パーン (ロードス島戦記)
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パーン(新王国暦492年 - )は、小説『ロードス島戦記』の主人公で、架空の人物。また、同名のテーブルトークRPGリプレイ(第一部)におけるプレイヤーキャラクター (PC) の一人。ザクソン村に住む血気盛んな青年であり、冒険を通して剣士として、また人間として成長していく。
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[編集] 背景
ヴァリス生まれ。幼少期から青年期までを過ごしたザクソン村はロードス島の北東部に位置し、千年王国と呼ばれる由緒ある大国アラニア王国に属しているが、辺境であるが故に王国への帰属意識は全体的に薄い地方であった。ただし大地母神マーファの大神殿やロードス島唯一のドワーフの国である鉄の王国に近く、辺境ではあったが比較的平和な田舎の村である(後のアラニア内戦では、マーファ神殿とドワーフの協力により、周辺地域を含めて半独立的な自治組織が形成された)。
父テシウスは元ヴァリス王国の聖騎士であったが、不名誉な理由で騎士団を追放されたと噂されており、騎士への強い憧れと同時に複雑な感情を抱くようになる(父親についてはテスウス参照)。なお、母親は早くに病死している(『新ロードス島戦記』において、ザクソンの村で現在も生存しているとパーン自らが語っている。目立つことが嫌いな性格であるらしく、表向き病死ということにしていると思われる。また、母親がヴァリスの薬草師一族の出身であることも、同時に語っている)。 16才の時に2年間フレイムの傭兵隊に所属、初陣はオアシスの街ヘヴンを巡る小競り合いだった模様。
[編集] 性格
小説第一巻では、ただの血気盛んな青年である。正義感が強いものの融通が利かない頑固者。物語冒頭から村の近くに住み着いたゴブリンの群れ親友のエトと二人で殲滅しようとし、瀕死の重傷を負う。その後も無謀な行動を繰り返し、仲間達はそれに渋々付き合わされることになる。騎士隊などへの憧れなどミーハーな面も見られ、まだ若い印象を受ける。 小説第二巻以降ではミーハーな面はなくなり、無謀な行動もほとんどは仲間を助けるためのものとなり、意味のない危険は犯さなくなっている。融通が利かないのは相変わらずであるが仲間をより信頼するようになり、自分より仲間の方が適正がある場合は任せたりと協調性は以前より良くなっている。小説終盤ではまるで悟りを開いたかのような性格にまで成長した。
[編集] 活躍
幼馴染で親友のファリス神官エト、帰らずの森のエルフディードリット、村で子供達に学問を教えていた魔術師スレイン・スターシーカー、ドワーフの戦士ギム、アラニアの盗賊ウッド・チャックと共に、アラニアからヴァリスを旅する。その過程でマーモ帝国に与力する灰色の魔女カーラと争うことになり、至高神ファリスを奉じる神聖ヴァリス王国と暗黒神ファラリスを奉じるマーモ帝国の争いに巻き込まれていく。この時の活躍は後の英雄戦争に多大な影響を与えることになる。
英雄戦争にはヴァリス王国の聖騎士として参加、直後にカーラと対決するがギムとウッド・チャックを失う。また対決直後にエトやスレインと袂を分かち、カーラ探索のためディードリットと共に旅を続け、内戦が続く砂漠の王国フレイムやモス公国を旅し、アラニアに向かう途中でマーモ帝国に占領されたままのカノン王国で「カノン自由軍」に参加、以後10年に渡ってカノンを治める「黒衣の将軍」アシュラムとカノン解放戦を戦う事になる。
英雄戦争後、聖騎士団を辞した後は国家に属さない騎士として「自由騎士」と呼ばれるようになり、カノン解放とマーモ帝国討伐戦(邪神戦争)終結時に諸王国会議を代表してフレイム国王カシューから「ロードスの騎士」の称号を受ける。
