アラビア語エジプト方言
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アラビア語のエジプト方言はアラビア語口語の方言の一つで、一般的にはカイロで話されている口語のことをいう。
エジプト内でも地域ごとに方言の隔たりはあるが、テレビ・ラジオが普及し、カイロが中東における映画やテレビドラマ制作の中心的地位を占めるようになったことから、カイロの話し言葉が事実上の標準語として国中に広がったほか、エジプト国外でもエジプト口語を理解できるアラブ人は多い。
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[編集] 主な特徴
[編集] 発音面
- フスハーの j が g に変化しており、書かれたものを読む際にも j の音価を持つ文字ジームが g と発音される。エジプトの小学校や、外国人向けの語学学校でも、この発音で教育が行われる。ピラミッドのある "giza" もエジプト方言発音であり、表記上は "jiza" である。
- フスハーの q が多くの場合、声門閉鎖音(フスハーでのハムザ)に変化している。ただし、qur'aan「クルアーン」、thqafa「文化」など、語によっては q で発音されるものも少なくない。
[編集] 文法面
- 語順はほぼ常にSVOで、VSOが好ましいとされる正則アラビア語(フスハー)とは異なる。
- 疑問詞はフスハーや他地域の方言では文頭におかれることが多いが、エジプト口語では文末におかれることが多い。
- 例:あなたのお名前は?
- フスハー:ma-smuka?
- レバノン・シリア口語:shu ismak?
- エジプト口語:ismak eh?
- 名詞文の否定に使われる単語は lā ではなく、mish。また、動詞文の否定形は、動詞を ma と shu で挟む。
- 例:私は知らない
- フスハー:lā aʿrif
- エジプト口語:maarifsh
- 現在進行形の存在 - 動詞の現在形の頭に b をつけることで、現在進行形を表す。
- 例:私は今、この本を読んでいる。
- ana ba'ara al kitab da.
- (つづりはbi-aqaraだが、q が声門閉鎖音に変化しているため、アポストロフィーで表記した)
[編集] 語彙
- トルコ語由来、英語、フランス語由来など外来語が多い。
- 例:バシャ(地位のある男性、「旦那」=トルコ語由来)、アサンセール(エレベーター=フランス語由来)。
- アラビア語由来の名詞も、エジプト独特の用法が目立つ。
- 例:アラベーヤ(車=フスハーではサイヤーラ)