ウィンドサーフィン
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ウィンドサーフィンは、大型のサーフボードにヨットの様な帆をつけて乗るウォータースポーツ。
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[編集] 定義
ウィンドサーフィン(ボードセーリング)は1枚のセイルに風を受け、幅50~90cm、長さ2.5~3.5mほどのボードで水面を走行する。セイルは風速により子供用の1.0㎡から12㎡ほどのものがある。ヨットとサーフィンが融合したものと見ることができる。帆船の分類では滑走艇(反対語;排水艇)であり、一定スピード(25Km/h程度)以上では水面上に浮き上がって(底面と水面の間に空気が入り込む=プレーニング)進行する。 風に対して走ることが可能な角度は、ヨットと同じく風上40度(クローズホールド)~風下180度(ランニング)で、 この範囲を中級者でも簡単に30~50km/hくらいで走ることが出来る(プレーニング)のが、このスポーツの最大の魅力である。 トッププロのスピードトライアルでは80km/hを越す速さが記録されている。
呼称については、『ウインドサーフィン事件 東京高裁平成3年9月17日 平成2年(ネ)2780号,審決取消訴訟判決集(31)293頁,原審東京地裁昭和62年(ワ)6520号』を参照されたい。
[編集] 競技種目
ウィンドサーフィンは、コンディション等に対応した道具によりいくつかの種類に分類される。平水面でスピードとカービングを楽しむスラローム、割れる波のなかで華麗なパフォーマンスを行うウェイブ、平水面でパフォーマンスを行うフリースタイル、及び競争を楽しむレースカテゴリとしてフォーミュラ・クラス、オリンピック・クラスがある。初心者が楽しむカテゴリとして、スクールやフリーライドというカテゴリもある。 GPSを装着してスピードを計測するSpeed Sailingまたはスピードトライアルという分野も確立されつつある。
- 初心者用
- 風速1~5m/sの風/平水面で誰でも乗れるようにデザインされたボード(幅が約1m浮力が約200lでデッキはソフトパットで覆われている)と軽くて小さいセイルを組み合わせ、誰でも1時間程度でセーリング出来るようにになっている。セイルを替えれば上級者も遊ぶことが可能で、二人乗りも出来る道具がある。
- コースレース
- 5~12m/sの風速、平水面~チョッピーの水面コンデションを好適とする競技である。フォーミュラ・クラス及びオリンピック・クラスと呼ばれる。幅100cm程度の大型ボードに10~12㎡の大型セイルを使い、ヨットレースに準じたコースで順位を競う。国体やオリンピックのヨット競技の種目に採用されている。
- オリンピック・クラス(Olympic Class)
- 5~12m/sの風速、平水面~チョッピーの水面を好適とする競技である。2008年夏季オリンピックでは、セーリング競技の細目とされている。オリンピック競技としてのウィンドサーフィンでは、One Designと呼ばれる共通のボード、ダガーボード、フィン、セイルを用いることとなっている。2008年大会では、Neil Pryde RS:Xというデザインの採用が決定されている。ドーハ2006アジア競技大会では、セーリング競技ミストラル級に大西富士子選手(桜美林大学)が出場。
- スラローム(Slalom)
- 8の字形状のコースにおいて、スピードを評価要素とする競技である。8~15m/sの風速、平水面~ラフの水面を好適とする競技である。フローティング・マークをジャイブする形態が多く採用される。スラロームボードとよばれるボードに、5㎡~8㎡あたりの中型セイルで、主に風下方向(ダウン)へのスピードとカービング(特に風下方向=ジャイブ)を楽しむ。このカテゴリーのレースもある。競技人口が最も多く、道具の進化が最も激しい分野である。
- ウエイブ(Wave)
- 波(Wave)を利用して、ジャンプ、ループなどの技術を評価要素とする競技である。10~17m/sの風速、50cm以上の波のある水面を好適とする競技である。波を利用したジャンプやループには、海面形状、風向、風速に応じて細やかな操作が必要となることから、使用する道具は、波に合わせた取り回しに適する形状に設計されている。スピードは重要な要素とされないことから、使用する道具は、スラローム用よりも更に小さく取り回しが良くなるよう設計されている。
- フリースタイル(Freestyle)
- 風速5~12m/sの風/平水面~チョッピーの水面コンデションに於いて、さまざまな技を楽しむ。ボードも多種多様。2000年位からブームになっているカテゴリ。ボードはスラロームとウエイブの中間的なデザインだが安定性が抜群。
[編集] ウィンドサーフィンの道具