なお「自由騎士」の呼び名は本来パーンに対する固有の呼び名ではなく、魔神戦争時に所属する騎士団を離れ「百の勇者」に参加した騎士出身者(代表例はファーンやカノンの自由騎士)に対しても用いられている。 しかしパーンの登場後はその武勲があまりにも巨大であったため、パーンを表す代名詞として敵味方に定着し、邪神戦争後のマーモ掃討戦において自由騎士を名乗ったヴァリスの聖騎士の一隊に対してアシュラムが激怒、遥かに格下のこれを容赦なく斬り捨てたことに見られるように、おいそれと名乗ることは許されないものとの感すら生まれた。
そして、パーンの功績の中で最も大きな事柄は、灰色の魔女カーラに、直接引導を渡した事であろう。 常にロードスの歴史の裏で暗躍していたカーラは、自らの目的であるロードスの均衡を保つ為に、非常に多くの策略・謀略を行い、それが数え切れない悲劇と破壊を生み出していた。このカーラの暗躍に対して、今までどんな優秀な人物でさえも阻止すること(これまで、カーラの存在を認知出来た人物は、ほんの一握りのしかいなかった)が出来ず、それどころか結果的には、カーラの策略・謀略の手駒の一部として利用されてしまうのが、殆どであった。 しかし、カーラがパーンと関わって(出会って)しまった事により、カーラの計算に大きな狂いが生じ始める。 それはまず、フレイムでの風の部族と火の部族の対立に、パーンが関わる事から始まった。そして次に、魔竜シューティングスターの討伐及び、火竜の狩猟場の開墾事業への手助け。また一方アラニアでは、二国に分裂していた国内に北の勇者として、ザクソン村を中心とした第三勢力を誕生させ、モスではハイランド公国の古の炎の巨人の討伐に加わり、ヴァリス・カノンでは対マーモにおけるゲリラ戦を行う。これらは決して表立った活躍には見えずとも、パーンが多くの国々の事柄に関わる事により、カーラの思惑とは別な結果を生じさせた。 これらはひとえに、パーンの熱意が大勢の人間を動かした事により、カーラの望む歴史を変えてしまった。そして皮肉なことに、「ロードスの騎士」の称号はロードスの調停者としての役割を果たす事となり、結果としてカーラの行っていたロードスの均衡と同じ働きを、パーンが行う(受け継ぐ)事となる。
[編集] 剣技
旅に出た当初は傭兵経験があるとは言っても小競り合い程度の実戦経験しかなく、まったくの我流でいたずらに剣を振り回すだけであり、パーティの主戦力は歴戦の戦士であったギムが担った。旅の中で徐々に実戦経験を積み、またギムの指導により熱心に練習に励んだため、ヴァリス到着時にはそれなりの腕前に上達していた。更にヴァリス王国では、父テシウスを知る聖騎士達やカシューから正統派の剣技を伝授されたと思われる。
英雄戦争後、砂漠の王国フレイムの傭兵王カシューと再会した際には相当な腕前に達していたと思われるが、当時ロードス最高の剣士と目されていたカシュー王にはまったく歯が立たなかった。このカシュー王との出会いや後のカノン王国レオナー王子と共に設立したカノン自由軍での経験を通じて剣技を磨き続け、邪神戦争時にはロードスでも屈指の戦士にまで成長を遂げる。
必殺技として、カシューをも唸らせる電光石火の「突き」を持つ。
[編集] 国王への誘い
パーンには国王の座に就く機会が3回訪れている。
最初は英雄戦争直後のヴァリス王国である。
当時国王ファーンのみならず、主だった聖騎士のほぼ全てを喪ったヴァリスでは、早急に新国王の下で復興に取り組まなければならなかった。当然それまでの慣例に従って生き残りの聖騎士の中から候補が選ばれたが、その時に最有力候補としてパーンの名が挙がっている。
元々パーンの家系は父テシウスまで代々ヴァリスの聖騎士を輩出しており、パーン自身も英雄戦争従軍時には聖騎士の身分を得ており、国王となる資格保有者と見られていた。また聖騎士テシウスの最期を知る者にとっては、表面上「不名誉な理由」で処分しなければならなかった過去は、息子パーンに対する負い目ともなっていた。更にテシウスの血統はこれまで国王を出しておらず、この点も世襲を嫌うヴァリス宮廷には好意的に受け止められた。
