脱出する場合に用いられる。デュアルエンジンのセントールは主に低軌道に投入される場合に用いられる。
例えば、“AtlasV 552”という型名ならば、5 mフェアリングと5本の固体ブースターを使用し、2つのセントールエンジンを組み合わせていることを表し、“431”という型名ならば、それは4 mフェアリングと3本の固体ブースター、そして1つのセントールエンジンを組み合わせていることを表す。
[編集] 型リスト
型名 | ブースター | 第2段 | フェアリング | 低軌道ペイロード | 静止トランスファ軌道ペイロード | 打上実績 |
---|---|---|---|---|---|---|
401 | - | 1基 | 4 m | - | 4951 kg | 3 |
402 | - | 2基 | 4 m | 12500 kg | - | 0 |
411 | 1 | 1基 | 4 m | - | 5951 kg | 1 |
421 | 2 | 1基 | 4 m | - | 6832 kg | 0 |
431 | 3 | 1基 | 4 m | - | 7642 kg | 1 |
501 | - | 1基 | 5 m | - | 3971 kg | 0 |
502 | - | 2基 | 5 m | 10300 kg | - | 0 |
511 | 1 | 1基 | 5 m | - | 5271 kg | 0 |
512 | 1 | 2基 | 5 m | 12050 kg | - | 0 |
521 | 2 | 1基 | 5 m | - | 6287 kg | 2 |
522 | 2 | 2基 | 5 m | 13950 kg | - | 0 |
531 | 3 | 1基 | 5 m | - | 7202 kg | 0 |
532 | 3 | 2基 | 5 m | 17250 kg | - | 0 |
541 | 4 | 1基 | 5 m | - | 7982 kg | 0 |
542 | 4 | 2基 | 5 m | 18750 kg | - | 0 |
551 | 5 | 1基 | 5 m | - | 8672 kg | 1 |
552 | 5 | 2基 | 5 m | 20050 kg | - | 0 |
Heavy (HLV (5H1)) | 2 CCB | 1基 | 5 m | - | 13605 kg | 0 |
Heavy (HLV DEC (5H2)) | 2 CCB | 2基 | 5 m | 25000 kg | - | 0 |
[編集] 打ち上げ履歴

日付 | 型名 | シリアルナンバー | 打ち上げ場所 | ペイロード(衛星名) | 用途・目的 | 結果 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2002年8月21日 | 401 | AV-001 | CC LC41 | ホットバード 6 | 商用 通信衛星 | 成功 | アトラスV初打ち上げ |
2003年5月13日 | 401 | AV-002 | CC LC41 | ヘラスサット 2 | 商用 通信衛星 | 成功 | |
2003年6月17日 | 521 | AV-003 | CC LC41 | レインボー 1 | 商用 通信衛星 | 成功 | アトラスV 500初打ち上げ |
2004年12月17日 | 521 | AV-005 | CC LC41 | AMC 16 | 商用 通信衛星 | 成功 | |
2005年3月11日 | 431 | AV-004 | CC LC41 | インマルサット4-F1 | 商用 通信衛星 | 成功 | |
2005年8月12日 | 401 | AV-007 | CC LC41 | マーズ・リコネッサンス・オービター | 火星探査機 | 成功 | アトラスV初のNASA探査機の打ち上げ |
2006年1月19日 | 551 | AV-010 | CC LC41 | ニュー・ホライズンズ | 冥王星 を含む EKBO 探査機 | 成功 | |
2006年4月20日 | 411 | AV-008 | CC LC41 | ASTRA 1KR | 商用 通信衛星 | 成功 |
[編集] 今後の打ち上げ計画
リスト作成日: 2006年6月7日
日付 | 型名 | シリアルナンバー | 発射場 | ペイロード | 用途・目的 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
2006年 | 411 | AV-006 | ヴァンデンバーグ空軍基地 Space Launch Complex 3-East | - | アメリカ国家偵察局 偵察衛星 | ヴァンデンバーグからの初めての打ち上げ |
2006年10月 | 401 | AV-013 | CC LC41 | Space Test Program-1 | 7 military research satellites | |
2007年 | 401 | - | VAFB SLC-3E | DMSP-18 (Defense Meteorological Satellite Program) | 軍事気象衛星 | |
2008年 | 401 | - | CC LC41 | ルナ・リコネッサンス・オービター 及び LCROSS (Lunar CRater Observation and Sensing Satellite) | 月探査機及び月面衝突実験機 | Press release |
2009年 | 541 | - | CC LC41 | マーズ・サイエンス・ラボラトリー | 火星ローバー | Press release |
[編集] 比較にあげられるロケット
[編集] 外部リンク
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