ウィンドサーフィンに使用する道具は大きくリグ部とボード部の2つの部分に分けらる。それらが可動式のユニバーサルジョイントで接合される。このユニバーサルジョイントがヨットよりウィンドサーフィンを特徴付けるものである。
- リグ部
リグ部は通常、セイル、ブーム、マスト、マストエクステンションで構成される。
- セイル
- 風を受ける帆
- ブーム
- セイルを操作する(車のハンドルのような働きをする)
- マスト
- セイルにテンションをかけるための(セイルを張る為の心棒)
- マストエクステンション
- マストの長さをセイルにあった長さに調節する事と、ジョイントとの接合の機能を併せ持つ
近年の軽量化の結果、セイルはフィルム製、ブームはアルミニウムまたはカーボン、マストはカーボンが一般に使用されている。強風下におけるセイル上部の形状変化(ツイスト)により近年大幅な性能の向上が図られている。風が弱い時はセイルの全面で風を受け止め、風が強くなり過ぎると、セイル自体が余分な風を逃す働きをする。
- ボード部
ボード部はボードとフィンによって構成される。
- ボード
- 人間が乗るため浮力を確保した板
- フィン
- 直進性を保持するためにある。船のように可動式ではなく舵を取る機能はない。センターボード(ダガー)があるものとないものがある。
センターボードの有る無しでそれぞれロングボードとショートボードの2種類のカテゴリにわかれる。センターボードがある場合、風上へのアップウィンド性能が向上し、ない場合は旋回性能が向上する。
一般的にセンターボード(ダガーボードとも言う)付きの道具は初心者向きの為に、上達の為にはお勧めできたが、購入後は1年ないしは2年で使わなくなる為に経済的では無い。近年は初心者向けに浮力の大きいがセンターボードが無いタイプが販売されており、初心者も最初からセンターボードが無いタイプを購入する事が多く見受けられる。
- その他
この他、防寒用にウェットスーツ、安全対策用にライフジャケットなども装備している事が多い。
また、ボード類の運搬手段として、車は絶対必需品でもある。大抵のウィンドサーファーの車は大型傾向にあり、2セットから3セット程度のボードを積んでいる事が普通である。また、車内で仮眠できるよう誂えている物も多く見受けられる。 また、ゲレンデ側にあるショップでは「艇庫」と呼ばれる置き場所があるので、そこに道具を預け、週末電車で「通勤」するものも多い。
- 費用
初心者は一式を揃えるのに約15万円くらい掛かり、上級者になるとボードだけで約25万円、その他小物を含むと一式50万円くらい掛かる。セッティング(道具の調節)によりある程度の風の強さに合わせることができるが、それでも『趣味:ウィンドサーフィン』と言う大体の人は2~3セット揃えるようになり、経済的に自立していないと継続する事は難しい。学生向けに経済力の差を解消する為に、1式の道具で強風から微風までこなす競技(IMCO:イムコ)もあるが、面白さが減る事は否めない。 しかし、昨今の道具は性能が良いため、数年前の道具でも十分上級者でも楽しめる。いわゆる中古品。道具は消耗品であるが、程度の良い中古品も多く出回っているので、経済的に負担かけずに道具をそろえることも出来る。
[編集] ウィンドサーフィンの学習過程
[編集] 入門段階
ウィンドサーフィンの学習は他のスポーツと比較して一般に難易度が高いといわれる。 これは水面に浮かんだ板状の浮力物に直立するという不安定な状態の上、常に強弱があり一定しない風を使い進まなければならないためである。 さらに波がある場合は不安定さが増すため、難度がさらに増す。 入門段階ではプロやウィンドサーフィンの専門店などが主催するスクールに入り、初心者用のボードおよびセールを使いはじめるべきである。 中上級者の使う道具と、初心者の使える道具はかなりの開きがあり、上手い知人に道具を借りて習うというのが(往々にして上級者の道具を使うことになるため)最も上達が遅くなるやり方である。 また女性には「ボーイフレンドに教えさせるな」という鉄則もある。 このレベルで覚えるべき項目は以下のものがある。
- セイルアップ
- マストとブームの接合部に結合された紐(アップホールライン)を使い、海面上に落ちたセールを引き上げ走行可能状態に戻ること。
- タック
- 風上方向に艇首(ノーズ)を向け方向転換すること
- テールジャイブ
- 風下方向に艇首(ノーズ)を向け方向転換すること。通常微風時には艇尾(テール)を沈め旋回性を強くするためこの名がある。
- 海上での優先順位
- スタボー(スターボード)優先 風下優先 先行艇優先の順である。実際にはこれに漁船に対するローカルルールや波乗りのルールが加わる。
[編集] 初級段階
- ビーチスタート
- セールをボードの上部に立てたまま、ボード上に立つ技術。強風ではセールアップの難度が高くなるため必要とされる。
- ハーネスワーク