結局この時は、灰色の魔女カーラ探索の為にパーンがヴァリスを去ってしまったため表沙汰にはならなかったが、最終的に新参者で神官のエトが国王となっている事から、エトよりも遥かに好条件の聖騎士パーンが国王に就任する確率(可能性)は相当に高かったと思われる。
次は、英雄戦争後も後継者争いが続いていた「千年王国」アラニアである。
当時のアラニアは「簒奪者」ラスター公と王位継承権者ノービス伯アモスンが激しく対立していたが、そもそも兄である国王一家を暗殺したラスター公と拮抗している時点で、対抗馬アモスン伯爵がどんな人物かは知れている。要するに双方共に人望も無く、国を纏める力量に欠けていたので、だらだらと何時までも内戦が続いてしまっていたのである。
パーンの故郷であるザクソン村を中心として北部一帯が自治化したのも、どちらに与しても無能な指導者を戴くことを住民が嫌ったからである。そして、その中心に居たのが「北の賢者」と呼ばれるようになったスレインであり、その後を継いだ弟子のセシルであった。ロードス島に限った話ではないが、指導者=戦士・騎士という固定概念が強固であるため、スレインは指導者となるべき戦士を求めており、気心が知れており、既に「自由騎士」として名が知られたザクソン村出身のパーンは最適任者であった。また農村部(及び農村出身の兵士達)に圧倒的な影響力を持つマーファ教団と、数千の屈強な戦士団を擁するドワーフの「鉄の王国」が後ろ盾となっていたことから、北部で義勇軍を立ち上げれば、内戦を続ける両勢力を武力で排除することも現実問題として可能な状況であった。
そのためスレインはパーンがフレイムを訪れた際に、カシュー王がパーンをアラニア国王に推すのに積極的に賛同し、最後はかなり強硬に説得を試みている(この時カシュー王は、フレイム王国が後ろ盾となってアラニア内戦を終結させようと考えていた)。ただパーンに国王になる意思は無く、最後まで固辞する。この件はその後もパーンの心に残り続け、指導者=王としての覚悟を決めたレオナー王子のカノン解放戦に参加する遠因となる。
結局最後まで国王となる事を断り、「ロードスの騎士」としてディードリットと共に歩むことになる。
3度目はフレイム領となったマーモ公国である。
カーディス教団の襲撃により公王スパークが生死不明となり、事実上マーモ公国は滅亡したと考えられていた。パーン自身はスパークの生存を確信していたが、万一死亡していた場合に彼の遺志と政策を受け継ぐべくマーモ王となることを決意する。しかし、玉座をカーディス教団から奪い返そうと行動したときには既にスパークが帰還しており、王となることはなかった。ある事情により再びスパークは行方不明となるが、サルバド伯カイエンが代理を務め、パーンはマーモ騎士団長となっている。
3回のうち2回は傭兵王カシューが深く関っており、新興のフレイムを率いるカシューが全幅の信頼を置きうる盟友を求めていたことが窺える。
[編集] 武器と防具
当初から父の遺品である剣と鎧(紋章を削り取った古びたヴァリス王国の聖騎士の鎧)を持っていたが、物語中盤(砂漠の国フレイムにある砂塵の塔)で魔法の武具(魔法王の鍛冶師ヴァンが鍛えた長剣と楯、鎧一式。剣の名は「サプレッサー」)を手に入れる。
- サプレッサー(剣銘「鎮めるもの」)
- 古代王国が最後まで反抗していた砂漠の蛮族の守護神だった風の精霊王を砂塵の塔に封印した際に、精霊王が解放された時の対抗武具として用意した魔法の剣(ブロードソード+2相当)。作成者ヴァンが創った武具一覧表には「精霊王を滅するための長剣」と記されている。
- しかし、「精霊王を滅するため」にどのような魔力が付与されているかは不明。解き明かすことは可能というが、精霊を友とするディードリットを伴侶とするパーンはそれを望まず、単なる剣としての用途のみを求めた。ただ、入手した際にパーン本人が「今までの剣の半分くらいの軽さ」との事から、付随的に「軽量化」の魔法が付与されているのは確実である(実際、その場に居合わせたスレインもその魔力の事を指摘している)。
- また、サプレッサーと共に置かれていた楯(ヒーターシールド)と鎧(プレートメイル)にも魔力(+2相当)が付与されている。