アンドリュー・ワイルズ
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アンドリュー・ワイルズ(Andrew John Wiles, 1953年4月11日 - )は、イギリスの数学者、ケンブリッジ生まれ。プリンストン大学教授(整数論)。ケンブリッジ大学卒業。大学院でジョン・コーツの指導下で岩澤理論と楕円曲線論の研究、博士号。業績に岩澤(健吉)主予想の解決(メイザーとの共同研究)やバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想に関する貢献(コーツとの共同研究)など。
1993年、谷山・志村予想を半安定な場合について解決したと突如発表し、その系として「フェルマーの最終定理」を証明したと宣言した。彼はそれまで7年もの間この仕事に専念していたが、ほぼ完全に秘密としていたため周囲を驚愕させた。証明の内容は更に驚異的なものだった[1]。そこには一箇所致命的な誤りがあったことが後に判明したが、翌1994年、修正に成功し、新たな論文が1995年のAnnals of Mathematicsに掲載された。このことにより、ワイルズはフェルマー予想を提起以来350年ぶりに解決した。国際数学連合のフィールズ賞には40歳以下という制限がついているため、ワイルズは受賞を惜しくも逃したが、その顕著な業績に対して異例の特別賞が贈られた。
またワイルズは優れた指導者であり、多くの優秀な弟子を育てている。岩澤主予想のオイラー系を用いた別証明で著名なカール・ルービン。ワイルズの方法を拡張して谷山・志村予想に完全な証明を与えたブライアン・コンラッド、フレッド・ダイアモンド。谷山・志村予想、局所ラングランズ予想の証明で著名なリチャード・テイラー。岩澤理論において貢献があるクリストファー・スキナー。2次形式論で著名なマンジュル・バルガヴァなどである。
- ^ 数論の様々な分野から当時最新の、しかも深い結果を大量に動員していた。ある数学者がこれを評して曰く「数学者というものは各人ばらばらの目標を立てて研究して来たように見えて、実は全員がフェルマー予想に取り組んでいたのだ」。
[編集] フェルマー予想を証明した論文
- Andrew Wiles (May 1995). "Modular elliptic curves and Fermat's Last Theorem (モジュラー楕円曲線とフェルマーの最終定理)". Annals of Mathematics 141 (3): 443-551.
- Richard Taylor and Andrew Wiles (May 1995). "Ring-theoretic properties of certain Hecke algebras (ある種のヘッケ環の理論的性質)". Annals of Mathematics 141 (3): 553-572.
[編集] 受賞歴
- 1995年 ショック賞 (スウェーデン王立アカデミー)
- 1996年 ロイヤルメダル (ロンドン王立協会)
- 1996年 コール賞数論部門 (アメリカ数学会)
- 1996年 ウルフ賞数学部門 (ウルフ財団)
- 1997年 ヴォルフスケール賞 (ゲッチンゲン科学アカデミー)
- 1998年 特別賞 (ICM)
[編集] 関連項目
- ワイルズ (小惑星)(アンドリュー・ワイルズに因んで命名された)