カーラ (ロードス島戦記)
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カーラは、小説『ロードス島戦記』とその前日譚である『ロードス島伝説』の登場人物で、架空の人物。「灰色の魔女」として500年以上もロードス島の歴史に干渉し、主人公パーンたちの前に立ち塞がる。
[編集] 経歴
灰色の魔女カーラは、パーンらと同時代の人間ではない。数百年の昔にフォーセリア全土に広がっていた古代魔法王国を支配した魔術師の一人である。本名はアルナカーラ。当時の貴族(魔術師)としては珍しく、大地母神マーファの信者であった。
同じフォーセリア世界を共有する『ソード・ワールドRPG』にも記されているように、その古代王国は数百年前のある事件によって魔力の源を失い、魔法を使えなくなってしまう。その直後、古代魔法王国の民に「蛮族」と蔑まれていた階級の人々の叛乱が起こり、あっけなく崩壊した。この時の大反乱により古代魔法王国の貴族や市民は根絶やしにされ、当時の全人口が半減したとも伝えられる大破壊(大いなる破壊)が発生した。マーファの教えに従って蛮族に対しても平等に接してきたカーラも例外ではなく、「大破壊」と平等に接してきた自分をも殺そうとする蛮族に対する失望から、マーファ信仰を捨てたと思われる。この蛮族が、フォーセリアの今の時代に生きる人間たちの先祖である。
「ロードス島太守の娘」としてロードス島の支配階級に属していたカーラは付与魔術一門の一人であり、古代王国の崩壊に際して、自らの魂と魔力をサークレット(頭冠の一種)に封じ込める。このサークレットには、身に付けた者の身体を支配する力が付与されていた。かくしてカーラは己を殺した一人の蛮族の身体を奪い、歴史の影の中に身を潜める。
影の存在となったカーラは、古代王国崩壊直後にカーディスの最高司祭ナニールによる統一王国樹立を阻み、その後も宿主を転々としながら「大破壊」が二度と起こらぬようロードス島の歴史に干渉を続ける。その基本的な思想は「光と闇の均等」である。強大な竜族や上位精霊さえもその魔力により支配した偉大なる魔法王国の崩壊に伴う大破壊を実際に経験した彼女は、力の一極集中が「大破壊」に至る根本要因と思い定める。それ故、光が優勢になれば闇に荷担し、闇が強力になれば光を助け、均衡を崩す恐れの有る傑出した人物を排除していった。
これらのことから、ロードスの歴史に干渉する存在に気付いた極少数の主に賢者と呼ばれる人達からは、黒と白の混ざり合った「灰色」に例えて伝えられる存在となる。
代表的な例がパーンたちの時代の数十年前に起こった、魔界に住む怪物たち──魔神との戦争(魔神戦争)である。
当時のロードスにとって手に余るほど強大な魔神王(デーモンロード)と魔族の跳梁に対して、それに対抗するため組織された「百の勇者」に助勢し、後に「名も無き魔法戦士」と呼ばれる「六英雄」の一人として歴史に足跡を残すことになる(ウォートのみが「灰色の者」であることを察知したが、確実にカーラを殺さずに倒すことに自信を持てず、やむなく対決を避けた)。しかし同時に「均衡を崩す恐れの有る傑出した人物」として、「百の勇者」の盟主であったナシェルの排除を画策、見事にナシェルを時代の表舞台から消し去った。
魔神戦争が終息して姿を消したカーラは、六英雄の一人ニースの娘で優秀なマーファの神官であったレイリアを新たな宿主として英雄戦争に姿を現す。当時光の側に大きく傾いた不均等を是正するため、新興のマーモ帝国に荷担してカノン侵攻に助力し、対マーモ連合の切り崩しに暗躍する。その過程でパーン達と出会い、持論である「光と闇の均等」を説いて仲間に誘うが断られ、後にパーン達はロードスの平和を為にカーラを滅ぼすことを決意する。
その経緯は小説『ロードス島戦記 灰色の魔女』のクライマックスなどで語られている。
そしてこのパーンとの敵対関係が、カーラにとって予想だに出来ない結果を生み出す原因になる。それはカーラが暗躍したロードスの歴史の中で、今まで決して破られる事のなかったロードスの均衡を保つ為の策略・計略に、初めて大きな歪みが生じたのであった。パーンの存在が、カーラの計算をことごとく狂わせ、その均衡を大きく傾ける結果となる。その為カーラは、邪神戦争で光の側に大きく傾いた不均等を是正するため、究極の闇である破壊神カーディスを復活させ「光の勢力」との共倒れを計り、パーン達と最後の戦いを繰り広げる事となる。