ウィリアム・ゴドウィン
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ウィリアム・ゴドウィン（William Godwin, 1756年3月3日－1836年4月7日）はイギリスの政治評論家・著作家。無政府主義の先駆者。妻は女権論者のメアリ・ウォルストンクラフト。二人の間に生まれた娘は、小説「フランケンシュタイン」の作者で詩人シェリーの妻であるメアリ・ウォルストンクラフト・ゴドウィン（メアリー・シェリー）。
[編集] 生涯
ケンブリッジシャー州のウィズビーチでカルヴァン派の牧師の子として誕生。一時牧師をするが、フランス啓蒙思想に接して信仰に動揺をさせ、1782年にロンドンに出て牧師を辞め文筆生活に入る。百科全書派をイギリスへ紹介し、優れたジャーナリストとなる。彼の最初に出版された著作は、匿名で書かれた『チャタム卿の生涯 Life of Lord Chatham，1783年』である。1785年までに書かれた三つの小説は今では忘れられている。フランス革命直後、ゴドウィンの最も成功した著作『政治的正義 Political Justice，1793年』が四つ折り版二冊で、わずか3ギニーという値段で売り出された。たちまち著者は当時の最も有力な社会哲学者として知られるようになり、その本はミルトンの『アレオパジティカ』やロックの『教育論』、ルソーの『エミール』に並ぶ地位を与えられた。サウジーやコールリッジ、ワーズワースのような青年詩人は当時大学生であったが、この本をむさぼり読み、政治教育の糧とした。『政治的正義』は四版を重ね、フランス革命の余波がイギリスで拡大し、首相ピットが騒擾の鎮圧に乗り出すようになり、ゴドウィンは政府や財産への攻撃を第二版後はゆるめた。もとからゴドウィンは、理性や真理の全能を信じ無抵抗を主張する平和な革命家であった。出版業を営んで破産し（1822年）、文名も衰え窮迫のうちに没する。他に小説『ケイレブ・ウィリアムズ Things as they are,or theadventures of Caleb Williams，1794年』と論文集『探求者』（1797年）、回想『メアリー・ウルストンクラーフトの思い出』がある。
[編集] 思想
カルヴァン派の牧師であった経歴はゴドウィンを理解する場合重要である。つまり、彼の唯物論は逆立ちしたカルヴァン神学であり、神は理性であり、予定説は決定論、神の摂理は因果関係、神の王国が倫理的共産主義である。人間の心理は機械作用と同じであり、因果関係の法則に従って活動する。外的世界の印象が、人間の心を善くも悪くもする。しかし権力と暴力に基づいた政府は、正義や幸福に反するすべての制度を温存させ、理性の働きを阻害する。このような政府は、罪悪であり反自然である。
このような前提により、ゴドウィンは政府のない社会・富の平等な分配を要求する。しかし、その手段としては理性と説得により社会の成員の合理的な同意を得ることしか提示せず、「貧困」の問題については何らの重要性もおいていない。食糧や財よりも、個人の知性・道徳を進歩させるための「余暇」を真の富だと、ゴドウィンは考えていた。この抽象的な経済観念に対し、経済学者マルサスが『人口論』を書いて、富の平等な分配が不可能であると論じたことは有名である。