- ブームに半円上に取り付けた紐に、腰のハーネスと呼ばれるフックを引っ掛け走行する。
- プレーニング
- 一定の風(5-7m/s)があれば、ボードと海面の接水面が小さくなり、一定のスピードでの滑走状態が可能になる。
プレーニングはウィンドサーフィンの最初の目標であり、週末にウィンドサーファーが海に向かう理由の一つでもある。海面上で高速で滑走する爽快感なくしてウィンドサーフィンというスポーツは語れないほどである。 しかしながらボード上での人間とセールの主従関係が逆転するかのような現象があり、プレーニングの実現を難しくしている。 入門段階ではボード上に人間がまず立ち、セールを引き上げ支えるという関係なの対し、プレーニング時にはセールがボード上の中心であり人間はセールの揚力や推進力を抑えるための錘(おもり)となってしまう。 初心者は強風下でもボード上にたったままセールを支え続けようとするため海に放り投げられてしまう。
[編集] 中級段階
- ウォータースタート
- ビーチスタートの上級テクニックである。ビーチスタートが浜で足が着く状態でボードに乗るのに対し、ウォータースタートは海上で人間が海中にいながらセールの上方への力を利用してボード上に乗りあがる。強風下でのセールアップは困難を極めるためセーリングには必須である。
- レールジャイブ
- 強風下でのジャイブ。単にジャイブともいう。テールを沈めるのではなくボードの側面(レール)を使うためこの名がある。
レールジャイブは、①ボードのターンに伴う水しぶき②セールの内傾③ジャイブ終了時のセールの返しといったフォトジェニックな要素に加え、この動作が強風時、海に入れずビーチでギャラリー化している初心者の間近で(特にサイドショアゲレンデにおいて)行えるという非常にマニアックかつ自己満足的な優越感にひたれることもあり、多くのウィンドサーファーが必死に学習するテクニックである。 強風下でのジャイブはウェーブコンディションでも必須でありマニアックな趣味がなくとも、上級者への登竜門・中級者卒業のテクニックに位置づけられよう。 レールジャイブについては数多くの解説本・ビデオが出版されており、その分習得の難しい技術であるといえる。
[編集] 上級段階
この段階になるとカテゴリーによって習得すべき技術が異なってくる。
[編集] ウィンドサーフィンの文化的側面
[編集] ゲレンデ
日本にも多くのゲレンデと呼ばれるウインドが可能な場所がある。基本的には「風」が年中通して吹く可能性が高い場所が、昔(といっても20数年前)からウインドサーファーによって好まれ、地元の漁師などとも仲良くなり、認められ、ゲレンデとなっている。 関東では以下が有名。
- 津久井浜(神奈川県三浦) アップコンディション、スラロームコンディション
- 御前崎海岸(静岡県) WAVEコンディション
その他、湘南(江ノ島・鎌倉・逗子)、千葉(検見川・富津)なども盛んである。 世界的に盛んなゲレンデはカリブ海・ハワイ・地中海周辺であり
- ハワイ マウイ島
- スペイン領カナリア諸島
が有名である。日本からは冬に暖かい海と貿易風を求め南下するのが常套手段だが、サイパン(マイクロビーチ)が人気のほか、台湾・ボラカイ(フィリピン)などが近い。海外ではないが沖縄(本島・石垣島)なども同様の理由での旅行先になる。
[編集] ウィンドサーファーの生態
ウィンドサーファーの傾向として、週末の天気予報が気になって、木曜日くらいからソワソワしだし、良い予報の時には週末に仕事を残さないように平日に猛烈に働きだす。 社会人は風邪の為に有給を使う事があるが、ウィンドサーファーは風(強風)の為に会社を休む事もある。特に1年に1回しかなく寒さから解放される「春一番」の日にはその傾向が顕著である。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 国際セーリング競技規則 ISAF Racing Rules of Sailing 2005-2008
- NWA ニッポンウエイブアソシエイション
- JCBA 全日本実業団ボードセイリング連盟
- WFJ 日本ウィンドサーフィン連盟
- JPW 日本プロウインドサーファー選手会
- ABIT ウインドサーフィン技術協会
- JSAF 財)日本セーリング連盟 オリンピック特別委員会2006年度ナショナルチーム選手一覧
- IWA International Windsurfing Association
- PWA Professional Windsurfing Association
- ISAF
- IMCO International Mistral Class Organisation
- Neil Pryde RS:X Class Rules 1st April 2006
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