ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ
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ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ(Wilibard Joachim von Merkatz )は、銀河英雄伝説の登場人物。
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[編集] 概要
元々は旧銀河帝国(ゴールデンバウム王朝)の宿将。その後は亡命してヤン艦隊の客員提督(ゲスト・アドミラル, Guest Admiral)になるなど流転の人生を歩んだ。乗艦は帝国軍時代はネルトリンゲン、ヤン艦隊時はシヴァ→ヒューベリオン(PCゲーム『銀河英雄伝説IV』での旗艦はユリシーズ)。
[編集] 略歴
銀河帝国の貴族の出身。帝国暦487年、58歳の時にアスターテ会戦に大将/分艦隊司令官として参加。翌年上級大将となり、ブラウンシュヴァイク公爵の要請(実際は家族をたてに行われた脅迫)によってリップシュタット連合軍の戦闘指揮官に就任。ガイエスブルク要塞陥落時に副官のシュナイダーの勧めで同盟に亡命。中将の階級でヤン艦隊の客員提督に就任する。時系列上の初登場は、駆逐艦ハーメルンIIが脱出した後、メルカッツ艦隊の哨戒宙域に無事到達した時になる(メルカッツは登場せず彼の名前だけ登場)。
宇宙暦798年/帝国暦489年8月、本人の承諾なしに銀河帝国正統政府の軍務尚書に指名され、一時ヤン艦隊から離れるが、翌年のラグナロック作戦で一旦ハイネセンに帰着したヤン艦隊に再び合流。5月のバーミリオン会戦の終盤に同盟が降伏した為、ヤンに要請されて「動くシャーウッドの森」の司令官に就任。7月16日にレサヴィク星域に於いて破壊される予定だった戦艦や空母を強奪し、同時に4,000人の「お調子もの(と呼ばれた同盟軍兵士)」を新たに配下に加えた。
11月の第2次ラグナロック作戦開始前に、ハイネセンを脱出したヤン一行と合流。12月にはヤンと供にエル・ファシル独立政府の元に赴き、革命予備軍参謀長に就任。イゼルローン再奪取作戦では艦隊指揮を執り、再奪回に貢献。
宇宙暦800年の回廊の戦いでは右翼艦隊を指揮し、ファーレンハイト艦隊を追い詰める等の功績を挙げた。同年、ヤンが死んだ後もイゼルローン要塞に残り、翌801年の帝国軍対イゼルローン革命軍による回廊の戦いでは伏兵としてワーレン艦隊を急襲し、ユリアンの初めての作戦/指揮を成功に導いた。
同年6月1日、シヴァ星域会戦でユリアン達がブリュンヒルトに突入した後ビッテンフェルト艦隊の猛攻を受け、乗艦のヒューベリオンが被弾。副官のシュナイダーに看取られながら息を引き取った。享年63。
[編集] 能力
艦隊指揮官の能力はヤンやラインハルト、或いは帝国軍の双璧に比類する。指揮の特色は、帝国軍では雷撃艇、同盟軍ではスパルタニアンを駆使した近接戦闘での強襲を得意とする事が挙げられる(アニメ版では、回廊の戦いの際、このことで敵将がメルカッツであることをファーレンハイトが気づいた、という演出がなされている)。
リップシュタット戦役ではシャンタウ星域でロイエンタール艦隊と戦って戦況を有利に展開させ、さらにミッターマイヤーの挑発に乗って出陣したブラウンシュヴァイクやフレーゲルが危機に陥った時には救援として出陣して双璧の艦隊に損害を与えている。回廊の戦いやシヴァ星域会戦でも常に一定の戦果を上げており、ヤンからも地味だが堅実かつけれんみの無い用兵をすると評価されている。回廊の戦い直前に、ロイエンタールとミッターマイヤーが会話の中でこの見解を披露し、ロイエンタールからは「全宇宙で俺に勝てる数少ない将帥の一人」と言わしめた(他はラインハルト、ヤン、ミッターマイヤーである。この時点でキルヒアイスは亡くなっている)。
メルカッツはリップシュタット戦役後、ラインハルトに降伏することを潔しとせず(当初は自決を考えていた)、同盟に亡命し終生にわたりラインハルトと敵対する道を選んだが、ラインハルト自身はメルカッツを逃したことを残念がっており、降伏していればラインハルトの下で重鎮としての地位を得ていたであろう、と帝国軍提督達からも言われていた。
[編集] 人柄
指揮能力と同様、地味だが堅実な人柄を有している。下級貴族の出である為、以前は他の貴族同様選民思想の持ち主だったが、若い下級兵士達との交流を通じて自分の間違いに気がついた…とシュナイダーに告白している。アスターテ会戦の時も、当初はラインハルトの能力に懐疑的だったものの、第4艦隊を全滅させた頃からその才覚に気がついている。こういった事例から、状況を客観的に把握し自分の間違いをすぐに直す事が出来る気質だと評されている。だがその一方で、亡命後も旧帝国の軍服を着用し続けるなど、ある種のこだわりを持っていると思われる。
物語の最初であるアスターテ会戦でラインハルトの配下に配属されたのをはじめ、リップシュタット連合軍、同盟、銀河帝国正統政府…など、常に自分の意思とは無関係な力によって生き方を決められてきたが、回廊の戦い以後は明確に自分で選択肢を選ぶ様になり、最期はラインハルトとの戦いで死ぬ事に満足していた様子が伺える。帝国軍首脳には、有能だが部下として使いづらいと評されている。
[編集] 家族
物語には登場しないが、帝国に家族がいる。ブラウンシュヴァイク公爵との会話の中で、少なくとも宗教的儀式のいけにえに供する事が出来る年齢と容姿の娘がいる事が判明している。彼の死後、それを伝えるためシュナイダーがメルカッツの遺族のもとに旅立っている。旧帝国時代ならば反逆者の家族のため処刑されるところだが、ラインハルトによって処刑、流刑にされてはいない模様。